コレステロール管理のための機能性食品 メカニズムと有効性、新たな指標のレビュー
世界の主要な死因である心血管疾患(CVD)は、低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の上昇が主要なリスク因子であり、薬物療法に加え食事療法や機能性食品がLDL-C低下につながる可能性がある。そのメカニズムや有効性等について総括した、メキシコの研究者によるレビュー論文を紹介する。グリセミックインデックス(GI)に類似する、食事負荷によるコレステロール上昇を把握するための新たな指標の提案も述べられている。

イントロダクション
高LDL-C血症は、アテローム性動脈硬化症と心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)の確立した危険因子であり、LDL-Cを低下させるほどCVDリスクが低下することが明らかにされている。LDL-C低下療法としてスタチン系薬剤が主に使われているが、食生活の改善や機能性食品などの非薬理学的アプローチへの関心も高まっており、臨床ガイドラインでも多くの場合、まず生活習慣の改善を推奨している。生活療法により、LDL-Cを約10~20%低下させられるとするデータもある。
機能性食品は、基本的な栄養を超えた健康効果をもたらす食品と定義されることが多い。コレステロール低下関連では、植物ステロールを強化したマーガリンや乳製品が、十分なエビデンスをもち、欧州や米国などで強調表示の承認を得ている。コレステロールをターゲットとした機能性食品と栄養補助食品の市場は、過去20年間で着実に成長している。
コレステロールとCVDリスク:機能性食品の根拠
コレステロールは、細胞膜の成分として、またステロイドホルモンや胆汁酸の原料として、極めて重要な生理学的役割を果たしている。しかし、循環コレステロール、とくにLDL-Cが慢性的に高値の場合、動脈硬化性プラークの形成が促進され、CVイベントリスクが高まる。
食事は、コレステロールの摂取量(食事摂取量と肝臓での合成)と排出量(胆汁と便への排泄)のバランスを調整することで、コレステロール値に影響を与え得る。飽和脂肪酸と食物コレステロールの摂取量が少なく、食物繊維を多く含む食事は、脂質プロファイルを改善し、高コレステロール血症患者のLDL-Cを10~20%低下させると報告されている。高コレステロール血症の管理において食事療法は第一選択の介入であり、機能性食品の利用によってこのアプローチを強化することは正当化される。
機能性食品は、特定の栄養素または生理活性化合物がコレステロール代謝の異なる側面を調節できるという原理に基づくものであり、腸管におけるコレステロール吸収阻害、肝臓における内因性コレステロール合成阻害、LDL-Cのクリアランスと排泄の促進といった機序が考えられる。これらの成分を日常の食品に取り入れることで、一般的な健康的な食事のみで得られる効果を超える、コレステロール低下作用を期待できる。
コレステロール低下に有益な食品や成分
腸管におけるコレステロール吸収阻害としては植物ステロール、水溶性食物繊維など、内因性コレステロール合成阻害としては紅麹、ベルベリンなどが知られており、加えてω3脂肪酸などのエビデンスが豊富である。
これら以外にも、コレステロールに良い影響を与える、注目に値する食品や生理活性物質がほかにも挙げられる。
ナッツと種子
アーモンド、クルミ、亜麻仁などのナッツ類は、不飽和脂肪酸、食物繊維、ファイトケミカルを豊富に含む栄養価の高い食品。1日に約30~50gのナッツを習慣的に摂取すると、LDL-C値がわずかに低下する(多くは5~7%程度)。また、抗炎症作用や抗酸化作用も併せ持つと考えられ、CVD抑制効果のエビデンスが多い。
ポリフェノールと抗酸化物質
ポリフェノールを豊富に含む食品(緑茶、ココア、ベリー類、赤ワインなど)は、LDL-C値を劇的に低下させることはないが、コレステロール代謝や血管の健康の他の側面を改善する。例えば、ポリフェノールはLDL粒子の酸化修飾を抑制し、血管内皮機能を改善してLDL-Cの動脈硬化性を低下させる。とくにベリー類(イチゴやブルーベリーなど)を加えることで、LDL-Cレベルには大きな変化を与えることなく、LDLの酸化を抑制しHDL機能を改善してリスク低減に寄与する。
プロバイオティクスとプレバイオティクス
腸内細菌叢はコレステロール代謝に影響を与える可能性がある。一部のプロバイオティクス株、とくにラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属は、臨床試験においてLDL-Cをわずかに低下させることが報告されている。これらのプロバイオティクス株は、腸内でコレステロールに結合するか、肝臓でのコレステロール合成を阻害する酸を生成することで、健康効果を発揮すると考えられる。同様に、プレバイオティクス繊維(イヌリン、フラクトオリゴ糖など)は、コレステロール排泄を促進する細菌叢を活性化する。プロ/プレバイオティクスのコレステロールへの影響は一般的に顕著でなく、その効果も一貫していないが、機能性食品への配合は、ますます注目を集めている。
食品および栄養補助食品のコレステロール低下能に関する指標の提案
コレステロールを下げるための機能性食品や成分はさまざま存在するが、現在のところ、それらの効力を比較したり、消費者や医療専門家にそれらの影響を定量的に伝えたりする統一された方法はない。この問題を解決するために、本稿では、コレステロール低下能指数(Cholesterol-Lowering Capacity Index;CLCI)を提案する。これは、特定の食品または栄養補助食品がLDLコレステロールを下げるのにどれだけ効果的かを定量的に示す標準化されたスコアとしての提案である。この概念は、グリセミック指数や抗酸化能のORACスコアなどの、栄養学における類似の指標からヒントを得たものである。
CLCIは、原則としてスコアが高いほど、習慣的に摂取した場合にLDL-Cの低下をより強く期待できることを示す。産業界では製品開発やラベル表示に活用でき、企業は目標CLCIスコアを達成するように製品を開発し、この「スコア」をマーケティングや教育目的でパッケージに記載することもできるだろう。臨床医や栄養士にとっては、この指標は食事戦略の推奨に役立つ。具体的な例を挙げると、植物ステロールは1日2g摂取でLDL-Cを約10%減少させることから、これを10ポイントと数値化できる。
エンドユーザーには、よりシンプルな形式で提示されるべきだろう。高CLCI(例えば20点以上)は、LDL-Cを大幅に低下させる食品またはサプリメントを示し、指示通りに使用した場合、LDL-Cを約15%以上低下させる可能性がある。中等度のCLCI(例えば10~19点)は、LDL-Cを5~15%程度低下させ得る。また、CLCIがより低い(例えば10点未満)は、その食品が非健康的であることを意味するのではなく、コレステロールへの影響が弱いか中立的であることを意味する。
機能性食品はもはや特別視される存在ではなく、公衆衛生の向上のためのエビデンスに基づいた選択肢である。CLCIを通じてこれらの食品の評価を標準化し、効果的で安全かつ魅力的な製品を継続的にデザインすることで、栄養補助食品戦略を主流の医療にうまく統合することが可能となるだろう。そして、最終的にはCVDアウトカムの改善へつながる栄養政策に貢献すると期待される。
文献情報
原題のタイトルは、「Functional Foods for Cholesterol Management: A Review of the Mechanisms, Efficacy, and a Novel Cholesterol-Lowering Capacity Index」。〔Nutrients. 2025 Aug 15;17(16):2648〕
原文はこちら(MDPI)







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