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食べる量を決めない「直感的摂食」で女性ランナーの摂食障害リスクが低下、トライアドへの影響なし

女子大学生ランナーにおいて、満腹感や空腹感のサインに基づく食事スタイルである「直感的摂食(IE)」が、摂食障害のリスクを低下させる可能性を示唆する研究結果が報告された。一方で、女性アスリートのトライアドに対する保護的効果は認められないという。

食べる量を決めない「直感的摂食」で女性ランナーの摂食障害リスクが低下、トライアドへの影響なし

直感的摂食は女性ランナーの三主徴(トライアド)を防ぐのか

女性アスリート三主徴(female athlete triad;FAT)は、月経異常、骨粗鬆症、エネルギー可用性低下という三つが相互に関連する症候群であり、近年はこの概念を整理・拡大し対象に男性アスリートも含めて、スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;RED-S)と呼ばれるようになってきている。これまでの研究で、食行動の乱れが女性ランナーの骨密度の低さと関連していることが示されている。

一方、直感的摂食(intuitive eating;IE)は内的な空腹感や満腹感のサインに従い食事を摂るスタイルであり、食べる量を制限しないことを原則としている。この直感的摂食が食行動の乱れのリスクを低下させ得ることが、いくつかの研究で報告されている。

大学生アスリートの19.7%に乱れた食行動がみられるとする報告があり、女性でその割合がより高く、さらにランナーなどの痩せていることが有利とされることのある競技では、他の競技よりも乱れた食行動や摂食障害のリスクが高いことが知られている。これらを背景として、今回紹介する論文の著者らは、直感的な摂食が女性ランナーのトライアド(FAT)を抑制する可能性を想定し、以下の検討を行った。

研究対象と評価指標

この研究は、全米大学体育協会(NCAA)ディビジョンIのクロスカントリーチームを対象にチラシを配布するなどして募集された、週に15~20時間のトレーニングを行っている女子学生ランナー13人と、やはりチラシ配布などによって募集されたアスリートでない女子学生12人。

摂食障害のリスクは、28項目からなる摂食障害診断質問票(Eating Disorder Examination Questionnaire;EDEQ)で評価。EDEQは0~6点にスコア化して評価し、スコアが高いほど摂食障害のリスクが高いことを意味する。

直感的摂食(IE)については、23項目からなる直感的摂食の指標であるIE Scale-2(IES-2)を用いて評価された。IES-2は0~6点にスコア化して評価し、スコアが高いほど直感的摂食の原則をより多く行っていることを意味する。

女性アスリートのトライアド(FAT)については、(1) 二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)法による骨密度および体組成の測定、骨特異的身体活動質問票(Bone-specific Physical Activity Questionnaire;BPAQ)、(2) 平日2日、休日1日という3日間の食事記録と運動記録に基づく栄養素摂取量および運動による消費エネルギー量の推計、それに基づく利用可能エネルギー量、および、(3) 月経状態の質問票によって、FATのコンポーネントを評価した。

直感的摂食のスコアが高いほど、摂食障害のリスクが低い

ランナー群と非アスリート群(対照群)とで、年齢(ともに平均が19歳代)、BMI(同順に21.7±2.2、23.1±2.0)、人種/民族、および握力、骨も除いた除脂肪量(bone-free lean mass;BFLM)には有意差がなかった。ただし体脂肪率はランナー群のほうが有意に低値だった(27.6±2.0 vs 34.8±3.0%、p<0.001)。

摂食障害診断質問票(EDEQ)のスコアは、ランナー群1.31±1.33、対照群0.92±0.65であり、ランナー群でやや高かったが有意差はなかった。直感的摂食指標(IES-2)のスコアは、同順に3.53±0.65、3.71±0.55であり、ほぼ同等で有意差はなかった。

なお、ランナー群は、摂取エネルギー量が多く、カルシウム、マグネシウム、リン、タンパク質の摂取量が多かった。

IES-2スコアはEDEQスコアと逆相関

直感的摂食指標(IES-2)と摂食障害診断質問票(EDEQ)のスコアの相関を検討した結果、全体としてIES-2スコアが高いほどEDEQスコアが低いという逆相関が認められた(r=-0.596、p=0.002)。つまり、直感的な摂食の傾向が強い食事スタイルであるほど、摂食障害のリスクが低かった。

ただし、IES-2スコアは、摂取エネルギー量、利用可能なエネルギー量、骨量、体脂肪率とは相関していなかった。また、月経異常に関しては、全体として2人が稀発月経を報告し、アスリート群、対照群各1人だった。つまり、トライアド(FAT)のコンポーネントと直感的摂食との関連はみられなかった。

直感的摂食による利用可能エネルギー量との関連は今後の検討課題

まとめると、直感的摂食は女子大学生の健康的な食行動と関連しており、この集団の利用可能エネルギー量、骨密度、体組成とは関連していなく、女性アスリートのトライアドに対する保護的作用は示されなかった。

著者らは、「本研究から得られた主な知見は、直感的な摂食が摂食障害のリスクと逆相関していることにある」と述べ、女性ランナーおよび非アスリート集団の利用可能エネルギー量の低下を防ぐことを目的とした直感的摂食の適用可能性については、引き続き研究が必要としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Intuitive Eating and the Female Athlete Triad in Collegiate Runners」。〔Nutrients. 2025 Jul 17;17(14):2337〕
原文はこちら(MDPI)

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