eスポーツ選手のパフォーマンスはサプリで向上する? システマティックレビューのエビデンス
eスポーツアスリートのパフォーマンスを向上させ得るサプリメントを、RCT対象のシステマティックレビューによって検討した研究結果を紹介する。カフェインなどのいくつかのサプリの可能性が示唆されたものの、バイアスリスクやサンプルサイズの少なさなどの限界点があり、現時点では結果の一般化が難しいようだ。

eスポーツ特有のパフォーマンス阻害要因をサプリで抑制できるか?
国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)が国際大会を開催するほど、eスポーツの人気が世界的に高まっている。eスポーツのパフォーマンスは従来のスポーツと異なり、いわゆる筋力や身体的持久力ではなく、神経認知機能に依存する部分が大きい。反射速度、情報処理速度、空間記憶などが要求され、また心理的な影響も少なくない。
eスポーツのアスリートも他の競技のアスリートと同様に、疲労や燃え尽き症候群などを来し得ることが報告されており、また目の不快感や集中力の低下などの競技特異的ともいえる症状に悩まされることがある。そして、eスポーツ以外のアスリートがパフォーマンス向上のためにサプリメントを使用することがあるように、eスポーツアスリートも疲労軽減や集中力の維持、認知機能向上を期待してサプリを利用しており、その有効性を検証した研究の結果も報告されてきている。さらに、それらを対象とするシステマティックレビューの報告もある。
ただし、これまでのところ、主に認知機能への影響を検討した研究が主体であり、心理状態や有害事象に関する検討は多くない。この状況を背景として、今回紹介する論文の研究では、eスポーツにおけるサプリ介入の有効性とともに安全性にも焦点を当てたシステマティックレビューを行っている。
文献検索について
PubMed、Scopus、Web of Science、Embaseという4件の文献データベースに2025年6月17日までに収載された報告を対象とする検索を実施。包括基準は、18歳以上の成人eスポーツプレイヤーを対象に、サプリ摂取の認知機能、ゲームパフォーマンス、心理的状態に対する影響を対プラセボで検討した、並行群間無作為比較試験または無作為クロスオーバー試験の報告で、英語で執筆されている論文とした。なお、一連の手順はシステマティックレビューとメタ解析の推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに準拠して行った。
一時検索で2,180報がヒットし、他の手法で入手した7報を追加したのち、重複削除に続き、独立した2名の研究者のタイトルと要約に基づくスクリーニングで24件に絞り込み、全文精査を実施。最終的に13件の研究報告を適格と判断した。
抽出された研究の特徴
13件の報告は2019年以降に発表されており、米国から8件で、その他は日本、台湾、オーストラリア、インド、スペインからそれぞれ1件ずつ報告されていた。
研究参加者は合計466人でそのうち85%が男性であり、3件はエリートレベル、10件はアマチュアレベルでの検討だった。試験デザインは10件が無作為化クロスオーバー試験、3件が並行群間無作為化比較試験だった。
合計18種類のサプリ摂取プロトコルが採用されており、そのうち14種類はカフェイン単独またはカフェインを含むサプリが使われていた。カフェインのほかには、イノシトール強化アルギニンケイ酸塩、マンギフェリン(ポリフェノールの一種)、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid;GABA〈ギャバ〉)などが検討されていた。
バイアスリスクの検討の結果、5件はそのリスクが低いと判定されたものの、8件はいくつかの項目に懸念が認められた。
カフェインに関するエビデンスが多く、重篤な有害事象の報告はみられない
レビューの結果として論文では、カフェイン、カフェイン含有混合サプリ、イノシトール強化アルギニンケイ酸塩、その他のサプリについて有効性を検討し、また副作用・有害事象をまとめている。それぞれ要旨を紹介する。
カフェインやカフェイン含有混合サプリ
認知機能のパフォーマンスに関しては、カフェインが有意に向上したとする報告が複数認められた。また、実際のゲームパフォーマンスに関しても、反応時間、シューティング等の命中精度、相手を倒す確率などが有意に向上するという複数の報告がみられた。心理的状態については、覚醒度の向上や疲労感の軽減が報告されていた。
また、カフェインを含むエナジードリンクによるワーキングメモリの改善、カフェインとAmaTea(アマティー〈ハーブの一種〉)の混合サプリによるゲーム内での課題クリア数の上昇、カフェイン類似成分によるゲーム内でのヒット数や相手を倒す確率およびスコアの向上など、認知機能やゲームパフォーマンスへの正の影響が報告されていた。心理的状態に関しても、カフェイン類似成分による覚醒度の上昇、疲労感軽減、感情的苦痛の減少などが報告されていた。
カフェイン関連以外のサプリ
イノシトール強化アルギニンケイ酸塩では、ゲーム内でエラーを発生させてしまう確率の減少、活力のスコアの向上という心理的状態への影響などが報告されていた。
ほかにも、ガラナの有用性が報告されており、日本からはGABAによる疲労の抑制、ゲームスコアの向上などが報告されていた。
副作用・有害事象
いずれの研究でも重篤な有害事象は報告されていなかった。軽度の有害事象として、カフェイン摂取と不安、頭痛、めまい、動悸、収縮期血圧やコルチゾール値の上昇などとの関連が報告されていた。
eスポーツが盛んな東南アジア諸国発のエビデンスに期待
著者らは、本システマティックレビューで解析対象として抽出された研究が、いずれもサンプルサイズが比較的小さいこと、および、アマチュアアスリート対象の研究が多かったこと、報告の過半数にバイアスリスクの存在が認められたことなどを留意点として挙げている。また、コーヒーベースのサプリメントでの研究が大半を占めていて、その他の新規成分に関するエビデンスが乏しいことも、今後の課題として指摘している。
なお、本システマティックレビューでは、英語論文であることを包括条件に加えていたことも、限界として挙げられるという。国際的にみて、eスポーツが盛んな国は東南アジア諸国に多く、それらの国々から、英語ではない言語で発表された研究論文が存在すると考えられ、本研究はそのエビデンスを反映できていない可能性があるようだ。
文献情報
原題のタイトルは、「Nutritional supplements to improve esports player performance: a systematic review of randomized controlled trials」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2026 Dec 31;23(1):2603303〕
原文はこちら(Informa UK)







熱中症予防情報
SNDJユニフォーム注文受付中!

