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日本人女性オリンピアンの月経不順が有意に増加 過去7大会の出場選手対象反復横断研究

2008年の北京五輪から東京2020まで、夏季4回、冬季3回、計7回のオリンピックの日本人女性選手を対象として、月経異常の有病率などの経年的推移を検討した結果が報告された。この12年の間に月経不順や月経困難症が増加してきていること、一方で婦人科に受診する女性オリンピアンの割合も急速に増加しているといった結果が示されている。日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンターの能瀬さやか氏らの研究によるもので、論文が「Women's Health」に掲載された。

日本人女性オリンピアンの月経不順が有意に増加 過去7大会の出場選手対象反復横断研究

日本人エリートアスリートの月経状態の経年的推移を調査した初めての研究

女性アスリートは月経異常の有病率が高いことが古くから知られている。月経異常は競技パフォーマンスの低下やトレーニングへの負の影響につながり、競技生活から引退後の骨粗鬆症や不妊症、心血管疾患のリスクとも関連する。

このような女性アスリートの月経異常の主要原因として、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)が存在すると理解されている。この理解を背景に近年、適切な食事・栄養素摂取の重要性が強く指摘されるようになり、さらに、LEAに関連する健康障害の抑制戦略確立のため、より多くのエビデンス蓄積が求められている。

しかし、女性アスリートの月経異常に関する先行研究は大半が単回の横断研究として行われており、経時的変化が把握されていない。また、多くは海外、とくに欧米で実施された報告が占めている。加えて、月経異常のリスクは競技レベルによって大きく異なると考えられるが、オリンピック選手というエリート集団でのデータはごく限られている。このため日本人女性エリートアスリートにおいて、月経異常が減っているのか増えているのかなどの実態が、これまで不明であった。

以上を背景として能瀬氏らは、夏季・冬季あわせて7回のオリンピック出場女性日本人選手を対象とする反復横断調査を実施して、月経異常の有病率の推移などを検討した。著者らは本研究を、非欧米人女性オリンピアンの月経異常有病率を縦断的な視点で調査した初の研究と位置づけている。

過去7大会に出場した選手、約1,000人の参加前健康診断のデータを解析

この研究では、オリンピック開催前に出場選手に対して実施される、参加前健康診断のデータが用いられた。対象とした五輪は、夏季4回(北京2008、ロンドン2012、リオ2016、東京2020〈開催は2021年〉)と冬季3回(バンクーバー2010、ソチ2014、平昌2018)の計7回で、954人のデータが収集された。

調査項目は月経異常の有病率および婦人科の受診率であり、自記式の質問票により把握した。なお、婦人科の受診率については954人全員のデータを解析に用いたが、月経異常の有病率については月経状態に影響を及ぼし得るホルモン製剤(経口避妊薬またはプロゲスチン製剤)を継続使用している選手(168人)を解析対象から除外した。

月経異常の有病率:過去7大会を通して月経不順が有意に増加

ホルモン製剤の継続使用者を除外した786件のデータは、夏季五輪635件、冬季五輪151件から得られた。なお、134人は複数の大会に出場していて、151件は同一選手の異なる大会時のデータであり、アスリートの人数としては635人であった。

これらのデータから、月経周期の異常、月経関連症状(月経困難症〈dysmenorrhea〉、月経前症候群〈premenstrual syndrome;PMS〉、過多月経〈heavy menstrual bleeding;HMB〉)などの有病率を検討した。

月経周期の異常

月経周期の異常は22.5%の選手が報告した。内訳は、月経不順が13.9%で、原発性無月経1.8%、続発性無月経5.3%、初経遅延1.5%だった。競技別にみると審美系と持久系競技で高く、とくに新体操(66.7%)、体操(50.0%)、フィギュアスケート(38.5%)、陸上長距離(31.7%)が高値だった。

ロジスティック回帰モデルにより経時的推移をみると、月経不順の有病率は、7大会を通して有意に増加したことが明らかになった(4年あたりのオッズ比〈OR〉が1.24〈95%CI;1.13~1.37〉、p<0.001)。続発性無月経についても非有意ながら増加傾向がみられた(p=0.063)。原発性無月経や初経遅延については有病率の有意な変化は観察されなかった。

月経関連症状

24.3%が月経困難症、66.9%が月経前症候群(PMS)、9.2%が過多月経(HMB)を報告した。経時的推移に関しては、ロジスティック回帰モデルではいずれについても、有病率の有意な変化は示されなかった。ただし、同一選手が複数大会に出場したケースを考慮する解析手法では、月経困難症の有意な増加が観察された(4年あたりのORが1.11〈1.03~1.19〉、p=0.005)。

個々のPMS症状の有訴者率は、体重増加の報告が38.8%、気分のいらつきが34.4%、乳房の張りが31.9%、むくみが23.7%だった。

婦人科の受診率:過去7大会を通して5.3倍に増加

続いて婦人科の受診率については、北京2008が12.4%、バンクーバー2010が44.2%、ロンドン2012が38.2%、ソチ2014が58.7%、リオ2016が53.3%、平昌2018が63.9%、東京2020が65.3%と、対象期間中に約5.3倍へと顕著に増加していた。ロジスティック回帰分析から、この増加は有意であることが確認された(4年あたりのORが1.42〈1.33~1.52〉、p<0.001)。

この変化について論文中の考察では、「エリート女性アスリートが健康管理に積極的になってきたことを表す好ましい傾向」と評価。背景として、「女性アスリートの三主徴」や「スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)」が広く認識されるようになったこと、アスリートの婦人科疾患に関する偏見が薄れたことなどが関与しているのではないかと述べられている。

著者らは本研究の限界点として、月経異常を自己申告により判断し医学的に診断されたものではないことなどを挙げたうえで、「日本のエリート女性アスリートの間では、過去12年間で月経不順の有病率が有意に増加し、月経困難症も増加傾向にあることが明らかになった。それと同時に、婦人科受診率が著しく増加した」と総括。また、「アスリート自身が月経周期に対する認識を高め、異常を認識次第、医療職者に相談するというスキルを身につけることが、依然として極めて重要な課題。さらに、コーチやサポートスタッフも月経に関する理解を深め、オープンなコミュニケーションを図る必要がある」と付言している。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Changes in the prevalence of menstrual-related symptoms and menstrual cycle abnormalities among Japanese Summer and Winter Olympic athletes over the past seven Olympic Games」。〔Womens Health (Lond). 2026 Jan-Dec:22:17455057261440253〕
原文はこちら(SAGE Publications)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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