利用可能エネルギーが高いほど睡眠の質が良好 NCAAディビジョン1の大学水泳選手を調査
大学水泳選手を対象とする研究から、利用可能エネルギーが高いほど睡眠の質が良好という関連のあることが報告された。著者らは、横断研究であるため因果関係は不明だが、回復に重要な睡眠の質を高めるためにも、適切なエネルギー摂取が重要ではないかと述べている。

利用可能エネルギー不足(LEA)と睡眠の質の関連を大学水泳選手で検討
アスリートはトレーニングによる高いエネルギー需要を満たすために十分な食事を摂取するのに苦労することが少なくない。とくにエリートレベルの学生アスリートでは、学業とスポーツを両立させるために睡眠不足となっていることが多く、それがパフォーマンスを制限していたり健康リスクになっていたりする。
エネルギー状態と睡眠との潜在的な関連性についての報告も増えている。ただしこの点に関しては研究によって結果が異なり、水泳選手での知見は限られている。今回紹介する研究では、全米大学体育協会(NCAA)のディビジョンIに所属している学生水泳選手を対象に横断調査を行い、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)と睡眠の質の低下の関連の有無が検討された。
オリンピック出場経験のある選手を含む26人を対象に調査
研究は、強化トレーニング期間中に6週間にわたり実施された。参加者は27人で、全員がNCAAディビジョンIの所属し、オリンピック出場経験またはオリンピック出場選手選考競技会の経験がある選手も多く含まれていた。なお、男子選手の1人は、研究期間が終了する前にテーパリング期間(競技会前の調整期間)に入ったため解析から除外され、解析対象は26人(男子10人、女子16人)となった。
食事記録アプリを用いて平日2日、休日1日、計3日の摂取エネルギー量を把握。消費エネルギー量と睡眠の質は、三軸加速度計や心拍数を測定してそれらを推算するウェアラブルデバイスを用いて把握した。研究期間中、参加者は常にデバイスを装着していることが求められた。
摂取エネルギー量と運動による消費エネルギー量の差を除脂肪体重(fat-free mass;FFM)で除した値を「利用可能エネルギー(energy availability;EA)」とし、EAが45kcal/kg FFM以上を適切なエネルギー状態、EAが45kcal/kg FFM未満を利用可能エネルギー不足(LEA)と定義した。
解析対象者のエネルギー状態や睡眠の質
解析対象者の平均年齢は19.6±1.1歳で、BMI 23.12±1.9、摂取エネルギー量2,935±991kcal/日であり、利用可能エネルギー(EA)は38.6±11.0kcal/kg FFMであって、3人2人以上に相当する18人(69%)が利用可能エネルギー不足(LEA)に該当した。性別にみると、男子は50%と2人に1人、女子は81%と5人に4人がLEAだった。
睡眠時間は6.8±0.9時間、レム睡眠時間は1.7±0.7時間、徐波睡眠(ノンレム睡眠中に現れる深い睡眠)は1.2±0.4時間であり、1.2±0.5時間の睡眠不足状態にあると推測された。
なお、エネルギー状態と睡眠の質の関連は、いずれも食事記録アプリが用いられた3日間の記録を基に検討されている。
十分なエネルギー摂取に伴う良質な睡眠が、トレーニングと回復を最適化
女子水泳選手はEAが低いと、レム睡眠、徐波睡眠がともに少ない
男子、女子それぞれの利用可能エネルギー(EA)の中央値に基づき性別ごとに二分したうえで、睡眠関連指標を比較した結果、男子についてはいずれの睡眠関連指標にも有意な群間差がなかった。
しかし女子に関しては、EAが中央値以下の8人は、レム睡眠が短く(1.2±0.3 vs 1.9±0.5時間、p=0.002)、また徐波睡眠も短くて(0.9±0.3 vs 1.2±0.3時間、p=0.002)、推定される睡眠不足時間が長い(1.5±0.4 vs 0.9±0.4時間、p=0.008)という有意差が認められた。
EAはレム睡眠時間などと有意に正相関する
次に、睡眠関連指標とEAとの全体的な関連が検討された。
まず、レム睡眠時間についてはEAと有意な正の相関が認められ(r=0.639、p<0.001)、性別にみても、男子(r=0.744、p=0.014)、女子(r=0.515、p=0.041)、いずれも有意だった。
徐波睡眠時間とも有意な正相関が認められた(r=0.607、p<0.001)。ただし性別に解析すると、女子は有意だが(r=0.570、p=0.021)、男子は非有意だった(r=0.389、p=0.267)。睡眠時間とEAの関連は、有意でないながら正相関する傾向がみられた(r=0.33、p=0.09)。
続いて、EAが睡眠の質の指標に及ぼす影響を、性別を調整して解析したところ、EAは徐波睡眠の有意な予測因子であり、睡眠時間を調整した解析では、EAはレム睡眠時間の有意な予測因子であることが示された。
著者らは、「本研究のみでは因果関係は明らかでないが、摂取エネルギー量を適切に維持することが、エリートレベルの大学水泳選手の睡眠の質の向上に役立つ可能性を示唆する、予備的なエビデンスが得られた」と総括したうえで、「アスリートが消費するエネルギーのニーズを満たし、トレーニングと回復を最適化するためには、十分な睡眠とエネルギーの摂取が必要な可能性がある」と述べている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Association between energy availability and sleep quality in elite female and male swimmers: a brief report」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2026 Dec 31;23(1):2665547〕
原文はこちら(Informa UK)







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