スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

夕方のカフェイン摂取はパフォーマンス向上と睡眠悪化のトレードオフ ボート競技選手での検討

夕方のカフェイン摂取が、摂取後のパフォーマンスや当日の睡眠、および翌日の眠気におよぼす影響を、ボート競技のアスリートで検討した結果が報告された。摂取量が多いほどパフォーマンスが向上する一方で当日の睡眠や翌日の眠気が高まるというトレードオフの関係が認められたという。トルコの研究者らの報告。

夕方のカフェイン摂取はパフォーマンス向上と睡眠悪化のトレードオフ ボート競技選手での検討

アスリートの睡眠を妨げない夕方以降のカフェイン摂取方法を探る

カフェインは、動作速度、持久力、パワー、および覚醒などにプラスの急性効果をもたらすことが知られており、多くのアスリートが利用している。一方で頭痛、消化器症状、不安、および不眠などの副作用が現れることもよく知られている。一般に3~6mg/kgが至適用量と考えられているものの、パフォーマンスへの効果を最大化し、かつ副作用リスクを最小化するためのより理想的な摂取方法の探索が、さまざまな集団で検討されてきている。しかし、ボート(ローイング)競技におけるこれらの知見はまだ十分でない。

ボート競技は、アスリート個々のサーカディアンリズム、または競技実施時刻によるパフォーマンスへの影響が大きい可能性のあることが報告されている。例えば2,000mのタイムトライアルで、夕方は朝よりも2.4秒長くかかったという報告がみられる。このため、ボート競技において、夕方のパフォーマンス低下を抑止し、かつ夜間の睡眠や翌日の日中の覚醒レベルに影響を及ぼさない、最適なカフェイン摂取プロトコルの確立が必要とされている。

今回取り上げる論文の研究では、クロスオーバーデザインにより、低~高用量のカフェインおよびプラセボの及ぼす影響が比較検討されている。

男子ボート選手13人を対象にクロスオーバー法で4条件を試行

研究参加者の特徴

この研究の参加者は、大学レベルの競技を行っている健康な男子ボート選手で、年齢18~35歳、競技歴2年以上、トレーニング時間10時間/週以上、日常のカフェイン摂取量が中等度(100~400mg/日)であることなどを適格条件とし、睡眠障害を有する場合、医師からカフェイン摂取を制限されている場合などは除外された。

先行研究に基づき、このトピックに関する有意性の検討には12人が必要と考えられたため、脱落に備え13人を募集した。主な特徴は、年齢22.07±2.21歳、体重77.66±6.45kg、身長182.14±7.11cm、体脂肪率11.23±4.1%、カフェイン摂取量303.62±148.34/日、競技歴3.1±1年だった。

試験デザイン

クロスオーバー法で試行した条件は、プラセボ(PLA;マンニトール)、低用量カフェイン(LDC;3mg/kg)、中用量カフェイン(MDC;6mg/kg)、高用量カフェイン(HDC;9mg/kg)という4条件。サーカディアンリズムによるパフォーマンステストへの影響を抑えるために、19~20時に、ローイングエルゴメーターを用いて試験を実施。カフェインまたはプラセボは試行の60分前に摂取してもらった。

研究期間中はサプリメントの摂取を禁止し、また各条件の試行24時間前からは飲酒および激しい運動を禁止した。最初の条件の試行前24時間の食事記録を基に、残り3条件ではそれを再現するように求めた。

条件間のウォッシュアウト期間は3~7日だった。試行の前に、飲酒、サプリメント摂取、激しい運動を行っていないかを確認し、懸念がある場合はその日の試行を中止し翌日以降に変更することで対処した。試行24時間前からの食事の再現は遵守され、食事の不遵守によるスケジュール変更はなかった。

なお、カフェインおよびプラセボは、色やサイズなどの外観から区別できないように調整したカプセルとして支給した。試行後に、どの条件が試行されたかを問う質問への回答から、13人中1人は4条件すべてを正確に予測したが、2条件を正確に予測したのが3人、1条件のみを正確に予測したのが3人だった。このことから著者らは盲検化が成功したと判断している。

