トレーニングをした夜の皮膚温や睡眠はどのように変化する? 女性長距離ランナーの観察研究
女性長距離ランナーを対象に、トレーニングが皮膚温や睡眠の質・量に及ぼす影響を調査した結果が報告された。トレーニング日は夜間の皮膚温の変動が少なくなり、睡眠時間が延長したという。立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科の岡本紗弥⽒、後藤一成氏らの研究によるもので、論文が「Physical Activity and Nutrition」に掲載された。

日内変動がある生理学的指標の変化を正確に知るためには、日内変動を知る必要がある
高強度のトレーニングを続けているアスリートでは、疲労の蓄積に加えて睡眠不足、栄養状態の悪化、心理的ストレスなどの影響により、オーバートレーニング症候群となり、パフォーマンスが低下することがある。そのリスクを把握するには、トレーニング量のモニタリングに加えて、栄養や睡眠の状態、および体温や心拍数、自律神経機能などの生理学的指標の評価が有用と考えられる。
これらのうち、栄養・睡眠状態の変化は本人へのインタビューなどで把握可能。しかし、体温や心拍数といった生理学的指標はいずれも日内変動があるため、一時点のみの評価ではそれらの乱れの有無や程度を正確に捉えることができない。それにもかかわらず、アスリートの生理学的指標の日内変動は十分に研究されていない。とくに、回復にとって最も重要な因子である睡眠は、体温の日内変動に伴うコルチゾールやメラトニンなどのホルモン分泌の変化の影響を受けるとの報告がある。
これらを背景として岡本氏らは、持久系アスリートのトレーニングが、体温(皮膚温)や睡眠の質や量に及ぼす影響をみる観察研究を行った。
女性長距離ランナー11人の皮膚温と睡眠を7日間観察
研究参加者は女性長距離ランナー11人(19.6±1.0歳、BMI19.1±1.2)で、競技シーズン(12月)に7日間連続で皮膚温と睡眠状態を測定した。皮膚温は鼠径部にボタン型温度計を貼付して測定し、睡眠状態は手首型アクチグラフィーで把握した。
本研究は、実際の日常生活下での変化をみるという目的から、食事や入浴、睡眠などの習慣への介入は行わず、皮膚温と睡眠状態の変化を観察するのみとしたうえで、トレーニング日と非トレーニング日とでそれらを比較した。なお、トレーニング日には早朝と午前中および夕方に、計130分のトレーニングが行われた。また、皮膚温については、日中は冬季の外気温(平均7℃)の影響を受けると考えられたため、就寝後の180分(3時間)に焦点をあてて解析した。
トレーニング日には夜間の皮膚温の変化が少なくなり、睡眠時間は延長
皮膚温の変化:トレーニング日は就寝後180分間の変動が少ない
就寝180分以内に観察された皮膚温の平均値、最高値、最低値は、トレーニングを行った日と行わなかった日で有意差がなかった。ただし、最高値と最低値の差は、トレーニング日は1.85±0.75℃であるのに対して、非トレーニング日は2.26±0.74℃であり、有意差が認められ(p=0.03)、効果量も大きかった(d=0.9)。
皮膚温の時間的推移をみると、就寝10分後と20分後には非トレーニング日がトレーニング日より有意に低く、その後、非トレーニング日は上昇して就寝60分後にはトレーニング日より有意に高くなった。それ以降は条件間の差が有意でないものの、非トレーニング日のほうが高い状態が続いた。また、就寝90~130分後は、両条件ともに皮膚温が就寝時点よりも有意に高くなっていた。
睡眠状態の変化:トレーニング日は総睡眠時間が長い
睡眠関連パラメーターのうち、睡眠潜時(就床から睡眠に要した時間)、中途覚醒、睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)には条件間の有意差がなかった。ただし、トレーニング日の総睡眠時間は447.6±60.5分であり、非トレーニング日の360.2±45.3分より有意に長かった(p<0.05、d=0.4)。
この結果について論文の考察には、総睡眠時間以外のパラメーターに有意差がないことから、トレーニング日と非トレーニング日の間に睡眠の質には差がなく、トレーニングの疲労により睡眠圧が上昇したことを表しているのではないかとの解釈が加えられている。
持久力運動が生理学的指標に及ぼす変化に関する新たな洞察
著者らは本研究を、女性長距離ランナーを対象として複数回のトレーニングセッションを含む一定期間の夜間皮膚温と睡眠状態を評価した初の研究と位置づけている。
論文では、月経周期を考慮していないこと、皮膚温のみの測定で深部体温を測定していないことなどの限界点を挙げたうえで、「複数回(1日3回)の持久力トレーニングは、女性長距離ランナーの就寝後最初の3時間における皮膚温の時間的経過の変化、および総睡眠時間の増加と関連していた。これらの知見は、エリート女性アスリートにおける持久力運動に対する熱生理学的および睡眠への影響に関する新たな洞察を提供する」と総括されている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Changes in nocturnal-skin temperature and sleep parameters following endurance training sessions in female long-distance runners」。〔Phys Act Nutr. 2026 Mar;30(1):58-62〕
原文はこちら(Korean Society for Exercise Nutrition)







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