サッカーの育成年代に必要な栄養戦略 エネルギー不足の傾向がスコーピングレビューで浮き彫りに
サッカー選手育成のため、スポーツ医学・科学の知見を駆使した戦略が用いられているにもかかわらず、栄養は相対的に軽視される傾向がある。そんな中、ユースサッカー選手の栄養の課題をナラティブレビューとして検討した論文が報告された。全体として、ユース選手のエネルギー摂取量は15%程度少ないこと、ただしこれは調査方法(自己申告に基づく調査)が影響している可能性もあることなどが述べられている。ポルトガルやスペインなどの研究者の報告。

ユースサッカー選手育成における栄養の位置づけ
サッカーは世界的な人気のあるスポーツであり、サッカーアカデミーなどの育成機関が数多く設けられている。それらの育成機関では、身体・生理に関する最新の知見に基づくトレーニングが行われ、テクニックや戦術の教育がなされている。しかし、今回取り上げる論文の著者らは、栄養も選手育成に重要な側面であるにもかかわらず、しばしば重要性が過小評価されているとしている。そして、栄養に関する知識を持たないコーチ、トレーナーなどから非専門的なアドバイスを受けていて、そのことが成長やパフォーマンスに悪影響を及ぼしていることもあるという。
また、最新の知見をシステマティックに収集して統合し、批判的に評価することで質の高いエビデンスを得られるものの、その作業が終了し論文化されるまでに年単位の時間を要するため、発表された時点で既に最新の情報ではなくなっているということも指摘している。これらを背景として著者らは、スコーピングレビューを用いて、ユースサッカー選手の育成における栄養面の実態を調査した。
定量的解析も試みているスコーピングレビュー
2024年9月17日に、PubMed、Scopus、SPORTDiscus、Web of Scienceという4件の文献データベースを用いた検索が行われた。包括基準は、Tier 3(国内レベル)またはTier 4(エリート/国際レベル)に該当する男子ユースサッカー選手(9~23歳)を対象として、食事や栄養に関する習慣、またはエルゴジェニックエイドがパフォーマンスに及ぼす影響を検証した観察研究および介入研究であり、英語、ポルトガル語、スペイン語のいずれかで執筆されている論文とした。論文が公開された時期は制限しなかった。女子選手やレクリエーションアスリート対象の研究は除外した。
なお、本研究はスコーピングレビューであるが、ナラティブレビュー的な要素に加えて部分的に定量的な解析の結果も示されている。ただし、データの重み付けなどメタ解析に相当する手法については明確に示されていない。
文献検索について
一次検索により7,744報がヒットし、重複削除後の4,380報を2名の研究者がタイトルと要約に基づき独立してスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決。123報を全文精査の対象として、39件の研究報告を適格と判断した。それらの報告の参考文献、および過去のレビュー論文を基にしたハンドサーチから3件を追加し、最終的に42件の研究報告を解析対象とした。
解析は、エネルギー摂取量と消費量について、および、エルゴジェニックエイドについてという、二つの領域に分けて行われている。
エネルギー摂取量と消費量
エネルギー摂取量と消費量については23件の報告があり、英国からが8件と多くを占め、次いでスペインが3件、ブラジルとポルトガルが各2件、その他が各1件だった。サンプルサイズは8~180人で合計947人だった。調査を行った時期は、14件がシーズン中、3件はプレシーズンで、その他は明記されていなかった。
摂取量を15%上方修正することでエネルギー出納のバランスが保たれるという結果
エネルギー摂取量は平均2,773kcal/日(95%CI;2,612~2,993)と計算され(n=714)、年齢が高いほど摂取量が多いという有意な正相関が認められた(r=0.561)。
一方、エネルギー消費量は平均3,134kcal/日(2,978~3,291)と計算された(n=197)。年齢との相関が非有意だった。安静時エネルギー消費量については1,859kcal/日(1,778~1,941)であり(n=222)、年齢との相関はやはり非有意だった。
これらから、エネルギー摂取量は消費量よりも少なく、-668~-150kcal/日ほどの乖離があることが示された。ただし、解析対象とした多くの研究で食事摂取量は自己申告に基づき評価されており、自己申告による評価は15%ほど過小評価されることが知られている。そこで本研究で示されたエネルギー摂取量を15%上方修正すると、エネルギーバランスは-215~327kcal/日となり、全体平均としての乖離はみられなくなった。
なお、栄養素別の摂取量は、炭水化物(n=540)が5.66g/kg/日(5.60~5.71)、タンパク質(n=694)が1.88g/kg/日(1.76~2.00)であり、いずれも年齢との相関は非有意だった。ただし炭水化物については、年齢とともにやや低下する傾向のあることも示唆された(r=-0.258)。
エルゴジェニックエイドのパフォーマンスへの影響
エルゴジェニックエイドについては20件の報告があり、英国からが5件、ブラジルからが4件と多く、米国とイタリアが各2件と続き、その他が各1件だった。サンプルサイズは8~16人で合計389人だった。
パフォーマンスとの関連が検討されていたのは、クエン酸ナトリウム、カフェイン、ベタイン、ビタミンD、炭水化物、クレアチンなどのサプリメントだった。評価に用いられていた指標に一貫性がないため、メタ解析はされていないが、カフェインについては12項目、クレアチンについては5項目でプラスの影響が観察された。ただし、テクニカルな指標に関しては、いずれも明確な影響は示されていなかった。
ユースサッカー選手の育成スタッフとしての栄養職者の役割
著者らは本研究の結果を、以下の6項目に総括している。
- 本研究では、食事摂取量とエネルギー消費量の推定方法にばらつきや潜在的な不正確さが観察されたが、ユースサッカー選手を担当する栄養士にとって貴重な参考値を提供する。
- ユースサッカー選手は一般的に負のエネルギーバランスを示すが、摂取量は約15%過小評価されている可能性があり、これを調整すると正のエネルギーバランスが示唆される。
- 炭水化物摂取量は年齢とともに減少する傾向も示されたが、タンパク質摂取量は1.88g/kg/日でほぼ一定している。
- エネルギー消費量は、トレーニング日や休息日と比較して試合日に有意に高くなる。
- 試合前日にはエネルギー摂取量が増加するが、試合状況に応じた主要栄養素摂取量に関するデータはない。
- カフェインとクレアチンはどちらもさまざまな身体能力にプラスの影響を与えるようであり、炭水化物についてはさらなる研究が必要。
また、栄養スタッフに向けて以下のような記載もされている。
「食事摂取量を15%調整した後にプラスのエネルギーバランスが観察されたことは、ユースサッカー選手に深刻な摂取量の不足が存在している可能性も考えられる。したがって、そのような負のバランスが過小申告によるものか、実際に摂取量が不足しているのかを個々に評価することが不可欠。栄養士は選手だけでなく、保護者やクラブスタッフも対象とした教育的介入を実施すべきであり、さらにクラブの各部門がユース選手のエネルギー、身体、栄養に関する情報を共有することが重要である」。
文献情報
原題のタイトルは、「Nutrition as a missing piece in the development of youth male soccer players: a scoping review and future directions」。〔Biol Sport. 2025 Sep 9:43:291-317〕
原文はこちら(Termedia)







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