独自配合のアミノ酸素材が関節の違和感・痛み、腱の状態を改善 味の素株式会社が日米の学会で発表
近年、アミノ酸の新たな機能性か次々に明らかにされ、スポーツパフォーマンスを支えるサプリメント素材として広く活用されている。
今回、アミノ酸製造メーカーとして世界をリードする味の素株式会社が、関節や腱のコンディションを整える作用をもったアミノ酸素材を開発し、ヒトで検証した研究結果を日米の学会で発表した。この素材は、単一のアミノ酸ではなく、6種類の非必須(可決)アミノ酸を独自比率で配合した「関節・腱コンディショニング向け6種アミノ酸ミックス」と呼ばれるもの。東京2020で活躍する日本人アスリートの支援を目指して5年間にわたり研究開発を行い、実際に多くの選手に利用されたという。
先月下旬、この研究の詳細や、東京2020のオリンピアン、パラリンピアンでの活用事例などを紹介する同社主催のメディアセミナーが開催された。セミナーには、五輪に4大会連続出場し4個のメダルを獲得した競泳元日本代表・松田丈志氏や、東京2020で代表チームの栄養サポートを行ってきた日本スポーツ栄養協会理事長・鈴木志保子氏らが登壇した。
ここでは、日米の学会で発表された「6種アミノ酸ミックス」に関する2件の研究報告について、同社・スポーツニュートリション部兼オリンピック・パラリンピック推進室・加藤弘之氏の講演から紹介する。
研究①:膝関節の違和感・運動機能に関する試験
研究報告の一つは、運動科学分野における日本国内最大級の学術大会である、日本体力医学会の第76回大会(2021年9月17~19日)で発表された。
試験デザインはプラセボ対照二重盲検試験。膝関節に違和感のある成人(平均年齢50歳)50名を25名ずつに二分し、1群には6種アミノ酸ミックス、他の1群にはプラセボを、1回4g、1日3回摂取してもらい、12週間介入した。介入効果の評価には、主観的評価、JKOMスコア、およびJOAスコアという3つの指標を用いた。
このうちJKOMスコアは、日常生活における関節の状態、動作のしやすさを評価する指標として日本整形外科学会などにより作成されたもの。JOAスコアは、日本整形外科学会作成の関節機能評価指標。主観的評価には100mmのビジュアルアナログスケールを用い、膝関節の違和感、こわばり、痛みなどの変化を検討した。
その結果、主観的評価(図1)およびJKOMスコア(図2)は、6種アミノ酸ミックス群では介入開始4週後から有意に改善し、12週間の介入終了時までその効果が維持され、プラセボ群との間に有意差が生じていた。JOAスコアは12週間の介入により、6種アミノ酸ミックス群がプラセボ群に比べて有意に改善していた(図3)。
これらにより、膝関節に違和感・痛みのある成人における、6種アミノ酸ミックスの有用性が確認された。
図1
図2
図3
研究②:アキレス腱の状態に関する試験
二つ目の研究報告は、運動科学分野における北米を代表する最大級の国際学術大会である、米国スポーツ医学会の第68回集会(2021年6月1~5日)で発表された。
試験デザインはプラセボ対照二重盲検試験。アキレス腱に違和感のある成人16名(平均年齢24歳)を二分し、1群には6種アミノ酸ミックス、他の1群にはプラセボを1回4g、1日3回摂取してもらい、2週間介入した。介入効果は、エコー検査によってアキレス腱の構造の均一性(エコー画像の輝度から評価)、およびアキレス腱の硬さ(スティッフネス)を判定した。
その結果、6種アミノ酸ミックス群で、アキレス腱の線維パターンの改善が認められ(図4)、またアキレス腱の強さが維持する可能性が見出された(図5)。
図4
図5
非必須(可決)アミノ酸はアスリートだけでなく、一般生活者にもメリット
以上2件の研究報告により、「6種アミノ酸ミックス」が、アスリートのみならず、高齢者を中心とする幅広い世代が抱えている関節・腱のトラブル改善にも貢献する可能性が示された。
従来、アミノ酸素材は、体内で合成できない必須(不可欠)アミノ酸の機能性に着目したものが多かったが、非必須(可決)アミノ酸も最適な比率でミックスすることにより新たな有用性を発揮することがわかった。
アミノ酸にはまだまだ明らかにされていない可能性が秘められていると言えるだろう。
プレスリリース
味の素(株)、6種アミノ酸ミックスが関節の違和感・痛み、腱の状態を改善することを発見
「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」(味の素)
スポーツをする人に必要な「アミノ酸」。スポーツ時に「アミノ酸」が発揮する効果や、スポーツによって起こるさまざまなトラブルについて、科学的にしっかり理解しましょう。「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」は、スポーツに関する情報発信を通じ、スポーツに真剣に取り組むみなさんを応援します。
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