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炭水化物マウスリンスでソフトボールのバッティングが向上する? 疲労との関連も示唆

炭水化物水溶液の洗口(マウスリンス)が、ソフトボールのバッティング精度を高める可能性を示した研究論文を紹介する。二重盲検試験の結果、プラセボに比べて打ち出し角度の安定性が向上したという。中国からの報告。

炭水化物マウスリンスでソフトボールのバッティングが向上する? 疲労との関連も示唆

中国国内4位以内の女子大学ソフトボールチーム選手を対象に検討

運動前の炭水化物摂取が筋グリコーゲンの維持に働き、持久系スポーツのパフォーマンスを向上させることには多くのエビデンスがある。しかし炭水化物の食品や飲料を摂取することによって、消化器症状が発現することがあり、そのためにパフォーマンスを発揮できないということも起こり得る。これに対して、炭水化物の水溶液を口内にふくみ洗口して、飲まずに吐き出すというマウスリンスが提案され、有効性が報告されてきている。

体内にほとんど吸収されずエネルギー基質とはならない炭水化物の洗口が有効であることの根拠として、中枢神経系を刺激することで疲労を軽減するといったメカニズムが想定されている。これまでに、スポーツパフォーマンスへの炭水化物洗口の影響は一貫性という点で十分ではないものの、疲労時の認知機能に対する影響はより確かであり、この点はメンタルスポーツでより有利に働く可能性があって、ソフトボールでのバットコントロールやバッティング精度もこれに該当する。

以上を背景として今回紹介する論文の著者らは、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により、炭水化物洗口のバッティングスキルへの影響を検討した。

研究デザインについて

研究参加者は女子大学生ソフトボール選手16人。1人が脱落し解析対象は15人となったが統計学的検討から、15人というサンプルサイズは有意差の検証に不足ないと推定された。なお、研究参加の適格条件として、6年以上の競技歴があり、中国国内上位4チームに所属していることなどが設定されていて、疾患や傷害罹患者は除外された。15人の平均年齢は20.6±0.9歳、トレーニング歴6.8±0.8年だった。

全体を2群に分け、1群は無味無臭の炭水化物水溶液(6.4%のマルトデキストリン)25mLで洗口、他の1群は同量のプラセボ(ミネラルウォーター)で洗口し、後述のテストを実施。7日間のウォッシュアウト期間をおいて割り付けを切り替え、再度同様のテストを行った。研究期間はオフシーズンで、5日間のトレーニングに続く2日間を休息日として、その翌日にテストを行った。

最初のテストの3日前から、すべての食事の内容と摂取時間を記録するとともに写真を撮影し、2回目のテストでそれを再現するように求めた。テスト当日は正午に昼食を摂取、15時30分からテストを開始した。

テストの項目は、認知機能検査(ポズナー・キューイング課題)、握力、カウンタームーブメントジャンプ(countermovement jump;CMJ)、およびバッティングテスト。バッティングテストはタナーティーを用いて5球を5セットとし、セット間に3分間の休憩をはさんで試行。打球速度と打ち出し角度を評価した。

各テスト項目の試行前に、炭水化物またはプラセボ水溶液25mLで20秒間洗口。バッティングテストではセットごとに洗口し、2条件での合計洗口回数は32回だった。洗口後に被験者へ炭水化物かプラセボのどちらだったかを質問した結果、正答率が46%であったことから、盲検化が成功していたことが確認された。

炭水化物洗口でバッティングの打ち出し角度が安定

では結果だが、認知機能検査、握力、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)については、両条件間に有意差は認められなかった。それに対してバッティングテストでは、打ち出し角度の安定性に有意差が認められ、炭水化物洗口条件のほうが安定性が高かった。詳細は以下のとおり。

平均打球速度は炭水化物条件が97.4±3.99mph、プラセボ条件が97.5±4.01mph(p=0.754)、最大打球速度は同順に100.0±4.0mph、99.9±4.8mph(p=0.822)であり、いずれも有意差がなかった。また平均打ち出し角度は、7.0±2.6°、6.6±2.5°で有意差がなかった(p=0.420)。それに対して、打ち出し角度の一貫性は、5.0±0.9°、5.8±1.5°であり、炭水化物条件のほうが有意に安定していた(p=0.025、効果量〈d〉=0.69)。

バッティング精度以外に有意差がないのは、疲労が蓄積してなかったためか

打ち出し角度の安定性以外は有意差がなかった理由について著者らは、1セット5球であり、十分な休憩をとることができたため、疲労の兆候がなかったことの影響を考察として挙げている。ソフトボールはバッティング以外に守備と走塁を必要とするため、試合の後半の疲労が蓄積してくるシーンでは差が生じる可能性もあることから、「疲労下での打球速度などへの影響の有無を確認する研究が求められる」としている。

論文の結論は、「本研究の結果は炭水化物の洗口が、ソフトボールのバッティングにおける打ち出し角度の一貫性を高める効果的な方法であることを示唆している。ただし、選手が疲労を感じていない場合、打球速度の向上にはあまり効果的でないようだ。今後の研究では、疲労時の調査や、ピッチングまたはピッチングマシンを用いた検討などによって、より実践に近い条件での炭水化物洗口の効果の検証が期待される」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Carbohydrate Mouth Rinsing Improves Softball Launch Angle Consistency: A Double-Blind Crossover Study」。〔Nutrients. 2025 Jan 2;17(1):167〕
原文はこちら(MDP)

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