ゴルフ中のイソマルツロース摂取により代謝ストレスが緩和 国内男子大学選手でのRCT
18ホールのゴルフプレーの最中にイソマルツロース含有グミを摂取すると、後半のホールにおける代謝ストレスマーカーが抑制されるとする、武蔵丘短期大学健康生活学科の長島洋介氏らの論文が、国際スポーツ栄養学会(ISSN)発行の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。スクロース含有グミを対照とする無作為化比較試験の結果であり、同短期大学からプレスリリースも発行されている。

イソマルツロースの血糖安定化作用は、長時間スポーツにどのように影響するか
イソマルツロース(isomaltulose;ISO)は消化・吸収の遅い糖質であり、摂取直後の急峻な血糖上昇が少なく、かつ摂取後の長時間にわたりエネルギー源として利用される。この特徴から、医療や保健指導においては血糖管理目的、スポーツにおいては持久系競技での栄養補給目的に応用されつつある。
ゴルフは断続的な中強度運動を4~5時間にわたり継続する競技であり、プレーの後半にはエネルギー源の枯渇、および代謝ストレスの蓄積が、集中力や認知機能の低下をもたらし、パフォーマンスに影響を及ぼし得る。プレー中の糖質摂取はこれらを抑制すると考えられるが、消化・吸収の速い一般的な糖質、例えばスクロースを摂取した場合、急峻な血糖上昇と反応性低血糖など、代謝の不安定性を引き起こすことがあり、それによるパフォーマンスへの負の影響も懸念される。
このようなゴルフの競技特性から、プレー中のISO摂取が栄養戦略として有効と考えられ、複数の研究が既に行われてきている。ただし、それらの結果は一貫性が十分でない。また、主観的評価指標と客観的評価指標との間に乖離が認められるという報告もみられ、いずれか一方のみの評価ではISO摂取の影響の全体像を把握することができない。
以上を背景として長島氏らは、主観的評価指標に加えて複数のストレス関連マーカーを評価する無作為化二重盲検比較試験によって、ゴルフプレー中にISOを摂取することの影響を検討した。
24人の男子学生選手を無作為に2群に分け、盲検下で18ホールプレー
研究参加者は、関東学生ゴルフ連盟のBブロックから募集された24人の男子選手。このうち1人は急性疾患のため非参加となり、解析対象は、イソマルツロース(ISO)含有グミを摂取する群12人、スクロース含有グミを摂取する対照(CON)群11人、計23人だった。両群の年齢(ともに平均20.2歳)および身長、体重、競技レベルに有意差はなかった。なお、事前の統計学的検討から、本研究の有意差の検討に必要なサンプルサイズは22と計算されていた。
ひと晩の絶食後の早朝に都内のゴルフ場に集合し、標準化された朝食を摂取後に18ホールのラウンドを行った。ラウンド中は1ホールごとにグミを約30回咀嚼して摂取するよう指示した。水分は3,000mL摂取することとし、その他の飲食は禁止した。
ISO群は製造上の限界である約19%のISOを含むグミを摂取
グミ摂取による炭水化物摂取量は両群ともに1ホールあたり12.1gであり、18ホールで217.5g、900kcalだった。いずれのグミも㈱ブルボンが提供し、味や見た目では区別できない状態で支給した。なお、ISO含有グミのISO含有率は、製造上の限界である約19%(総炭水化物量に対する割合)だった。
18ホールのラウンドの所要時間は5時間をやや超過し、1時間あたりの炭水化物摂取量はISO時が43.8g/時、CON群が43.5g/時であり、これは米国スポーツ医学会(ACSM)の推奨(30~60g/時)を満たしていた。
プレー中の7時点で、客観的ストレスマーカー、主観的な気分状態などを評価
主要評価項目は、唾液検体中のコルチゾール、テストステロン※1、デヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)※2だった。これらのうち、コルチゾールは全身性ストレス応答のマーカーであり、テストステロンは男性ホルモン、DHEASは副腎から分泌されるステロイドホルモン。テストステロンとDHEASは代謝ストレスに敏感で、エネルギー可用性が制限される長時間運動では低下することが報告されている。
副次評価項目は、連続血糖モニタリング(CGM)※3で測定した間質液グルコース濃度(以下では血糖値と表記)、主観的評価に基づく眠気や気分の状態(リラックス、集中力)、およびゴルフパフォーマンス(ゴルフのスコア)とした。
これらは、ベースライン(1ホールのプレー前)と、ラウンド中に3ホール終了するごとの、計7回測定した(図1)。なお、9ホール終了後には40分間の休憩を挟んだ。また、このほかに研究実施日と翌日の朝の尿検体を用いてメラトニン代謝物を測定し睡眠-覚醒状態を評価した。
※1 テストステロン:主に精巣や副腎から分泌される代表的な男性ホルモン。筋肉の維持・増強だけでなく、運動時の集中力、モチベーション、アグレッシブな意欲の維持に深く関与する。
※2 DHEAS(デヒドロエピアンドロステロンサルフェート):副腎から分泌されるホルモン。抗ストレス作用や疲労回復、生体防御に関与し、持続的な運動負荷や慢性疲労によって分泌が低下することが知られている。
※3 CGM(連続血糖測定器):皮下に装着した極小センサーにより、間質液中のグルコース濃度をリアルタイムに測定・記録するシステム。
図1 介入の割り付け、および評価項目と評価ポイント

