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REDsを知る・見つける・治す・予防するREDsを知る・見つける・治す・予防する

3. REDsを見つける

2024年02日29日 更新

REDsを知る・見つける・治す・予防する

3-1. REDsの健康への影響

REDsの自覚症状・他覚症状として多いのは、女性の場合は月経異常であり、性別を問わず貧血や骨量減少、メンタルヘルスの変化などもよく現れます。それら以外にも、IOCのコンセンサスステートメントには、REDsで生じる健康への影響を表2のようにまとめています(小項目は一部のみ抜粋)。さまざまな経路で健康が蝕まれてしまうことを理解いただけることでしょう。

表2 LEAによって生じるREDsの健康への影響
生殖機能障害
女性:性ホルモン減少、希発月経/月経不順、原発性無月経(初経発来がない)、続発性無月経(初経発来後の無月経)、無排卵周期症(月経様の出血はあるが排卵がない)
男性:性ホルモン減少、精子異常、勃起不全(ED)
性別にかかわらず性欲低下
骨の健康障害
骨密度低下、骨強度低下、骨の微細構造のダメージ、ストレス骨折(疲労骨折)
若年アスリート:骨の形成が不完全になる(最大骨量の低下)
消化管機能障害
腹痛、腹部膨満、下痢・便秘
エネルギー代謝調節障害
無症状、トリヨードサイロニン(T3〈甲状腺ホルモンの一つ〉)減少、安静時代謝量の低下、レプチン(脂肪細胞由来の抗肥満ホルモン)減少、コルチゾール(ストレスホルモン)の上昇
造血機能障害
鉄欠乏、ヘモグロビンレベルの低下(貧血)、高地トレーニングの効果減弱
尿失禁
尿失禁の症状
糖・脂質代謝の障害
低血糖、低インスリン血症、総コレステロール・LDL(悪玉)コレステロール上昇
メンタルヘルスの問題
うつ病、運動依存、食行動の乱れ、摂食障害
神経認知機能障害
記憶力低下、判断力低下、空間認識能低下、計画性低下、実行機能低下
睡眠障害
睡眠障害の症状
心血管系の障害
心電図異常、血行動態異常(低血圧、起立性低血圧、失神)、血管内皮機能障害、血流減少、心臓異常(左室心筋重量減少、左室収縮能低下、僧帽弁逸脱症、心筋線維症)
骨格筋機能の低下
筋タンパク質合成速度の低下、筋グリコーゲン回復速度の低下
発育・発達障害
IGF-1(インスリン様増殖因子I)の減少、GH(成長ホルモン)の増加とGH抵抗性の増大、予測成長曲線からの逸脱
免疫能低下
易感染性(感染症にかかりやすい)、免疫バイオマーカーの変化
青文字は気づきやすいREDs症状、赤文字は積極的に疑うことでREDsとの関連に気づく症状、黒文字は検査で見つかる他覚所見。
(文献1を改編)

なお、これらのうち、女性の月経異常を除いては、REDsを積極的に疑わないと見逃してしまいやすい症状が多いことに注意が必要です。ここでは、REDsに気づくきっかけとなりやすい症状(自覚症状)を青文字、REDsで現れることのその他の自覚症状を赤文字、および、自分ではわからずに検査によって発見される他覚所見を黒文字で示しています。

3-2. REDsの影響が生涯続くこともある

若年アスリートのREDsにはより注意が必要です。ジュニア期から未成年の時期にこれらの健康への悪影響が生じた場合、早期に解決しないとその影響が成人後から、場合によっては一生続いてしまう可能性があるからです。

具体的には、女性の無月経への対処が遅れると、スポーツから引退した後にも月経が訪れず、妊孕性が失われたままとなってしまうことがあります。また、性別を問わず骨量は20歳前後にピークに達してそれ以降は増加しないため、REDsによって最大骨量(その人の一生で骨量が最大化した時点の骨量)が十分でなくなってしまうと、その影響は人生の後半に骨粗鬆症のリスク増大として現れます。

3-3. REDsのスポーツパフォーマンスへの影響

次に、REDsによるスポーツパフォーマンスへの影響についてです。IOCのコンセンサスステートメントには、表3のようにまとめられています。トレーニング効率が落ちたり、トレーニング後の回復に時間がかかるようになったりするなど、アスリートとして不利な変化が生じ、結果として将来の可能性が狭められてしまうことがおわかりになると思います。

表3 REDsのスポーツパフォーマンスへの影響
アスリートとしての将来性が狭まる
病気や怪我の増加により、計画どおりにトレーニングを行えなくなる 病気や怪我により、大事な試合に参加できなくなる
トレーニングの効率が悪くなる
回復に要する時間が長くなる
反応速度や認知機能が低下する
モチベーションが上がらない
筋力が衰える
持久力がなくなる
パワーがなくなる
(文献1を改編)

3-4. 直ちに治療介入が必要なREDs

REDsがそれほど深刻でない場合は、エネルギーバランスがプラスになるように食事とトレーニング内容をアレンジし、治療とスポーツを両立させることができます。しかし、病状が深刻な場合、一時的にスポーツを中止し治療に専念しなければなりません。

表4は、IOCのコンセンサスステートメントに挙げられている、直ちに医学的な介入が必要な状態のリストです。

表4 直ちに治療介入が必要なREDs
  • BMIが年齢と性別の一致する集団の中央値の75%以下
  • 電解質異常(低カリウム血症、低ナトリウム血症、低リン血症など)
  • 心電図異常(QTc間隔の延長や重度の徐脈〈成人では心拍数30bpm以下、未成年では45bpm以下〉)
  • 重度の低血圧(90/45mmHg以下)
  • 起立不耐症(臥位から立位への体位変換で収縮期血圧低下が20mmHg超、拡張期血圧低下が10mmHg超低下)
  • 外来での摂食障害の治療不成功
  • 栄養失調による急性合併症(失神、発作、心不全、膵炎など)
  • 医学的に必要とされる治療やモニタリングが、トレーニングや試合中に実施されていない、あらゆるケース
(文献1を改編)

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