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REDsを知る・見つける・治す・予防するREDsを知る・見つける・治す・予防する

4. REDsを治す・予防する

2024年03日01日 更新

REDsを知る・見つける・治す・予防する

続いてREDsの予防と治療について話を進めますが、ここでは専門的なことよりも、多くの人に知っていただきたい大切な要点に絞って解説します。

4-1. REDsに関心をもつ

REDsに限らず、どのような病気でも、その治療は病気に気づくことから始まります。病気に気づかなければ治療の機会は訪れません。また、病気に気づくためには、そのような病気があるという事実を知っていなければなりません。

ですからREDsの場合、アスリート本人や指導者(コーチ)はもちろん、その他のサポートスタッフおよび家族など周囲の人たちが、まずREDsという病気(症候群)があるということを理解することが、REDsの予防・治療の第一です。そして、表2青文字赤文字で記した症状や変化がみられる場合、本人であれば周囲の人に助言を求め、周囲の人であればアスリート本人に注意を促したり受診を勧めたりすることから治療がスタートします。

4-2. 気づいたら相談する/話しかける

REDsの疑いに気づいたら、まず周囲の人に相談することが勧められます。ただ、女性アスリートの月経に関する問題は、コーチが男性の場合には相談に高いハードルがあることが容易に想像できます。そのような時は女性のサポートスタッフに相談したり、女性スポーツ外来のある医療機関を受診したりしてみましょう。女性スポーツ外来はまだ数は少ないですが、主要都市を中心に少しずつ開設されるようになってきました。

一方、男性コーチの側にも、「月経を話題にしたら、セクハラと間違わられないか」などと心配する声もあるようです。そのような危惧や誤解の恐れを解消するためにも、スポーツ界にとどまらず社会全体のREDsの認知度を高めていく必要があります。

他方、男性アスリートに関しては、メンタルヘルス上の悩みがあっても他者に相談するハードルが、女性アスリートより高いという実態が報告されています。メンタルヘルスの不調もREDsに伴う症状である可能性もあるので、そのような変化を無視せず見逃さないサポート体制の確立が望まれます。

4-3. LEAを改善する

REDsに対する治療の基本は、REDsの基盤にある利用可能エネルギー不足(LEA)を改善することです。REDsによって現れている症状のタイプにかかわらず、LEAの改善は欠くことができません。無月経に対してホルモン療法、貧血に対して鉄剤の服用など、REDsで生じている個々の症状や異常に対する特異的な治療法もありますが、それらもすべて、LEA改善のうえで、またはLEA改善と同時に進めていきます。

女性アスリートのLEAは、摂取エネルギー量から運動による消費エネルギー量を引き、それを除脂肪量で割った値が30kcal/kg/日未満の場合と定義されています。ただ、消費エネルギー量を正確に把握することは容易でないため、現実的には体重を基にLEAのリスクを評価することが一般的で、米国スポーツ医学会はLEAのスクリーニング(より詳細な検査の必要性を判断するための一次検査)を行うべき対象として、(1)BMI17.5以下、(2)思春期では標準体重の85%以下、(3)1カ月で10%以上の体重減少――を挙げています。

LEAに該当する場合、その改善は、(1)摂取エネルギー量を増やす、(2)消費エネルギー量を減らす――という2方面の戦略をとります。(2)についてはコーチなどの指導の下で、エネルギーの消費を抑えながらパフォーマンス低下を来しにくいトレーニングメニューを探ることになります。ここでは(1)の栄養面について、少しく詳しくお話しします。

4-4. LEA改善のための食事

表1に挙げたような理由のため、アスリートは非アスリートよりも多く食べる必要があるのにもかかわらず食べられないことが少なくありません。

対策として、食事の時間がとれない、またはトレーニング後に食欲が出ないといった場合は、スケジュールを見直してみましょう。食欲低下に対しては、補食をこまめに摂ったり、消化がよく食べやすい献立を工夫したり(例えば食後にデザートを加える)、少量でエネルギー量の高い食材(具体的には油脂類)を上手に利用する――などが挙げられます。また、LEAのアスリートは、主食(炭水化物)の摂取量が、より少なくなっていることが少なくありません。ごはんをもう一口多く食べることから始めるのもよいかもしれません。

このような対策は、LEAの改善策であると同時にLEAの予防策としても活用できます。

ところで、体重が軽いことが有利に働く競技では、LEA改善がパフォーマンスにマイナスとなることも想定されます。この点は悩ましい問題で、アスリート本人とコーチや監督、スタッフとの話し合いのもと、ベストと考えられる選択をすることになります。基本的には、健康リスクが大きいほど治療に重点を置く(LEA改善を重視する)ことになります。栄養学的には、摂取エネルギー量をわずかずつ増やし、代謝の改善が進むことで体重増加を抑えつつ、LEA自体も改善に導くといった介入を行うことがあります。

4-5. REDsで生じている個々の症状を治療する

LEAを改善してもREDs症状の改善が不十分な場合や、治療の緊急性が高い場合にはLEA改善と並行して、それらの症状に対する医学的な治療が行われます。例えば、無月経に対するホルモン療法、メンタルヘルスの不調に対する精神医学的治療、貧血に対する鉄剤による治療などです。

治療法の詳細についてはケースごとの専門的な話になりますので、ここでは触れませんが、それらの医学的な治療の効果を高めるためにも、適切な栄養素の摂取が重要です。例えば貧血に対しては鉄分やビタミンBなど、骨量の低下に対してはカルシウムやビタミンDやKの摂取が大切です。

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