評価項目

パフォーマンスへの影響は、ローイングエルゴメーターによる2,000mのタイムトライアルの記録であり、平均出力や心拍数も計測した。

睡眠への影響は試行の翌朝の起床後に、前夜の睡眠を「最悪の睡眠」を0点、「最良の睡眠」10点とする尺度の中から選択してもらい評価した。また日中の覚醒度への影響については、13時にカロリンスカ眠気尺度(「非常にはっきり目覚めている」が1点、「とても眠い」が9点)で回答を得た。これらの回答にはオンラインプラットフォームを用い、参加者が自宅から回答した。

パフォーマンス向上と睡眠への影響のトレードオフが明確に示される

パフォーマンスへの影響:カフェイン摂取量が多いほど記録向上

2,000mタイムトライアルの結果は、プラセボ(PLA)が407.585±10.615秒、低用量カフェイン(LDC)が405.715±11.067秒、中用量カフェイン(MDC)が404.338±10.602秒、高用量カフェイン(HDC)が403.285±10.657だった。PLAを基準として、LDCは0.48%、MDCは0.75%、HDCは1.03%の記録短縮が観察された。

MDCとHDCの2条件は、PLAとの間に有意差が認められ、HDCに関してはLDCとの間にも有意差が認められた。LDCはPLAと有意差がなかった。

平均出力も同様に、MDCとHDCの2条件はPLAより有意に高値であり、HDCに関してはLDCとの比較でも有意に高値だった。LDCはPLAと有意差がなかった。

心拍数に関しても、MDCとHDCの2条件はPLAより有意に高値であった。LDCはPLAと有意差がなかった。なお、前述のように、HDCとLDCとの間にタイムと平均出力の有意差が観察されたが、心拍数に関してはその点の有意差はなかった。

睡眠の質や翌日の眠気:カフェイン摂取量が多いほど影響が大きい

試行当日の睡眠の質は、PLAが7.000±0.707、LDCが6.385±0.506、MDCが6.154±0.689、HDCが6.000±0.707だった。PLAを基準として、LDCは8.06%、MDCは11.45%、HDCは13.83%低値であり、MDCとHDCの2条件はPLAより有意に低値(睡眠の質が低い)だった。LDCについてはPLAとの差が非有意だった。

試行翌日の午後の眠気は、PLAが3.231±0.725、LDCが3.538±0.660、MDCが4.231±0.725、HDCが4.308±0.947だった。PLAを基準として、LDCは12.31%、MDCは27.95%、HDCは33.59%高値であり、MDCとHDCの2条件はPLAより有意に高値(日中の眠気が強い)だった。LDCについてはPLAとの差が非有意だった。

このほかに、カフェイン摂取量が多い条件では、頭痛、尿量増加、消化器症状といった有害事象が有意に多く観察された。

6mg/kgが最もバランスのとれたプロトコルの可能性

以上に基づき論文の結論は以下のようにまとめられている。

「夜間のカフェイン摂取は用量依存的な効果を示し、中用量(6mg/kg)と高用量(9mg/kg)の両方で、ローイングパフォーマンスが向上した。しかし、用量依存性の副作用、特に高用量での頻度増加が認められた。

試験したプロトコルの中で、中用量(6mg/kg)はパフォーマンスを向上させながら悪影響を最小限に抑える最もバランスのとれた選択肢であると思われる。一方、低用量(3mg/kg)では統計的に有意ではないものの記録の短縮がみられたことから、重要な場面では意味をもつ可能性もある。

これらの知見は、アスリートのための実用的なカフェイン補給戦略を決定する際に、エルゴジェニックなメリットと潜在的なデメリットの双方を考慮することの重要性を強調している」。

文献情報

原題のタイトルは、「Varying doses of evening caffeine ingestion have different effects on rowing ergometer performance, sleep quality, and wakefulness scores」。〔Front Nutr. 2025 Dec 16:12:1659220〕
原文はこちら(Frontiers Media)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