Jリーガーのハムストリング筋損傷の再発率は30% 発生率や再発リスク因子も明らかに
Jリーガーのハムストリング筋損傷の発生率、再発率、再発リスク因子を検討した結果が報告された。東京慈恵会医科大学スポーツ・ウェルネスクリニックの舟崎裕記氏らが、J1、J2で戦っているあるクラブに所属する選手の医療記録を後方視的に解析した結果であり、米国スポーツ医学整形外科学会のジャーナル「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」に論文が掲載された。発生率は1,000選手時間あたり0.6、再発率は30%だという。

日本人プロサッカー選手のハムストリング筋損傷発生率等に関する、初めての詳細な報告
サッカー選手はハムストリング筋損傷(hamstring muscle injury;HMI)のリスクが高く、HMIの発生は長期間のプレー離脱につながりやすい。また、HMIは再発率が高いことが知られており、再発リスク因子の特定や対策の確立が求められている。しかし、国内のプロサッカー選手におけるHMIの発生率や再発率、ならびに再発リスク因子については、これまで十分に検討されてこなかった。
舟崎氏らはこれらの点について、6年間にわたるJリーガーの医療記録を用いて詳細に解析した。MRI検査に基づいて損傷タイプを分類し、同一の理学療法士の下でリハビリテーションが行われるという統一された環境で検討されている。著者らは本報告を、日本人プロサッカー選手におけるHMIの発生率などに関する、初の本格的な研究と位置づけている。
延べ209人のJリーガーを6シーズン追跡
この研究の対象は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に所属しているあるクラブの男子選手。2013~18年にわたる6シーズン連続の医療記録を後方視的に解析した。この間にこのチームは、J1で4シーズン、J2で2シーズン戦っていた。解析対象選手は延べ209人で、ベースライン年齢は24.7±1.3歳、試合出場回数は45.6±3.4回/年、試合出場時間1,525時間/年、トレーニング時間10,432時間/年だった。
HMI症状を呈した選手には48時間以内にMRI検査を施行。解剖学的部位や発生機転を特定したうえで、国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)の分類(一部改変)に即して、損傷タイプを判定した。その損傷タイプに応じて、完全復帰までの期間をタイプ1;2週、タイプ2;6~10週、タイプ3;3カ月と統一してリハビリテーションプログラムが立てられた。
なお、選手の訴えとMRI検査の所見が一致し、その選手がトレーニングから4日以上離脱した場合を「HMIの発生」と定義した。また、完全復帰前、または完全復帰後2カ月以内に同一部位にHMIが発生した場合を「HMIの再発」と定義した。
HMI発生率は1,000選手時間あたり0.60で、再発率は30%
HMI発生は試合中に多く、再発は完全復帰前から復帰8週間以内に発生
6シーズンで、27人、43肢にHMIが発生していた。トレーニング中の発生が22肢、試合中が21肢であり、HMI発生率は全体として1,000選手時間あたり0.60、トレーニング中は同0.35、試合中は同2.30だった。
43肢中6肢はJISS分類のタイプ3で、このうち3肢は外科的治療を要していた。その他の40肢は保存的に治療されていた。
保存的に治療された40肢のうち12肢でHMIの再発が認められ、再発率は30%だった。再発のタイミングは、完全復帰前が2肢、完全復帰後1週間以内が5肢、同1~4週間が2肢、4~8週間が3肢だった。
大腿二頭筋での再発の有無で、損傷タイプの分布に有意差
HMI再発の有無で2群に分けて比較すると、年齢、発生部位、損傷タイプ、発生時期(月)、他部位のHMIの既往の有無などは、いずれも有意差がなかった。ただし、部位別にみると、大腿二頭筋で発生したものは損傷タイプの分布に有意差が認められた(p=0.127)。
具体的には、再発のない大腿二頭筋のHMI(18肢)は、タイプ1-Mが9肢、タイプ1-Tが3肢、タイプ2が6肢であるのに対して、大腿二頭筋に再発したHMI(9肢)では同順に、0肢、6肢、3肢だった。半腱様筋や半膜様筋に発生したHMIについては、この分布にも有意差がなかった。
なお、タイプ1-Mは筋腹周辺部に生じる筋膜損傷、タイプ1-Tは構造的な腱損傷を伴わない筋内腱周囲の出血、タイプ2は筋腱接合部または筋内腱の損傷であり、骨腱接合部の損傷はタイプ3と分類されている。
筋損傷のタイプによっては、完全復帰のタイミングなどを再考すべき
論文中の考察によると、欧州サッカー連盟(Union of European Football Association;UEFA)での先行研究のデータとして、1,000選手時間あたりのHMI発生率が、試合では4.99、トレーニングでは0.52と報告されているという。本研究で示された日本人JリーガーのHMI発生率はこれよりいずれも低いが、その背景として著者らは、「HMIの定義(欧州の先行研究は1日以上の離脱で定義)や試合密度(1シーズンの試合数がJリーグの1.3倍)の差異などによるのではないか」と述べている。
また、本研究により、タイプ1-M、1-Tともに、受傷後2週間で完全復帰が可能であったが、タイプ1-T損傷の場合は再発率が高かったことから、「HMIを来したプロサッカー選手において、構造的な腱損傷を伴わない筋内腱周囲の出血が認められる場合、リハビリプログラムの変更や、今回設定された完全復帰までの期間を延長するなどの対応を考慮する必要があるのではないか」と提案している。
文献情報
原題のタイトルは、「Incidence of Hamstring Injury and Analysis of Risk Factors for Reinjury in Japanese Professional Football Players」。〔Orthop J Sports Med. 2025 Nov 21;13(11):23259671251391776〕
原文はこちら(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)







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