12週間の筋力トレーニングによる介入後の血漿アミノ酸プロファイルはタンパク質、微量栄養素による栄養介入併用の有無で異なるか? 高齢者介入研究の探索的解析
高齢者に対して12週間の筋力トレーニング(筋トレ)による介入を行い、その前後での空腹時血漿アミノ酸プロファイルの変化を検討した探索的研究の結果が報告された。アルギニンの生物学的利用能の指標が上昇したほかに、タンパク質とビタミンやミネラルといった総合的な微量栄養素のサプリメントの併用の有無によりグルタミン関連の指標に有意差が認められたという。明治ホールディングス(株)ウェルネスサイエンスラボの角公一郎氏らによる論文が、「The Journal of nutrition, health and aging」に掲載された。

筋トレや栄養介入は血漿アミノ酸プロファイルにどのような影響を及ぼすのか
高齢者人口の増加に伴いサルコペニアの予防や改善が社会的な課題となり、さまざまな介入研究が実施されてきている。それらの研究では通常、筋量を含む体組成や身体機能への影響が評価されている。一方、最近の研究からは、空腹時の血漿アミノ酸プロファイルが、全身のアミノ酸の利用能、筋肉の生理機能、栄養状態を評価するうえで補完的な情報を提供する可能性が示されている。
例えば、「GABR;Arg/[Orn+Cit]」は、アルギニン(Arginine;Arg)と代謝経路が競合するオルニチン(Ornithine;Orn)とシトルリン(Citrulline;Cit)の和に対するアルギニン(Arg)の比(global arginine bioavailability ratio;GABR)であり、全身のアルギニン生物学的利用能の指標と位置づけられている。また、アルギニンが血管を拡張し血流を増加させる一酸化窒素(nitric oxide;NO)合成のための基質であることから、GABR; Arg/[Orn+Cit]はNO合成能の代理マーカーとしても用いられ、さらに生物学的加齢現象との関連も研究されている。
角氏らは以前、高齢者に対し筋トレとタンパク質および総合的な微量栄養素のサプリメント摂取による介入が、筋肉量と身体能力に及ぼす影響を検討した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の結果を報告している(doi.org/10.1007/s12603-017-0904-5)。その研究では、筋トレ単独群に比較しサプリメントによる栄養介入を併用した群で筋量が大きく増加していたが、そのメカニズムは明らかにされていなかった。
同氏らは今回、空腹時血漿アミノ酸プロファイルの変化に介入方法の違いが反映されている可能性に着目。当時の研究データを利用し、介入前後での空腹時血漿アミノ酸プロファイルの変動および栄養介入の有無での差異を検討した。
筋トレ単独 vs サプリメント併用介入による血漿アミノ酸プロファイルの変化の比較
上述のように、本研究は以前に行われたRCTの副次的な解析として実施された。
そのRCTでは、地域在住高齢者82人(平均73.5歳)を、無作為に筋トレ単独群と筋トレ+サプリメント併用群に割り付け12週間介入。サプリメントは乳タンパク質(10.5g/日)、微量栄養素(亜鉛、ビタミンB12、葉酸、ビタミンDなど)を含む飲料として提供されたた。両群ともに椅子立ち上がりテストの結果が改善し、サプリメントを併用した群では筋量も有意に増大していた。
今回の研究では、介入前と介入後の空腹時の血漿アミノ酸プロファイルのデータが解析に用いられた。それらのデータは前夜から12時間以上の絶食後の午前中の採血により得られたものだった。なお、主解析はプロトコル遵守者(筋トレ単独群40人、サプリメント併用群38人)のみで行われた。
絶食状態における各種血漿アミノ酸の変化
総アミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸の血漿中濃度は、筋トレ単独群、サプリ併用群ともに、介入前から介入後にかけて減少していた。
必須アミノ酸のうち、ロイシン(p=0.034)とフェニルアラニン(p=0.002)は有意な群×時間の交互作用を示し、筋トレ単独群がサプリメント併用群よりも減少幅が大きかった。
非必須アミノ酸のうち、アルギニン(Arg)は両群で介入後に増加していたが、アスパラギン、アラニン、グリシン、グルタミン酸、プロリンなどは介入後に減少していた。グルタミン(Glutamine;Gln)については群×時間の交互作用の傾向(p=0.09)を示し、サプリメント併用群では減少したのに対して、筋トレ単独群ではほぼ変化していなかった。
シトルリン(Cit)は両群で増加していたが併用群の増加幅が大きく、オルニチン(Orn)は両群で減少していた。
