REDs治療の第一選択は非薬物療法 薬物療法と比較したシステマティックレビュー・メタ解析
スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)に対する薬物療法と非薬物療法の影響を、システマティックレビューとメタ解析により比較検討した研究論文を紹介する。英バーミンガム大学の研究者によるもので、REDsに対する初期対応としては非薬物療法が支持され、薬物療法では骨密度に対して限定的だが有望なエビデンスがみられるという。

REDsの治療に関する現時点の知見をシステマティックレビューで総括
REDs(relative energy deficiency in sport)は、「アスリートが問題のある(長期的または重度の)利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)に曝露することで、生理学的・心理学的な機能の低下を来す症候群」とされ、比較的近年になり提唱され研究が進められている臨床モデル。REDsにより、生殖機能、筋骨格の健康、免疫、グリコーゲン合成、心血管系への悪影響が生じ、それらが相乗的に進行することがある。またアスリートのキャリアを阻害する怪我のリスクの上昇、スポーツパフォーマンスの低下につながり得る。
REDsの蔓延と深刻な健康への影響の理解の深まりとともに、効果的な管理・治療戦略の確立が模索されている。現時点では非薬理学的な治療が要となっており、とくにREDsの基盤にあるLEAという問題に対処することに重点が置かれている。一方、非薬物療法の効果が十分でない、または緊急性のある場合は薬物療法が検討される。ただし、いずれもエビデンスが確立していない。
以上を背景として今回取り上げる論文の研究では、システマティックレビューとメタ解析によりこのギャップを埋めることを試みている。
文献検索について
システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)に準拠して、CINAHL、MEDLINE、SportDiscus、ERIC、Embaseという五つの文献データベースを用いた検索が行われた。各データベースの開始から2025年7月までに収載された文献を対象とした。包括基準は、エリートまたはレクリエーションレベルのアスリート、および活発な身体活動を行っている女性のREDsに対する介入を行った研究とした。男性対象の研究は報告数が限られていることから除外した。また、介入を行っていない横断的デザインによる研究や、学会報告、学位論文、レビュー、エディトリアルなども除外した。言語については制限しなかったが、英語以外の文献は翻訳後に理解が困難な場合は除外した。
ヒットした文献の重複削除後、182報を2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は別の研究者との討議により解決した。32報を全文精査し、最終的に19件の研究報告を適格と判断した。
解析対象研究の特徴
19件の研究の参加者数は合計759人で、年齢は解析可能な研究(12件)の平均が20.9歳だった。アスリート対象研究が12件、活動的な女性対象の研究が5件であり、その他は分類されなかった。
非薬物療介入研究は15件であり、アスリート対象が9件、活動的女性対象が5件、非分類対象が1件だった。薬物療法介入は4件で、アスリート対象が3件、バレイダンサー対象が1件だった。なお、アスリートの競技としてはランニングが最多で、次いで自転車だったが、複数の競技アスリートが含まれており、全体として競技別参加者数の算出は困難だった。
国別では米国からの報告が最多で12件を占め(非薬物介入10件、薬物介入2件)、次いでドイツが3件(すべて非薬物介入)だった。
介入にかかわったスタッフの大半は栄養士
評価されていた主な臨床項目は無月経であり、そのほかに体脂肪率、エネルギー可用性(energy availability;EA)、関連性のあるバイオマーカーが評価されていた。非薬物介入の手段は、摂取エネルギー量の増加、食事・栄養カウンセリングなどであった。
介入に関与したスタッフの多くは栄養士であり、非薬物介入では15件中12件(80%)、薬物介入でも4件中1件(25%)に栄養士が中心的に関与していた。非薬物療法の介入期間に関するデータを入手できた12件の研究において、その期間は平均28.3±15.8週であった。
REDsの非薬物療法による介入効果
非薬物療法を評価した研究の中で、最も頻繁に報告された指標は、月経機能の回復(8件)、エネルギー利用可能性(EA)の改善(5件)、体組成の変化(7件)、関連バイオマーカーの変化(9件)だった。
