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今こそスポーツ栄養で、負けないカラダをつくろう

一般社団法人日本スポーツ栄養協会-SNDJ- 理事長
鈴木 志保子
2020年04月28日

日本スポーツ栄養協会-SNDJ-理事長
 鈴木志保子から皆さまへ

一般社団法人日本スポーツ栄養協会-SNDJ-理事長 鈴木志保子

先日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための「緊急事態宣言」が全国に発令されましたが、関係者の皆様におかれましては、安全に留意されお過ごしのことと思います。これだけ活動が制限される事態は、戦後初めての経験でではないでしょうか。見えない敵と闘うことは、こんなにも大変なものかと実感しています。

アスリートの皆さんは、3月中はまだ、感染しないよう気をつけて練習を続けようという方が多かったかと思いますが、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定した頃から、特に4月に入ってスポーツ界はガラッと一変。もう何より"命"、"生きること"が優先という意識に変わりました。

これまでは、「命はあって当たり前」でした。でも今は「練習より命」です。

そこまでいった状態で、今、選手たちに何を言っているかといったら、3密や手洗い、うがいに加えて、「栄養状態を良好に維持すること」。リズムを崩さない生活を維持しようと伝えています。こういう伝え方をするのは初めてで、今、私にできることは、そこしかありません。

体重維持が栄養状態の判断基準になる

体重維持が栄養状態の判断基準になる

スポーツ栄養とは、自分の思い通りに生きるための栄養学と私は定義しています。

これに当てはめると、今は、"感染しない身体をつくる"、正しくは"感染リスクを低下させる状態の身体をつくる" ことが共通のテーマです。そのためには、自分の持っている免疫機能を最大限に発揮できる状態を維持する必要があります。(よく、免疫力を高めると言いますが、自分の持っている免疫力の最大限を越えることはありません。)

こういう時なので、練習ができない → 動いているときと同じ量食べて太る → 過剰栄養の状態で感染リスクが高まる。

逆に、練習しない → 食欲を失う → 食べることができない → やせる → エネルギー不足=低栄養の状態になってしまうから、これも感染リスクが高くなります。

ですから私がみている選手には、今は何より「体重を維持して」と言っています。

動いた量と食べた量の収支、帳尻を合わせられるよう、身体と向き合い調節する。これはアスリートだけではなく一般の方にも言えます。体重を増やさない、減らさないことが、栄養状態が維持されているかどうかの判断基準になります。ですから、朝イチ排尿後の体重を毎日測ることは、健康管理の基本なのです。

メンタルと食は直結、外出自粛中でもコミュニケーションは大切

メンタルと食は直結、外出自粛中でもコミュニケーションは大切

メンタルも疲弊しやすい時期です。

私もそうですが、こんなに家にいることって今までなかった方も多いと思います。家族がいれば自分が必要な分のおしゃべりができますが、1人暮らしだったりして1日会話しない時間が長くなると、誰でも落ち込んでメンタルがやられてきます。これは自然の摂理と言ってもいい。引きこもり高齢者にも通じるのではないでしょうか。

メンタルと食は直結しています。メンタルが落ち込むと食事が面倒くさい、作りたくない、食べたくない、食欲を失った...という意識になりがちです。逆に必要以上に食べてしまう方もいるでしょう。そうなったら新型コロナの思うつぼです。

そうならないように、自分が満足するコミュニケーションの量を見極めたうえで、Webで画面をつなげて仲間と一緒に練習したり、語り合ったりすることも、精神的な安定感をもたらすのではと考えます。

子どもたちにはしっかり食べさせて!

子どもたちにはしっかり食べさせて!

