ウォーキング中にガムを噛むと時間当たりの歩行距離とエネルギー消費が増える
ウォーキング中にガムを噛むと時間当たりの歩行距離とエネルギー消費が増えることが、株式会社ロッテと、早稲田大学スポーツ科学学術院の宮下政司氏、濱田有香氏らの研究グループとの共同研究から明らかになった。「Journal of Exercise Science & Fitness」に論文が掲載されるとともに、同社のサイトにニュースリリースが掲載された。
研究の背景と方法
肥満は多くの疾患のリスク要因であり、世界的に大きな問題となっている。ただし肥満は予防や改善が可能であり、定期的な身体活動がリスクを低減させることも明らかとなっている。本研究は、手軽に行える身体活動の一つであるウォーキング中に、ガムの咀嚼を加えることによって、身体活動にどのような影響を与えるか、ヒトを対象とする試験により検証することを目的として実施された。
対象は22~69歳の健常な男女50名で、試験デザインは無作為化単盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験。研究参加者に軽食を摂取してもらい安静後、呼気代謝計測機を装着し、安静をはさみながら、同日内にガム、もしくは、タブレットを摂取しながら、それぞれ15分間ずつウォーキングを行い、エネルギー消費量、歩行距離(速度)、歩幅、歩数、心拍数等を計測した。
結果と考察
ガムを咀嚼しながらウォーキングをする条件では、タブレット摂取試行と比較し、歩行距離(図1)と歩行中のエネルギー消費(図2)の増加が確認された。また、年齢層別の解析により、中高年層(40~60代)においては、歩幅の増加も確認された(図3)。
ガム咀嚼により生じたリズムやテンポが歩行テンポを上昇させ、その結果歩行距離の増加をもたらした可能性が考えられる。
図1 各サンプルにおける15分間の歩行距離
図2 15分間の歩行中におけるエネルギー消費
図3 中高年における歩行中の歩幅
早稲田大学スポーツ科学学術院、宮下政司氏のコメント(ロッテプレスリリースより)
健康のためにウォーキングを日常的に取り入れていらっしゃる方は多いと思います。そこにひと手間「噛むこと」を加えることで、エネルギー消費がさらに大きくなることが分かりました。リズミカルに咀嚼しながら歩くことで、心拍リズムと運動リズムの同期や、ガムを噛むテンポ自体が歩行テンポに影響し、今回の結果につながったと考えております。年齢層別の解析によって、中高年者では歩幅の増加も確認されました。よって、中高年者で「噛むこと」がより効果的である可能性が考えられます。手軽にできることですので、日常のウォーキングに「噛むこと」をぜひ取り入れていただきたいと思います。
プレスリリース
ロッテ・早稲田大学の「噛むこと」研究グループが確認 ウォーキング中のガム咀嚼→歩行距離およびエネルギー消費が増加(株式会社ロッテ)
文献情報
原題のタイトルは、「Gum chewing while walking increases walking distance and energy expenditure: A randomized, single-blind, controlled, cross-over study」。〔J Exerc Sci Fit. 2021 Jul;19(3):189-194〕
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