月経機能の回復
8件のうち7件では、統計的に有意な月経機能改善が報告され、推定効果量は大きかった(0.8~1.2)。この8件以外の1件の症例解析では統計分析は行われていなかったが、臨床的に意義のある回復が認められたと報告されていた。
GRADEに基づくエビデンスの確実性の評価により、非常に低いが1件、低いが5件、高いが2件であり、全体的に高くはないが結果の一貫性から、妥当な信頼度をもって受け止めることができると判定された。
エネルギー利用可能性(EA)
5件の研究のすべてで統計的に有意な改善が報告され、推定効果量は0.5~1.0の範囲だった。GRADEに基づく評価で、すべて確実性が低いと位置づけられたが、一貫性があることから妥当な信頼度をもって受け止めることができると判定された。
体組成
7件のうち6件で、体重、脂肪量、体脂肪率などの少なくとも1項目以上の指標に統計的に有意な改善が報告され、推定効果量は0.5~2.5の間であった。
脂肪量に関しては3件の研究に基づくメタ解析が行われ、平均差2.21(95%CI;1.34~3.08)と有意な改善が示されて、異質性は中程度だった(I2=32%)。また、体脂肪率に関しても同じ3件の研究のメタ解析から、平均差1.36(0.68~2.04)という有意な改善が示され、異質性は観察されなかった(I2=0%)。
バイオマーカー
9件の研究で、レプチン、トリヨードサイロニン(T3)、コルチゾール、エストラジオール、黄体形成ホルモン(LH)などが評価されており、8件の研究で統計的に有意なバイオマーカーの改善が報告されていた。推定効果量は0.5~0.8の範囲だった。なお、T3に関して3件の研究を対象としたメタ解析が行われ、平均差2.37(-5.57~0.83)と有意な影響はみられず、高い異質性が認められた(I2=91%)。
REDsの薬物療法による介入効果
薬物療法を評価した研究の中で、最も頻繁に報告された指標は、骨密度や骨代謝、ホルモンプロファイル、月経機能の回復などだった。
骨密度については4件の研究があり、効果を認めたものとそうでないものが混在していた。GRADEの評価は、非常に低い、低い、高い、非常に高いというものであり、全体として信頼度は中程度であった。
ホルモンプロファイルについては3件の研究があり、GRADE評価は、非常に低い、低い、非常に高いであって、全体として信頼性評価は低く、結果に一貫性が欠如していた。
月経機能の回復については3件の研究があり、いずれも統計的に有意な改善を示していた。GRADE評価は全体として中程度であり、結果の一貫性から妥当な信頼度をもって受け止められると考えられた。
骨代謝マーカーは1件の研究で検討されており、GRADE評価から確実性が高いとされたものの、再現性の検証が必要と判断された。
REDsには栄養療法と行動療法を第一選択として優先
論文の結論は以下のようにまとめられている。
まず、非薬物療法については、「とくに食事によるエネルギー回復とトレーニング負荷の調整は、REDsを抱えるアスリートにおいて、臨床的に重要なアウトカムに一貫して有益な効果を示している。しかし、報告されている研究は、サンプルサイズが小さい、追跡期間が短い、アウトカム指標にばらつきがあるといった方法論的な制約のため、このエビデンスの確実性は低~中程度にとどまる」としている。
一方、ホルモン療法を含む薬物療法については、「骨密度や特定のホルモンパラメータを改善するようであるが、エネルギー不足という根本的な問題には対処しておらず、真の生殖機能回復を不明瞭にする可能性がある」と指摘。これらの考察のうえで、REDsの治療に関するさらなる研究の必要性を述べ、「得られた知見は、栄養療法と行動療法を第一選択の管理法として優先し、薬物療法は慎重に選択された症例に限定して、生理的回復の継続的なモニタリングを行うことの重要性を強調している」と総括している。
文献情報
原題のタイトルは、「Pharmacological vs. Non-Pharmacological Treatment in the Management of Relative Energy Deficiency in Sport (REDs): A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Sports (Basel). 2025 Dec 15;13(12):453〕
原文はこちら(MDPI)







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