プロバレエダンサーの4割が代謝抑制 「RED-D」のスクリーニングはBMIだけでは不十分か
プロのクラシックバレエダンサーの代謝抑制の実態を調査し、その検出に有用な指標を検討した研究結果を紹介する。女性ダンサーの38%、男性ダンサーの46%に代謝抑制が生じている可能性があり、BMIが低いことは有意な関連がなく、スクリーニングでは複数の指標の組み合わせた評価が必要だという。

ダンスにおける相対的エネルギー不足「RED-D」という課題
審美系競技のアスリートは、スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;RED-S)が多く認められ、ダンサーにもRED-Sが少なくないことが知られている。近年では、ダンサーにみられるRED-Sを「ダンスにおける相対的エネルギー不足 (relative energy deficiency in dance;RED-D)」と呼ぶこともあり、RED-Dを早期に検出する方法が模索されている。
RED-Dでは代謝抑制が生じ、種々の健康リスクが高まると考えられている。代謝抑制の評価には、実測した安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)を、推算式で求めたREEで除した比が用いられることが多く、その推算式も複数提案されている。今回紹介する研究では、プロクラシックバレエダンサーのREEを実測するとともに、各推算式との関連性、および、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)、体組成、女性の月経異常、摂取エネルギー量などとの関連性を検討している。
英国のプロバレエダンサー約50人を対象として、公演シーズン前とシーズン中に調査
この研究では、英国のバレエ団に所属し、年間20週間の公演と26週間のリハーサル、週36時間のトレーニングを行うという契約を結んでいるプロバレエダンサー47人(女性27人〈24±5.21歳、BMI 18.8±1.67〉、男性20人〈25±4.27歳、BMI 23.1±1.59〉)が解析対象とされた。公演シーズンスタート前と、スタート後の4週間の集中公演終了直後という2回にわたり後述のデータが収集された。
評価項目とリスク状態の判定基準
ガス分析により安静時エネルギー消費量(REE)を実測したほか、生体電気インピーダンス法により体脂肪率、除脂肪体重(fat-free mass;FFM)を測定し、二重エネルギーX線吸収(DXA)法による骨密度を測定。また、女性・男性ごとに利用可能エネルギー不足(LEA)質問票(LEAF-QおよびLEAM-Q)を用いてLEAリスクを評価した。
REEの実測値(REEm)の推算式に基づく値(REEp)に対する比(REEm/REEp比)が0.9未満の場合を、代謝抑制のリスク状態と定義した。また、骨密度のZスコアが0未満を骨量減少のリスク状態と定義、BMIは18.5未満、体脂肪率については女性15%未満、男性は6%未満をリスク状態と定義した。さらに女性ではLEAF-Qが8点以上、男性ではLEAM-Qの性欲低下の質問に該当ありの場合をLEAのリスク状態と定義。そのほか、女性では月経異常、男性ではテストステロン低値などを評価した。
RED-Dのスクリーニングには複数の指標の組み合わせが必要
LEAF-QおよびLEAM-Qによる評価の結果、12人の女性と4人の男性がLEAのリスクを有する可能性が示唆された、また11人の女性が月経異常ありと判定された。
体脂肪率については、4人の男性と12人の女性がリスク状態と判定された。男性は女性より体脂肪率が有意に低く、BMIが有意に高かった。BMIについては、月経異常のない女性では73%が正常域だったが、月経異常のある女性ではその割合が52%だった。また月経異常のない女性の79%が体脂肪率15%以上であったのに対し、月経異常のある女性では55%が体脂肪率に関するリスク状態にあった。
女性の場合、LEAF-Qは月経状態またはBMIカテゴリーと統計的に関連していなかった。LEAF-QとREEカテゴリーの間には有意な関連があり、LEAF-Qでリスク状態と判定される女性はREE低値群に属する可能性が高かった。一方、男性については、LEAM-QとREEカテゴリーの間に有意な関連がなかった。
女性の37.5%、男性の46%が代謝抑制状態
安静時エネルギー消費量(REE)の推算式は8種類使用され、REEpは8種類算出された。この8種類のREEpそれぞれに対するREEの実測値(REEm)の比(REEm/REEp比)が計算され、2種類以上で0.9未満となった場合をREE比の低下、つまり代謝抑制状態としたところ、女性の37.5%、男性の46%がこれに該当した。
なお、REE低下が認められた7人の男性ダンサーのうち、4人は8種類すべての推算式でREE比が0.9未満となっていたが、1人は6種類、2人は4種類の推算式で0.9未満だった。単一の予測式が優れているわけではなく、複数の式を使用することで、リスクのあるバレエダンサーの判別能が向上した。
REE低値の判別には、BMIではなく、摂取エネルギー量を除脂肪体重で除した値が有用
このほかに明らかになったこととして、女性ではREE低値が月経異常および遅発初経と強く関連し、男性ではREE低値が体脂肪率の低さと関連していた。
重要なこととして、REE低値は低体重や低BMIとは関連がなかった。その一方、除脂肪体重あたりの摂取エネルギー量(kcal/FFM kg/日)は性別にかかわらず、REE低値群とREE正常群との判別の感度の高い指標であった。また、REE低値のバレエダンサーは、骨密度が低い傾向も示された。
バレエダンサー対象の健康モニタリングにはREEのスクリーニングも必要
これらの結果に基づき著者らは、「臨床医はREEm/REEp比を求める際に複数、少なくとも4~5種類の推算式を用いるべきである。このアプローチは、単一の式を用いる場合と比較して、代謝抑制のあるバレエダンサーを特定する感度を向上させるからである。また、バレエダンサーのスクリーニングプロトコルには、直接的な代謝測定に加え、女性の場合は月経状態の評価、男性の場合は体組成の評価を組み込むべきだろう。それらがREE低値と強く関連しているためである」と総括している。
また、「REEが抑制されたバレエダンサーの骨密度低下傾向は、疲労骨折や骨粗鬆症などの長期的な健康被害を予防するために、早期発見と早期介入が必要であることを強調している。これは、ダンスカンパニーにおける日常的な健康モニタリングにREEスクリーニングを組み込むことを支持するものだ」と付け加えている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Resting energy expenditure in professional dancers as an objective measure of low energy expenditure」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2026 Apr 2;12(2):e00321〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group)







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