アルギニン(Arg)関連指標
両群ともに、介入によりOrn/CitとOrn/Argが有意に低下していた。
前述のように、アルギニンの生物学的利用能の指標とされるGABR;Arg/[Orn+Cit]は、両群ともに介入後に有意に上昇しており、交互作用は認められなかった。なお、介入前のGABRはGABRの変化量と強い負の相関を示した(r=-0.89、p<0.001)。つまり、介入前のGABRが低値であるほど両介入群ともにより大きく上昇していた。
グルタミン(Gln)関連指標
グルタミン関連指標として本研究では、総アミノ酸(total amino acids;TAA)に対するグルタミン(Gln)の比である「Gln/TAA」、および、代謝的な関連のある複数のアミノ酸(グルタミン酸、分岐鎖アミノ酸〈branched-chain amino acids;BCAA〉、アスパラギン〈asparagine;Asn〉、アスパラギン酸〈aspartic acid;Asp〉)の和との比「Gln/[Glu+BCAA+Asn+Asp]」などの変化が検討された。
その結果、筋トレ単独群ではGln/TAAとGln/[Glu+BCAA+Asn+Asp]はいずれも介入後に上昇していたが、サプリメント併用群ではほぼ変化していなかった。
本研究から得られた二つのポイント
著者らは論文の考察において、本研究で明らかになった主要なポイントとして、以下の2点を挙げている。
サプリメント併用の有無にかかわらず、筋トレ介入によりGABR;Arg/[Orn+Cit]が上昇
1点目として、筋トレ介入によってサプリメント摂取の併用介入を行うか否かにかかわらず、GABR;Arg/[Orn+Cit]が上昇したことが挙げられる。これは、筋トレによって、アルギニンの生物学的利用能が向上したことを示唆している。
ただし、解析に用いられた元のRCTには非介入群が設定されていなかったため、この変化が筋トレに起因するものとの断定はできない。とはいえ、高齢者に対する今後の運動介入研究において、GABR;Arg/[Orn+Cit]という指標がアミノ酸代謝への影響を検討するうえで、有用な指標となり得ることが示された。
グルタミン(Gln)関連指標は群間で異なる変化を示した
アルギニン(Arg)関連指標とは対照的に、グルタミン(Gln)関連指標は群間で異なる変化を示した。Gln/TAAやGln[Glu+BCAA+Asn+Asp]は筋トレ単独群で上昇し、サプリメント併用群では変化がなかった。これは、筋トレに対する適応反応において、栄養介入がアミノ酸代謝を変化させ得ることを示唆している。
グルタミンは条件付き必須アミノ酸とされ、窒素輸送、アミノ酸交換、生理的ストレスへの代謝適応において中心的な役割を果たしている。解析に用いられた元のRCTでは、サプリメント併用群で筋肉量の増加が大きかった。本研究においてサプリ併用群でのみグルタミン(Gln)関連指標が変化しなかった考えられる理由の一つとして、筋タンパク質同化作用におけるアミノ酸利用が良好であった可能性も考えられるが、これは仮説生成の域にとどまる。
空腹時アミノ酸プロファイルの解析により、より重要な知見を得られる可能性
著者らは本研究が探索的な分析であり、筋トレ介入を行わない対照群がなく、認められた変化が筋トレによるものとは判断できないこと、NO産生や血管機能、筋タンパク質合成速度など、メカニズムの考察に必要とされる指標を評価していないことなど、複数の留意点があるとしたうえで、「空腹時アミノ酸プロファイルは、高齢者に対する運動・栄養介入に関する補完的な情報を提供する可能性があり、筋肉機能や血管系アウトカムとの関連について、さらなる研究が求められる」と述べている。
なお、本研究は明治(株)の資金提供により実施された。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Fasting plasma amino acid profiles after resistance exercise with or without nutritional supplementation in older adults: an exploratory analysis of secondary outcomes from a randomized controlled trial」。〔J Nutr Health Aging. 2026 Aug 19;30(10):100948〕
原文はこちら(Elsevier)








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