FIFAワールドカップ2026で話題のピクルスジュースとメッシが愛飲するマテ茶 スポーツ栄養のエビデンスを検証
FIFAワールドカップ2026は、グループステージ出場枠の拡大、飲水タイム(hydration breaks)の導入、イランなどの入国ビザ問題、トランプ大統領が介入したとされる米国人選手のレッドカード処分猶予、日本時間の明朝4時にキックオフとなる決勝でのハーフタイムショーなど、何かと試合内容以外の話題が多かった。スポーツ栄養との関係では、飲水タイムの有効性に関する科学的な評価の報告が期待されるが、そのほかに、ピクルスジュースとマテ茶も今大会におけるスポーツ栄養関連の話題と言える。この二つについて、エビデンスを探ってみよう。

米国 vs オーストラリア戦の主審を救った(?)「ピクルスジュース」
シアトルで行われたグループステージ第2節の米国対オーストラリア(米国が2-0で勝利)において、主審が試合の終盤にピッチ上に倒れこむ場面があった。報道では、下肢の痙攣が原因とされている。試合が中断し選手や副審がストレッチを補助するなか、第四審がある飲み物を届け、それを飲んだ主審は直後に立ち上がり、試合再開の笛を吹いた。
この時の飲み物が、ピクルスジュースだったという。いつくかの研究報告を総合すると、ピクルスジュースは電解質バランスの調整を介した機序ではなく、神経反射への影響を介した機序で、瞬時に効果を発揮することがあるらしい。
参考:
何を飲んだ? アメリカ対オーストラリア戦で倒れこんだ主審を復活させた“魔法のドリンク”の正体が明らかに(サッカーダイジェストWeb)
脱水状態のヒトにおける電気刺激誘発性筋痙攣の反射的抑制
原典論文のタイトルは、Reflex inhibition of electrically induced muscle cramps in hypohydrated humans〔Med Sci Sports Exerc. 2010 May;42(5):953-61. doi: 10.1249/MSS.0b013e3181c0647e〕
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少量のピクルス液を摂取すると、摂取後35秒以内に筋肉の痙攣が緩和されるという経験的なエビデンスが存在する。しかし、骨格筋の痙攣に対する治療法としてピクルス液の摂取を裏付ける実験的エビデンスはない。
男性の被験者を対象に、1週間間隔で各2日間、脱水状態(体重の約3%の減少)として経皮的脛骨神経刺激により筋痙攣を誘発。直ちに体重1kgあたり1mLの脱イオン水、またはピクルスジュース(73.9±2.8mL)を摂取させた。痙攣の持続時間は、脱イオン水摂取時よりもピクルスジュース摂取時のほうが49.1±14.6秒短かった(それぞれ84.6±18.5 vs 133.7±15.9秒)。
著者らは、「この効果は体液や電解質の急速な回復では説明できない。電気刺激誘発性痙攣の急速な抑制は口腔咽頭領域に由来し、痙攣を起こしている筋肉の運動ニューロン発火を抑制する神経介在性反射を反映していると考えられる」としている。
水分補給が十分なヒトにおけるピクルスジュース摂取後の胃内容排出
Gastric emptying after pickle-juice ingestion in rested, euhydrated humans〔J Athl Train. 2010 Nov-Dec;45(6):601-8. doi: 10.4085/1062-6050-45.6.601〕
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少量のピクルスジュースは、摂取後85秒以内に筋肉の痙攣を緩和するが、血漿中の電解質濃度には大きな影響を与えない。この効果は神経学的なものである可能性がある。
男性10人(25.4±0.7歳)を対象とするクロスオーバー試験で、ピクルスジュースと脱イオン水摂取後の胃排出と血漿変数を比較した。安静、水分充足状態で、別の日に7mL/kgを摂取し、胃内容量と血漿量および血漿ナトリウム濃度の変化を摂取前から摂取30分後まで観察した。血漿ナトリウム濃度の変化に有意差はなかったが、血漿量の変化に有意差が認められ、これは胃の膨張に起因する心血管反射によるものと考えられた。
著者らは、「得られたデータは、ピクルスジュースが代謝メカニズムを介して痙攣を緩和するわけではないという我々の理論を裏付けている」と結論づけている。
肝硬変に伴う痙攣軽減のためのピクルス液介入:PICCLES無作為化比較試験
Pickle Juice Intervention for Cirrhotic Cramps Reduction: The PICCLES Randomized Controlled Trial〔Am J Gastroenterol. 2022 Jun 1;117(6):895-901. doi: 10.14309/ajg.0000000000001781〕
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肝硬変患者には筋肉の痙攣がよくみられQOL低下の一因となり、治療選択肢は限られている。過去1カ月に4回以上の筋肉痙攣の既往がある肝硬変患者82人を、痙攣発症時にピクルスジュースを少量摂取する群と水道水を摂取する群に1:1で無作為に割り付けた。主要評価項目をビジュアルアナログスケール(VAS)による評価として28日間観察した。
74人の患者が試験を完了した。年齢56.6±11.5歳、男性54%、腹水41%、脳症38%であり、多くの患者はベースラインで他の痙攣治療を受けていた。試験完了時、ピクルスジュース群のVASは-2.25±3.61低下し、水道水の-0.36±2.87と比較して有意に低下幅が大きかった。VASが5未満の日の割合や睡眠の質、QOLには差はみられなかった。
