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食事時間が不規則な人は老化指標が高く、質の低い食事がその関係を一部説明する可能性――東浦研究

食事の時間帯が不規則な人は、細胞レベルでの老化が加速していることを示唆するデータが報告された。愛知県東浦町でベースライン調査が行われている高齢者対象疫学研究からの知見であり、国立長寿医療研究センター研究所 老年学・社会科学研究センターの木下かほり氏らによる論文が、「European Geriatric Medicine」に掲載された。本研究を足掛かりに、今後は、就業等の都合のために食事の時間が不規則にならざるを得ないような人でも、食事の質を高くすることで、老化速度への影響を部分的に抑制できるかどうかを明らかにする縦断研究や介入研究が重要であるという。

食事時間が不規則な人は老化指標が高く、質の低い食事がその関係を一部説明する可能性――東浦研究

食事の時間の不規則性は、世代共通の健康課題

近年、サーカディアンリズム(概日リズム)の乱れが健康にさまざまな悪影響を及ぼしていることが明らかになるとともに、食生活においても「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も代謝に大きな違いをもたらすことが明らかにされてきた。食事時間が不規則であることは代謝性疾患の要因となり、代謝性疾患はミトコンドリア機能の低下やテロメアの短縮などを加速させる。そのため、不規則な食事は生物学的な老化を促進する可能性がある。

以前から、体重や血糖管理のために食事の時間をできるだけ均等にするという働きかけが、肥満・メタボリックシンドロームリスクの高い、主として若年~中年世代に対して行われてきている。しかし65歳以降の就労人口の増加を背景に、勤務の影響で食事時間が一定しないという生活パターンは、世代を超えた健康課題となりつつある。

このような状況から、食事時間の不規則性が生物学的老化を促進するのであれば、シフト勤務など、就労の都合で食事時間を一定にできないケースの老化を速めてしまうことが懸念される。しかし不規則な食事時間と生物学的老化の関係を明らかにした報告はまだない。また、高齢者の食事時間の不規則性と生物学的な老化における、食事の質の役割についても不明である。

木下氏らはこれらの点について、高齢者対象疫学研究「東浦研究」のデータを用いた横断的解析による検討を行った。

食事時間が不規則な群は、実年齢は若いのに生物学的老化が進んでいる

東浦研究は愛知県東浦町で2023年度にスタートした長期観察研究であり、障害のない65歳以上を登録。主にフレイルの進行・改善の関連因子に関するデータが収集されている。今回の研究では、東浦研究ベースライン調査の参加者から500人を無作為に抽出。データ欠落などを除外して378人を解析対象とした。

食事時間の不規則性の評価方法

食事時間の不規則性は、朝食、昼食、夕食について、「毎日、同じ時間に食事を摂っているか?」という質問に、「強くそう思う」「そう思う」「どちらとも言えない」「そう思わない」「全くそう思わない」のいずれかで回答してもらい、前二者は食事時間が規則的とし、その他の回答は不規則と判定。3食すべてが規則的と判定された場合を除いて、「食事時間が不規則」と定義した。

食事の質の評価方法

平日2日、休日1日、計3日の食事をすべて、写真とともに記録してもらい、管理栄養士が栄養素摂取量を推測。栄養価指数(Nutrient-Rich Food Index;NRF)を計算した。NRFは、9種類の健康的とされる栄養素(タンパク質、食物繊維、ビタミンA・C・D、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウム)と2種類の非健康的な栄養素(飽和脂肪とナトリウム)の摂取量に基づき、食事の質を「NRF9.2」としてスコア化するもの。健康的とされる栄養素はすべて推奨量を満たし、非健康的な栄養素は上限内にある場合、最大スコアの900点となる。

生物学的な老化の評価方法

生物学的な老化は、成長分化因子15(growth differentiation factor-15;GDF-15)により評価した。GDF-15はミトコンドリア機能低下や酸化ストレス、炎症などの細胞ストレスによって誘導されるサイトカインで、老化による臨床症状出現前から上昇すること、死亡リスクと関連していることなどが報告されている。