ラウンド後半を中心に客観的な代謝ストレス指標と主観的評価指標に有意差
ゴルフのスコアには有意差なし。血糖変動はISO群で安定化の傾向
結果について、まず先に18ホールの合計スコアをみると、ISO群は75.3±4.5、CON群は75.5±5.5であり、有意差がなかった(p=0.91)。また、ラウンド中の平均血糖値は同順に96.8±12.6mg/dL、102.3±5.1mg/dLで、ISO群がやや低かったが有意差はなかった(p=0.20)。血糖値の標準偏差や変動係数にも有意差はなかった。
ただし、血糖変動をプロットすると、CON群ではグミ摂取後に130mg/dLを上回るポイントが観察されたが、ISO群ではほぼ80~110mg/dLの範囲で推移していた(図2)。
図2 ラウンド中の間質液グルコース濃度(血糖値)の推移

客観的マーカーは複数のポイントで有意差。ISOでエネルギー可用性が維持される傾向
次に、主要評価項目である唾液検体を用いた客観的指標をみると、DHEASは6番ホールと18番ホールの後の測定値に有意差があり、いずれもISO群のほうが高かった。また、テストステロンは12番ホール後の測定値に有意差があり、ISO群のほうが高かった(図3)。なお、前述のようにDHEASやテストステロンは、エネルギー可用性が制限される長時間運動により低下することが知られている。
ストレス応答のマーカーとされる唾液コルチゾールは、ラウンド開始前のベースラインにおいてISO群が有意に高かった。ただし、プレー開始後から終了までは、有意差のみられたポイントはなかった。
図3 ラウンド中のDHEAS、テストステロンの推移

主観的マーカーも複数のポイントで有意差がありCON群が高値
続いて、副次的評価項目に含まれていた、主観的評価の結果に着目すると、15ホール、18ホール後のリラックス度と集中力のスコアに有意差が認められ、CON群が高かった。覚醒感については、計7回の測定ポイントのうち4ポイントで有意差があり、いずれもCON群が高かった。
疲労感については有意差のあるポイントはなかった。ゴルフパフォーマンスの経時的推移(3ホールごとのスコア)にも有意差はなかった。
客観的指標と主観的指標の乖離の考察
これらの結果に基づき、論文ではいくつかの考察が述べられている。とくに、客観的評価指標に関してはISOの有用性が示唆され、一方で主観的評価指標についてはそうでないという乖離が認められた点について、以下のようにさまざまな角度から検討が加えられている。
脳へのグルコースの急速な流入は主観的なリラックス感と集中力を高める:
ラウンド後半において、主観的に評価されたリラックス感と集中力、覚醒感の評価はCON群が有意に高く、肯定的な気分状態に対するスクロースの優位性が支持された。これは、急速に吸収される糖質が脳の報酬系を刺激するとする先行研究の結果と一致する。それに対して客観的な評価指標は、ISO群において代謝ストレスが緩和されることを示唆していた。
著者らはこの乖離の理由を、グルコースによる報酬系の刺激が、知覚される疲労をマスクしたためではないかと推測している。なお、ラウンド中の主観的な覚醒感がCON群で高い状態で推移していた点については、ベースライン時点でメラトニン代謝産物に有意差がありISO群で高かったことから、介入による差異というよりも試験当日の研究参加者の状態に群間差があった(ISO群には眠気が強い参加者が多かった)ためと考えられると述べている。
ISOはラウンド後半のエネルギー不足を緩和する:
主観的評価指標ではISOの優位性は示されなかったのに対して、客観的評価指標である血糖変動の安定性や代謝ストレスマーカーについてはISOの優位性が示唆された。このことから著者らは、「この研究の重要な知見は、主観的なメンタル状態と生理的ストレス状態との間に顕著な乖離があることであり、本人が『気分が良い』と感じていることが、生理的ストレスが生じていないことを意味するわけではないことを示している」と強調。
さらに、「特筆すべきこととして、製造上の制約により、ISOの含有量は総炭水化物の約19%(40.8g)に限られていたにもかかわらず、生理的ストレスマーカーに有意差が観察されたことは、ISOによる競技スポーツ中のストレス軽減への可能性が示唆される」と付け加えている。
ゴルフ以外の長時間スポーツ、あるいはビジネスシーンでの活用も想定される
本研究ではISO摂取とスクロース摂取とでは、さまざまな相違が生じることを明らかにした。しかし、ゴルフパフォーマンスには有意差がなかった。そのため、著者らは「これらの相違の実質的な意義については依然として不明」とし、今後の研究の必要性を指摘している。
また、武蔵丘短期大学発行プレスリリースの中で、「本研究によりゴルフをはじめとする長時間・中強度のスポーツや日常生活・ビジネスシーンにおいて、消化吸収の穏やかな持続性糖質を活用することで、急激な血糖上昇を防ぎ、隠れた生体ストレスを抑えながら、安定したコンディションを維持できる可能性が示された」と総括。「今後も応用生理学およびスポーツ栄養学の知見を生かし、アスリートのコンディショニング支援や一般生活者の健康維持に寄与する実践的研究を展開していきたい」と述べている。
なお、本研究は㈱ブルボンの資金提供により実施され、一部の著者は同社の社員である。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Effects of continuous isomaltulose-containing gummy intake on interstitial glucose and salivary hormones during an 18-hole golf round: a randomized, double-blind controlled pilot study」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2026 Dec 30;23(1):2723225〕
原文はこちら(Informa UK)








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