著者らは、「本無作為化試験において、痙攣が始まったときにピクルスジュースを少量摂取すると、有害事象なく痙攣の重症度が軽減されることが示された」としている。
運動能力向上と回復のためのジュースベースのサプリメント戦略:系統的レビュー
Juice-Based Supplementation Strategies for Athletic Performance and Recovery: A Systematic Review〔Sports (Basel). 2025 Aug 14;13(8):269. doi: 10.3390/sports13080269〕
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ジュースベースのサプリメントについての、システマティックレビューに基づくナラティブシンセシス。
ピクルスジュースについては、「筋肉の痙攣の予防や電解質の補充に効果があるとされ注目を集めている。報告を統合すると現在のところ、ピクルスジュースサプリメントが運動能力向上や体温調節に効果があるというエビデンスは得られていない。痙攣緩和に効果があるという逸話的な報告はあるものの、この主張を科学的に検証したエビデンスは限られている。ピクルスジュースサプリメントの作用機序と、とくに実際の運動環境におけるその有効性を明らかにするためには、さらなる研究が必要である」と述べられている。
メッシが飲んでいる南米のハーブ「マテ茶」
アルゼンチン代表のメッシは、史上初の6大会目のワールドカップ出場で、通算得点数が準決勝終了時点で21点と歴代トップとなるなど、39歳とサッカー選手としては高齢でありながら今大会でも衰えぬ活躍を見せつけた。
そのメッシをはじめ南米のサッカー選手が愛飲しているハーブがマテ茶であることが国内で報道され、需要が急拡大しているという。
参考:
メッシが愛飲のマテ茶 注目集まってます!問い合わせ増に日本マテ茶協会会長喜び(スポニチアネックス)
マテ茶はマウスの満腹感と体重減少を促進する:グルカゴン様ペプチド-1の関与
Mate tea (Ilex paraguariensis) promotes satiety and body weight lowering in mice: involvement of glucagon-like peptide-1〔Biol Pharm Bull. 2011;34(12):1849-55. doi: 10.1248/bpb.34.1849〕
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著者らは本研究より先に、マテ茶の水抽出物がマウスの肥満糖尿病またはメタボリックシンドロームモデルにおいて、体重と食物摂取量の有意な減少を誘発することを報告している。本研究ではその作用機序が検討された。マテ茶は対照群と比較して、GLP-1レベルとレプチンレベルを有意に増加させた。マテ茶の主要成分を急性投与すると、マウスの満腹感が高まることが観察された。論文は「これらの結果は、マテ茶が満腹感の直接的な誘導、GLP-1分泌の刺激、および血清レプチンレベルの調節によって、食欲抑制効果をもたらす可能性を示唆している」と結論づけられている。
マテ茶の摂取は準最大強度での運動中の脂質酸化とエネルギー消費を増加させる
Yerba Maté (Illex Paraguariensis) ingestion augments fat oxidation and energy expenditure during exercise at various submaximal intensities〔Nutr Metab (Lond). 2014 Sep 2:11:42. doi: 10.1186/1743-7075-11-42. eCollection 2014〕
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マテ茶は主にその熱産生効果により、健康増進、肥満予防、体重減少のために普及している。しかし、脂質代謝がすでに数倍に増加している運動中の脂質代謝に対する効果は不明。
健康な男女14人を対象とする無作為化クロスオーバー試験により、マテ茶の急性摂取が、さまざまな強度での運動中の脂質酸化および脂質酸化由来のエネルギー消費を増加させるかを検討した。その結果、マテ茶は強度70%未満の準最大運動強度で、脂質酸化とエネルギー消費を有意に増加させた。ピークパワー、ピーク呼気交換比RER、ピーク尿酸値には有意差はなかった。
著者らは、「マテ茶摂取が減量およびスポーツパフォーマンス向上につながる可能性が示唆される」と述べている。
マテ茶の健康効果
Health properties of Yerba Mate〔Ann Agric Environ Med. 2020 Jun 19;27(2):310-313. doi: 10.26444/aaem/119994〕
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ポーランドの研究者による総説。
イェルバ・マテ(パラグアイ茶とも呼ばれる)の消費が、北米と欧州において年々高まっている。このパラグアイ茶の人気はポーランドにも波及しており、2012年から2018年にかけて、原料の輸入量が8倍に増加した。
イェルバ・マテの摂取は人間の健康に有益な効果をもたらす可能性があり、肥満治療やスポーツをする際には摂取が推奨されている。しかしながら、とくに熱いマテ茶を大量に摂取すると、癌の発症リスクが高まる可能性があることに留意が求められる。ただし、これは現在までの科学的研究で明確に確認されているわけではない。
この飲料には、肝細胞保護効果、中枢神経系刺激効果、抗炎症効果、心血管系への好影響など、数多くの有益な健康効果があることが、文献的に確認された。







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