食事時間が規則的な群と不規則な群の特徴の比較

378人のうち63人(16.7%)が、「食事時間が不規則」と判定された。

この集団は、食事時間が規則的な群と比較して、朝食欠食が多く(11.1 vs 2.2%)、年齢が若い(73.3±4.6 vs 75.1±5.6歳)という有意差があった。また、平均動脈圧が高く、呼吸器疾患の有病率が高いという有意差が認められた。

一方、性別の分布、BMI、喫煙・運動習慣、睡眠時間、血清脂質、血糖値、腎機能、肝機能、ヘモグロビン、高感度CRP、呼吸器疾患以外の慢性疾患、就業状況などについては有意差がなかった。ウエスト周囲長については、男性は食事時間が不規則な群のほうが有意に高値だったが、女性は有意差がなかった。

交絡因子調整後、食事時間が不規則な群はGDF-15が高く、NRF9.2が低い

解析結果に影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、喫煙・運動習慣、睡眠時間、エネルギー摂取量、併存疾患、就業状況)を調整後、生物学的な老化のバイオマーカーである成長分化因子15(GDF-15)は、食事時間が規則的な群は1,028.0pg/mLであるのに対して、食事時間が不規則な群は1,161.4pg/dLであり、有意に高かった(p=0.009)。つまり、食事時間が不規則な群は実年齢が若いにもかかわらず、生物学的な老化が進行していることが示唆された()。

また、食事の質の高さを表すNRF9.2スコアは、食事時間が規則的な群は823.2点であるのに対して、食事時間が不規則な群は798.3点であり、有意に低かった(p=0.008)。

食事時間が不規則な人は老化指標が高く、質の低い食事がその関係を一部説明する可能性
(出典:国立長寿医療研究センター研究所)

食事の質の低さが、食事時間の不規則さと生物学的老化の関連を一部説明

続いて媒介分析を実施。その結果、食事時間が不規則だとGDF-15(生物学的老化)が高値を示すという関連の14.5%は、NRF9.2スコア(食事の質)の低さによって説明されることがわかった。

この結果は、食事時間が不規則な人であっても、食事の質を高めることで、生物学的老化の進行を部分的に抑制できるかという新たな研究の足掛かりになることを示唆している。

魚介類の摂取が食事の質を高める鍵かも

本研究の対象において、Lindeman-Merenda-Gold法によるNRF9.2スコアの高さに寄与する食品は、野菜、魚、卵などであり、それらの寄与率は同順に、24.2%、14.5%、13.4%であった。

これらのうち、野菜と卵については、食事時間が規則的な群と不規則な群の摂取量に有意差がなかった。しかし、魚の摂取量については、食事時間が不規則な群は32.0g/1,000kcalであり、食事時間が規則的な群の40.3g/1,000kcalより有意に少なかった(p=0.013)。

食事時間が不規則にならざるを得ない人に向けた、実行可能な代替手段の提案へ

著者らは本研究について、横断的解析であること、サンプルサイズが大きいとは言えないこと、および、GDF-15は食習慣以外にも多くの因子によって変化する非特異的なマーカーであることなどの限界点を挙げている。

そのうえで、「地域在住高齢者において、食事時間の不規則性が生物学的老化のバイオマーカーであるGDF-15レベルの上昇と関連していることが明らかになった。この関連性は、食事の質の低さによって部分的に説明された。さらに、食事時間が不規則な人にみられる食事の質の低下には、魚の摂取量の少なさが寄与していることが示唆された」と総括。また、「この結果は、食事時間の不規則性と生物学的老化の因果関係を明らかにする縦断研究や、規則的な食事時間を維持できない人であっても、食事の質を改善することで、生物学的老化の進行を遅らせ得るかの検証など、今後の研究に向けての貴重な知見と言える。将来的には、食事時間が不規則な人を対象とした食事戦略の確立の一助になれば」と今後の展開への期待を記している。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Mealtime irregularity is associated with higher serum growth differentiation factor-15 levels in older adults: the explanatory role of dietary quality」。〔Eur Geriatr Med. 2026 Jun 16〕
原文はこちら(Springer Nature)

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