今回から、いなり寿司をアスリートの食堂に提供する活動をご紹介いたします。訪問先は、Jリーグの横浜FC。下平隆宏監督率いるチームメンバー&スタッフの皆さんにご協力いただき、いなり寿司を食べながら、クラブハウスの食生活についてうかがいました。
練習グラウンド、体育館、クラブハウスを兼ね備えた「横浜FC・LEOCトレーニングセンター」(神奈川県横浜市)の一角にあるクラブハウス食堂を、練習後のランチタイムに訪ねました。シャワーを浴びてさっぱりした選手・スタッフは、各々食堂に集まり、しばし休憩のひとときをここで過ごします。
本日のいなり寿司は、和辛子のほどよい刺激と酢飯が合う「辛子いなり」と、白ごまと酢飯を混ぜた「ノーマルいなり」。前回、解説しましたが、「補食」とは、必要なエネルギーや栄養素が朝昼夕の3食で取りきれないときに、それを補うために食べる食事のこと。アスリートの場合は、食事と練習の間が空いてしまって、練習中にエネルギー不足になる場合や、練習が終わってから次の食事まで時間が空いて、疲労回復に支障が出そうなときに食べます。練習後の補食には、糖質とたんぱく質・脂質が摂れるものを選ぶ必要がありますが、いなり寿司はこれにぴったり。今回はランチにプラスした形で召し上がってもらいましたが、皆さんの反応は上々でした。
ーー練習が終わった後の補食としていなり寿司はいかがですか?
いなり寿司は酸味があるので、食欲が無いときや暑いときなどでも食べやすいですよね。
実家ではいなり寿司をよく食べました。昼ごはんが多かったですね。
うどん&いなり寿司とかの組み合わせで食べることが多かったかも。
写真左から山本選手、齋藤選手、藤井選手、渡邉選手
美味しいです! 何にでも合いますよね。
辛子いなりが美味しかったです。
朝ごはんにコンビニで助六寿司を買って、食べたりします。
さすがミスターいなり!(笑)
練習後に小腹がすいたとき、ちょうどいいかも。
グラウンドにいなり寿司があったら食べますよ!
国原さん、試合の前は食べていいの?
国原(公認スポーツ栄養士) 試合後のほうがいいですね
試合2日前くらいから節制し始めるので毎日は難しいですけれど、試合後であれば食べます。
今日、辛子いなりは初めて食べました。美味しいですね!
写真左が草野選手、右が袴田選手
いなり寿司は好きです。うどん屋さんなんかでよく食べます
いなり寿司ってどうやって作るんですか?
ーー今日のは油揚げ自体に味がついていてご飯を入れれば簡単にできますよ
僕は独身なのでそれはいいですね
小さい頃食べたお弁当に、いなり寿司が入っていたのを思い出します。
僕は静岡出身なんですけど、ゴボウが入っていました(袴田)
北海道では普通のいなり寿司でした(草野)
ーー何個くらい食べられますか?
いなり寿司だけならば、20個くらい食べられるんじゃないですか(笑)
いなり寿司、今日は久しぶりに食べました。こんなふうに意識して食べたのは初めてかもしれませんね。
ーー食べる機会はあまりないですか?
子どもの頃のお弁当によく入ってた思い出があります。
ーーお母さんのいなり寿司はいかがでしたか?
大きかったです(笑)パンパンにご飯が詰まっていました。
ーー試合後の補食はどうされていますか?
試合の時はおにぎりやバナナ、ゼリーなどがロッカールームに用意されています。
終わった直後のエネルギー補給用ですね。
ーー選手の栄養管理は?
基本的には選手個々に任せています。
結婚している選手の場合は奥さんがついているので、ある程度気を遣った食事をとっていると思いますが、独身で一人暮らしをしている選手はどうしてるのかな。
でも、基本的な食生活の知識は栄養士さんに聞いて知ってると思いますよ。
ーー選手に注意していることはありますか?
