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低炭水化物やケトジェニック食は高強度運動にマイナスか? 競技アスリート研究のメタ解析

低炭水化物食またはケトジェニック食による無酸素性運動パフォーマンスへの影響を、競技アスリート対象に実施された研究のシステマティックレビューにより検討した結果が報告された。単回で短時間の高強度運動の場合、わずかにプラスに働く可能性を示唆する研究がある一方で、高強度運動を反復する状況では負の影響が生じる可能性があるという。

低炭水化物やケトジェニック食は高強度運動にマイナスか? 競技アスリート研究のメタ解析

競技アスリートの無酸素性運動パフォーマンスへの影響をメタ解析で検討

スポーツ栄養学では長らく、持久力と高強度運動の双方のパフォーマンスのために、炭水化物の摂取が重要であるとされてきている。一方で近年、低炭水化物食(low-carbohydrate;LCD)やケトン産生食(ketogenic diets;KD)の人気が高まっている。LCDやKDはエネルギー基質として脂質の酸化を促進し代謝適応を高めると説明され、グリコーゲンの枯渇を防ぐのではないかという期待のもと、主として有酸素運動のパフォーマンスに対する影響が検討されてきている。

他方、高強度運動の代謝要求は有酸素運動と異なり、ホスホクレアチン分解と解糖によるATPの迅速な再合成に大きく依存していることから、炭水化物の十分な利用可能性と筋グリコーゲン貯蔵が重要となる。そのためLCDやKDは、高強度運動のパフォーマンスに負の影響を及ぼすとも考えられるが、依然としてその実態は明らかでない。

これらを背景として、システマティックレビューとメタ解析による検討が行われた。

AIを利用した文献検索

文献検索には、PubMed/MEDLINE、Scopus、Web of Science、SPORTDiscusなど5種類のデータベースを用いた。

包括基準は、6カ月以上にわたり体系的なトレーニングを行っている18~45歳の競技アスリートを対象として(実際に抽出された研究参加者の大半は2~3年以上のトレーニングを行っていた)、対照条件を置いてLCDまたはKDによる無酸素性運動パフォーマンスへの影響を2項目以上の評価指標を用いて比較検討した研究とした。除外基準はレクリエーションアスリートや非アスリート対象研究、対照条件のない研究、食事の遵守状況が確認されていない研究、サプリメント摂取や追加のトレーニングなどの並行介入を行っていてそれらの影響を除外したデータを抽出できない報告、学会発表、査読システムのないジャーナルの論文、英語以外の論文など。

なお、文献検索は二つのフェーズからなり、まず通常のキーワード検索を行った後、次にAIツール(Elicit)を用いた確認を行った。これらの工程は、システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)に準拠して行われた。

LCD、KD、および通常食(対象条件)の定義

LCD、KDおよび通常食は、それぞれ以下の条件を満たすものと定義した。

低炭水化物食(LCD)

炭水化物摂取量が130g/日以下、または炭水化物の%エネルギーが25%以下の介入。

ケトン産生食(KD)

炭水化物摂取量が50g/日未満、または炭水化物の%エネルギーが10%未満で、生理的なケトーシス状態にあること(β-ヒドロキシ酪酸0.5mmol/L以上)が確認されている介入。

通常食

炭水化物摂取量が300g/日超、または炭水化物の%エネルギーが60%超、あるいはバランスのとれた混合食(炭水化物の%エネルギーが45~55%)や「通常の食事」などとしたもの。

単回の高強度運動の特定の条件でわずかにプラス、反復運動ではマイナスの影響を示唆

キーワード検索に続くスクリーニングとAIツールの利用により、49報を全文精査の対象として特定し、最終的に13報(15件の研究)を適格と判断した。

13報のうち9報はクロスオーバー法、4報は並行群間試験として実施されていた。介入期間は報告により大きく異なり、1週間以内が26.7%、2週間が6.7%、2週間超~1カ月が33.3%、6週間以上(最大12週)が33.3%だった。

評価項目は、単回で短時間の高強度運動、高強度運動の反復、および嫌気性マーカーという3項目に分類可能だった。より具体的には、最大無酸素性パワー(ウィンゲートテスト、カウンタームーブメントジャンプ〈countermovement jump;CMJ〉、スプリントパワー、1RM〈one-repetition maximum〉)、反復スプリント能力と高強度インターバルパフォーマンス、血中乳酸濃度であり、15件の研究のうちそれぞれ5件が該当した。これら3種類の指標ごとにメタ解析が実施されている。

ウィンゲートテストなどの結果のメタ解析

単回で短時間の高強度運動パフォーマンスへの影響を検討していた5件の研究のうち、2件は有意なプラスの影響を報告していた。例えば、セミプロの男性サッカー選手が30日間、ケトン産生食(KD)を摂取することで、標準的な西洋食と比較してカウンタームーブメントジャンプ(CMJ)のパフォーマンスが有意に向上したと報告されていた。

他方、2件の研究は対照群との有意差がないと報告していた。メタ解析の結果は非有意だった(効果量〈d〉=0.29〈95%CI;-0.08~0.66〉)。

反復スプリントパフォーマンスなどの結果のメタ解析

高強度運動の反復パフォーマンスへの影響を検討していた5件の研究のうち、2件は有意な負の影響を報告していた。例えば、エリート競歩選手が低炭水化物食(LCD)を実施した結果、高炭水化物食に比較してスピードが8%有意に遅かった(p=0.001)と報告されていた。

他方、3件の研究は対照群との有意差がないと報告していた。メタ解析の結果は非有意だった(d=-0.33〈95%CI;-0.80~0.14〉)。

乳酸値への影響のメタ解析

嫌気性マーカーとして血中乳酸値が5件の研究で評価されていた。ただし定量的に解析可能なデータが示されている研究は3件だった。

それら3件の研究がすべて、乳酸値の低下を報告していた。メタ解析の結果も有意だった(d=-0.89〈95%CI;-1.20~-0.58〉)。

これらの結果に基づき著者らは、「LCDとKDは、トレーニングを積んだアスリートの無酸素性運動パフォーマンス能力に対して、領域特異的な影響を与えるようだ。単回の短時間運動に対しては、場合によってはパフォーマンスが維持される可能性があるものの、反復的な高強度運動では負の影響が生じやすいと考えられる」と総括。「これらの知見は、トレーニングや競技における代謝要求にあわせて食事戦略を調整することの重要性を強調している」と結論づけている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Effects of Low-Carbohydrate and Ketogenic Diets on Anaerobic Performance in Competitive Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Nutrients
. 2026 May 16;18(10):1589〕
原文はこちら(MDPI)

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