子どもたちの場合は、活動量が少なくなると、そのぶん発散が少なくなり、食べる量や睡眠の質も下がってくる可能性があります。できるだけ外で人が少ないところで縄跳びするなど、身体を動かしてほしいと思います。運動量を確保することが、栄養状態を維持することにつながります。

学校が休校になり、子どもが夜寝ない、朝起きないといった声も増えているようです。

私がいつも言うのは、「朝ごはんを制する者は一生を制する」ということ。朝ごはんをしっかり食べて、夜きちんと寝るというサイクルを崩すと発育発達に影響するので、学校がある日と同じように生活させてください。これはある意味、親の義務だと思って必ず守ってほしい。そこは曲げてはいけないところだと思います。

スポーツキッズの保護者の皆さん、この機会に、発育発達をしっかり取り組んではいかがでしょうか。ジュニアアスリートたちの中には、運動をしすぎていた子たちも多く、それが発育発達に、見えない支障をきたしていることがあります。

この自粛期間中、運動量が減ることによって、食べる量が追いついて、その子がもっているMAXの発育発達ができる可能性が高い。だからお母さんたちは、「動いてないんだから、そんなに食べさせなくてもいいよね」と思わずに、しっかり食べさせて、栄養状態をすごくいい状態にして、自粛の時だからこそ発育発達をメインに、よい身体ができるようにという思いで食事、栄養を考えてもらいたいと思います。

今こそ、スポーツ栄養を活用してほしい!

今こそ、スポーツ栄養を活用してほしい!

現在、フリーランスの栄養士、トレーナー、指導者をはじめ、スポーツに関わる仕事が激減してしまっています。これからどうしたらいいか途方に暮れている方も少なくないと思います。それはこの業界だけでなく、きっとすべての国民が、それぞれの立場で変化の波に流されている状況で、支えあいながら立ち向かっていかなくてはならない時。スポーツ栄養の知識や経験を活かせる場があるのではないかと考えています。

例えば、これまで練習に明け暮れていたアスリートの栄養状態を良くすることで、今までできなかった体づくりができるかもしれない。オンラインを活用すれば、個人向け栄養指導や子供たちの発育発達支援ができるのでは。また、専門家同士で話し合う場を作ったり、スポーツ栄養の現場から声を上げ、情報発信できる場も作ったり、フリーの栄養士を応援する企画もやってみたい。

今だからできる取り組みを、未来につながる活動を、日本スポーツ栄養協会として取り組んでいきたい。そんな想いで、今回『スポーツ栄養Web』に新型コロナに関する情報コーナーを立ち上げ、このシリーズをスタートすることにしました。

公認スポーツ栄養士は、身体のベースとなる"栄養"で、パフォーマンスをマネジメントする専門職です。栄養を駆使して、アスリートのパフォーマンスを限界まで高め、記録や成果を出す職人的なノウハウ、経験があります。

今こそスポーツ栄養が、広く役立ててもらえるチャンスだと確信しています。

ぜひ皆さんの力をお貸しください。
引き続き、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人日本スポーツ栄養協会
理事長 鈴木志保子

連載「新型コロナウイルスで自粛中の食生活ガイド」目次

  1. 今こそスポーツ栄養で、負けないカラダをつくろう
  2. 自粛生活がもたらす健康リスクと睡眠・栄養の考え方
  3. バランスの良い食事とは?
  4. 感染症に負けない食事とは?【Q&A】
※以下、近日公開予定
  • 免疫力を下げないために―お金と手間をかけなくても必要な栄養をとる方法―
  • 休校・外出自粛でも、発育発達に影響をおよぼさない生活習慣と食生活

プロフィール

鈴木 志保子(すずき しほこ) 管理栄養士、公認スポーツ栄養士
一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長。公立大学法人神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授。
実践女子大学卒業後、同大学院修了。東海大学大学院医学研究科を修了し、博士(医学)を取得。2000年より国立鹿屋体育大学体育学部助教授、2003年より神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授を経て、2009年4月より現職。(公社)日本栄養士会副会長、NPO法人日本スポーツ栄養学会前会長、日本パラリンピック委員会女性スポーツ委員会委員、東京2020組織委員会飲食戦略検討委員など役職多数。
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