横浜FCの食堂には、株式会社LEOCから国原千佳さんと石川真由美さんの2名の公認スポーツ栄養士が担当し、選手&スタッフの食事を管理しています。食堂運営に公認スポーツ栄養士が入ることにより、試合・練習スケジュールや選手のフィジカルデータに合わせた栄養マネジメントが行われます。
国原千佳さん(株式会社LEOC、公認スポーツ栄養士)
LEOCが運営するこの食堂では、選手やスタッフの朝食、昼食、夕食を毎日提供しています。トップチームの選手が約30名、チームスタッフが約10名、あとはフロントのスタッフの方々が利用されており、公認スポーツ栄養士が中心となりマネジメントしています。また、160名くらいいる中学生・高校生のユースの子たちにも、練習後すぐに食べられるようお弁当を提供しています。
午前中の練習が終わった後のランチは、ほとんどの選手が利用してくださいます。練習が終わり、シャワーを浴びてさっぱりしてから各々食堂へ集まってきます。
食事はビュッフェ形式で、自分の好みの食材・量をチョイスできるようにしています。特徴は品数が多いこと。通常の食事の場合、主食(ご飯あるいは麺類)、汁物、主菜(メインのおかず)、副菜(小鉢)がスタンダードですが、ここでは主食が3品、主菜が2品、サラダバーを含む副菜が3品と通常の食堂よりも種類が多くなっています。主食の3品は、ご飯、麺類と、日替わりでパン類、ホットケーキなど。主食は炭水化物源の料理と考えているので、3つ目の主食はスムージー、デザートなどを提供することもあります。フルーツとヨーグルトは毎日出します。
それぞれの料理を1ポーションずつ食べるとすると、だいたい1,500kcalになります。これを目安に体重などを考慮して個人で調整してもらっています。
取材当日の食事メニュー。選手ら利用者は必要な量を自由に摂ることができる
新入団の若手選手にはまず食事調査を行い、栄養摂取状況を確認します。他の選手も必要に応じて食事調査を行いますが、その結果をフィードバックする際、毎月測定している体重や体脂肪率、筋肉量などの変化から、個人の体格に合わせた目標とする摂取エネルギー量やその他の栄養素の摂り方をアドバイスします。ビュッフェで料理を皿に盛り付けている選手たちに「今日のこのメニューは、こういう栄養がたっぷり入っているからね」とか、食事中の選手に「この間食べてね、って言った〇〇を、ちゃんと食べてる?」と個々に細かく声がけしています。
このように、データや日々のコミュニケーションからアドバイスを行いますが、実際にご飯を選び、量を判断するのは選手自身。自己管理が基本です。
選手一人ひとりのデータを定期的にチェックし頭に入れる。食事メニューの作成や食堂での「声がけ」に活かす
例えば、体重を気にしている選手は、自主的に食べすぎないようにコントロールしています。とはいえ、少しくらい食べすぎても夕食と比べれば、昼食はあまり問題ないと考えていますし、ハードな練習後の食事はしっかり摂ってもらいたい。もし食べすぎが心配で食事量をコントロールするならば、間食や夕食で考えてみてと伝えています。
この日は「辛子いなり」と「基本のいなり」が提供された。こちらのレシピは後半でご紹介
いなり寿司は、コンパクトで、皮に味があるので、食欲が落ちがちな夏でも食べやすいですよね。普段はシンプルないなり寿司が多いですが、今回の企画では毎回異なる工夫を加えてお出しすることになっています。今日はゴマを混ぜ、辛子を塗ったご飯を詰めたものにしてみました。辛子いなりは和辛子の風味で食欲が増します。
この食堂では毎日、白米が出ていますので、いなり寿司はその代わりではなく、「追い炭水化物」のような形で提供しています。もう少し食べたいけれど、白米は飽きたというときに手に取ってもらえればと考えて出しています。
炭水化物(糖質)は体内でグリコーゲンという形でエネルギー源として貯えられますが、運動後にはグリコーゲンが枯渇します。いなり寿司に詰めるすし飯に使われる酢は、グリコーゲンの再補充を促進する効果が期待されるので、結果、疲労回復が早くなる効果があります。ですから、練習や試合後の「補食」にぴったりなんです。特に食欲が落ちてくる夏場には食べやすく効果的だと思います。ご飯(白米)の量を減らして、その分いなり寿司を多めに摂ると良いですね。
「味付けいなり」の皮は、煮付けてあるのでその手間が省けるのは、食堂のような所でも、あと一品という時に便利ですね。忙しい家庭でも、すぐに使えて良いと思いました。例えば、ご飯に油揚げを巻く時間がないときには、油揚げを小さく切ってご飯に混ぜ込めば、簡単な「ちらし寿司」のような使い方もできます。うどんや蕎麦の具にもできます。お米や麺などの糖質に、油揚げの脂肪やたんぱく質、甘い味付けでエネルギーアップ。
ご飯量は各自で調整していますが、体重を増やしたい若手の選手は、お茶碗に大盛りで食べます。アウェイや遠征先のホテルの食堂などで聞いたところ、横浜FCは他のチームよりも食べるそうです(笑)。やはり、食べて動ける選手というのが理想です。朝食もしっかり食べる選手は強いですね。
辛子いなり(写真左)と基本のいなり
みすずコーポレーションのWEBサイトでは、美味しくて手軽で楽しい!アレンジいなり寿司レシピが紹介されています。ぜひチャレンジしてみてください!
北海道から沖縄まで2,200ヵ所以上の施設で食事を提供し、オフィス・工場の社員食堂、寮、学校、スポーツ施設などのB&I分野(ビジネス&インダストリー)と老人ホーム、病院、保育園、障がい者施設などのHC分野(ヘルスケア)の両マーケットで、バランス良くさまざまな施設に食事サービスを提供しています。
食事で様々のスポーツチームをサポートしているほか、Jリーグチーム「横浜FC」、フットサルチーム「エスポラーダ北海道」のスポンサー活動、また、トップアスリートをはじめ、アスリートのご家族、 スポーツ振興団体、スポーツ指導者などを対象に、スポーツ栄養に関する専門知識を教える各種セミナーも開催しています。
明治35年の創業から117年。凍り豆腐や味付けいなり揚げなどの大豆加工製品のレトルト・チルド商品製造・販売を行う長野県長野市の老舗メーカー。製造工程で出た排水処理からの副生成物で発電を行ったり、業務用肥料の原料として有効利用するなど、環境にやさしい技術を取り入れ、資源循環型生産を行っています。近年では、Inari-sushiは、“日本の元祖ファストフード”として、sushiと並び人気が広まり、欧米、アジア、アフリカなど、海外への輸出も増加中。また、毎月17日は「いなりの日」として記念日登録しており、普及活動も行っています。