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アスリートのエネルギー利用能低下(LEA)予防に栄養教育は有効か? 系統的レビューで介入方法と効果を総括

エネルギー利用能低下(LEA)に関するアスリートへの栄養教育の方法や効果について、システマティックレビューで検討した報告を紹介する。米国の研究者らによるもので、さまざまな介入が行われている実態を明らかにし、またそれらの介入効果は、「アスリートの栄養知識と行動の変化という点で概ね有益のようだ」と総括されている。

アスリートのエネルギー利用能低下(LEA)予防に栄養教育は有効か? 系統的レビューで介入方法と効果を総括

これまでのLEA教育の実態をシステマティックレビューで総括

トレーニング等による消費エネルギー量を摂取エネルギー量が下回り、身体機能の維持に悪影響が生じ得る「エネルギー利用能低下(LEA)」は、アスリートの4人に1人が経験するという報告もあり、とくに女性アスリートでその割合が高い。LEAが短期間であれば可逆的な影響にとどまるが、長期に及ぶと不可逆的な問題が引き起こされる。そのため、アスリートのLEAに対する認識を高めるような啓発が行われている。

それらの啓発の中心となるのは、栄養教育による知識の伝達だ。しかし、知識の豊富さとLEAリスクとの関連は十分に理解されていない。例えば、LEAを来した後の受療行動によって初めて栄養の知識を得るというケースもあるため、単に知識の豊富さとLEAの既往の有無を調べた場合、両者の関連を正しく評価できないことがある。

このような背景の下、今回紹介する論文の著者らは、これまでに報告されたアスリートへの栄養教育がLEAリスクに与える影響の研究結果を対象とするシステマティックレビューを実施し、現時点の知見を総括した。

文献検索の方法について

システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)に準拠して、2023年7月11日に、MEDLINE、PubMed、Web of Scienceという文献データベースを用いた検索を実施し、同月26日に追加された文献の有無を確認した。包括条件は、18歳以上のアスリートを対象に栄養教育を行い、LEAまたはRED-S(relative energy deficiency in sport. スポーツにおける相対的エネルギー不足)への影響を報告している英語論文とした。

重複削除後の1,338報を論文のタイトルと要約に基づくスクリーニングにより44報に絞り込み全文精査を実施。最終的に12件の研究報告を適格と判断した。

現在までのLEA教育は有用と考えられるが、外挿可能な手法の確立が必要

抽出された研究の特徴

対象となった12件の研究の研究参加者数は合計719人で、サンプルサイズの平均は60人(範囲7~107)であり、栄養教育を完了した割合は平均90.2%(同63.6~100)だった。

介入の多く(76.9%)は対面で行われ、10分間の単回セッションから90~120分間のセッションを20回行ったものまで、多岐にわたっていた。

栄養教育の方法

栄養教育の介入方法は全研究において多様であり、各研究はそれぞれ独自の教育アプローチを採用していて、研究間で方法論の重複はみられなかった。

教育内容については、対象となった研究の大半で、栄養補給・エネルギー摂取について盛り込まれており(83.3%)、微量栄養素に関する教育も83.3%で行われていた。そして、9割以上(91.7%)で、アスリート特有の栄養ニーズにあわせた教育が行われていた。RED-S、LEA、女性アスリートのトライアド(三主徴)について、明示的な教育を行っていたのは、ちょうど半数(50%)だった。

教育内容の評価のために設定した6項目(栄養士・管理栄養士による指導か、エネルギー補給・カロリー摂取の項目を含んでいるか、主要・微量栄養素の項目を含んでいるか、エネルギー不足の影響の項目を含んでいるか、アスリート特有の栄養の項目を含んでいるか、双方向性があるか)を、すべて満たしていた介入は2件のみだった。なお、双方向性のある教育で取り上げられていたテーマのうち、2件の研究に共通するテーマは、食事記録の手法、および、スポーツパフォーマンスをサポートするための栄養に関する個人的な考察だった。

このほか、いくつかの研究では、認知行動教育などの手法が用いられていた。

アウトカム指標と介入効果

5件の研究では知識レベルを調査し、その大半で介入後に知識が増加して、かつ対照群より優れていたと報告していた。9件の研究では、摂食障害またはボディーイメージに関する質問票のスコアで介入効果を検討し、多くの研究で有意な改善を報告していた。ただし、時間経過に伴い非有意となるという結果も報告されていた。

3件の研究では、7日間の食事記録を行うという介入の副次的アウトカムとして、エネルギー摂取量と炭水化物摂取量の変化を検討。いずれも有意な増加が認められたという。

著者らは、「アスリートへの栄養教育の介入法はさまざまであったが、ほとんどのプログラムで栄養知識と栄養素摂取行動に関して良好な結果が得られていた。栄養介入はLEA対策として有益であるように思われる。ただし、現在のアプローチは多様であり、今後の研究では、栄養知識の向上とLEA対策を目的とした、アスリートに幅広く適用可能な栄養教育計画の開発を目指すべきである」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition educational interventions for athletes related to low energy availability: A systematic review」。〔PLoS One. 2025 Feb 14;20(2):e0314506〕
原文はこちら(PLOS)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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