たった1回の運動でも喫煙欲求が低下 運動の喫煙本数減少と禁煙維持効果をメタ解析で確認
運動による禁煙効果を検討した無作為化比較試験を対象として行われた、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。長期的な介入と単回の運動、および、有酸素運動と高強度運動とでは、影響がやや異なるようだ。

依然として世界の公衆衛生上の大きな課題である「喫煙」を「運動」で解決できる?
タバコは、取り除くことが可能な最大の早期死亡リスク因子であり、依然として世界の公衆衛生上の重要な課題として位置付けられている。高所得国では近年、喫煙者率が低下してきているものの、中・低所得国の喫煙率の低下は遅々としている。
禁煙の手段として、補助薬の利用は最も一般的なアプローチだが、成功率が高いとは言えず、この治療にアクセス可能な環境が限られている国や地域も少なくない。それに対して運動療法はアクセスの課題がなく、副作用のリスクは低く、コストも発生しない。
これまでに運動の禁煙効果を検討した多くの無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)が実施され、システマティックレビューの報告も複数みられる。しかし、それらのレビューはやや古く、運動の定義があいまいであったり、非RCTの報告も含めて解析していたり、解析対象報告が少ないといった限界点を有している。この状況を背景として、今回紹介する論文の著者らは、禁煙のための運動の役割を明確にするため、最新の報告も含めたシステマティックレビューとメタ解析を実施した。
文献検索について
システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)ガイドラインに準拠して、2025年3月28日までに11件の文献データベース(CINAHL、Cochrane Library、Embase、MEDLINE、SPORTDiscus、Web of Scienceなど)に収載された論文を対象とする検索を行った。包括基準は、18歳以上の喫煙者を対象に運動介入を行い、喫煙または電子タバコの使用の中止、あるいは喫煙の渇望に対する影響を検討したRCTであり、査読システムのあるジャーナルに英語で報告されているものとした。観察研究や学会抄録、学位論文、非介入研究は除外した。
一次検索で6,436報がヒットし、重複削除後の4,320報を2名の研究者が独立してスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決した。129報を全文精査し、最終的に59件のRCTの報告を抽出した。
研究参加者数は合計9,083人で、このうち運動トレーニング研究(運動を定期的に実施し、その後に喫煙関連アウトカムを評価した研究)が43件(8,548人)、単回運動研究(1回の運動介入の影響を評価した研究)が16件(535人)だった。
実施されていた介入方法
運動トレーニング研究
43件の研究の介入期間は4~60週で、サンプルサイズは20~915人、平均年齢は20.2~59.4歳であり、参加者の喫煙本数は多くの研究で1日10~30本だった。運動の種類や方法は多岐にわたっていたが、最も一般的には有酸素運動であり33件で実施されていた。運動強度は中強度(最大心拍数の50~69%)としたものが多かった。
単回運動研究
16件の研究のサンプルサイズは8~110人で、平均年齢は20.1~42.0歳であり、参加者は全員、毎日喫煙しており、1件を除いて1日10本以上とされていた。運動介入は有酸素運動が11件、レジスタンス運動が2件で、そのほかにヨガ、ウォーキングなども用いられていた。運動セッションは5~30分であり、強度は中強度(最大心拍数の40~68%)としたものが多かった。
運動は有望な禁煙介入策とみなすことが可能
論文では、運動トレーニング研究と単回運動研究に分けて実施されたメタ解析の結果が示されている。
運動トレーニング研究のメタ解析
禁煙維持
23件のRCT(n=5,512)のメタ解析により、運動介入により禁煙が継続的に維持される可能性が、対照群よりも15%有意に高いことが示された(リスク比〈RR〉1.15〈95%CI;1.01~1.32〉)。また、介入開始7日時点の禁煙維持率については18件のRCT(n=4,455)の報告があり、メタ解析の結果、運動群の維持率が対照群より21%高かった(RR1.21〈1.03~1.43〉)。
喫煙本数
1日の喫煙本数を評価した8件のRCT(n=1,246)のメタ解析から、運動介入群では対照群より本数が2本強、有意に減ることが示された(平均差-2.12〈-3.30~-0.93〉)
喫煙欲求
喫煙の欲求への影響を検討したRCTが8件あり(n=366)、そのメタ解析では運動介入による喫煙欲求抑制の効果量は中等度だったが、対照群との差は有意でなかった(標準化平均差〈SMD〉=-0.60〈-1.30~0.10〉、p=0.09)。
単回運動研究のメタ解析
単回運動介入では主に運動後の喫煙欲求への影響が評価されていた。メタ解析は、研究全体、および、介入からの経過時間別に行われており、以下のようにすべての解析で有意な喫煙欲求の低下が認められた。
全研究のメタ解析で単回の運動後には喫煙欲求が19%低下した(SMD=-0.81〈-1.00~-0.61〉)。運動直後は12%低下(SMD=-0.88〈-1.27~-0.50〉、研究数〈k〉=10)、運動終了10分後では20%低下(SMD=-0.80〈-1.27~-0.50〉、k=8)、20分後では43%低下(SMD=-0.57〈-1.11~-0.04〉、k=2)、30分後では48%低下(SMD=-0.52〈-1.02~-0.02〉、k=2)だった。
上記のほか、運動トレーニング研究では有酸素運動による継続的な禁煙の維持効果が認められ、一方、単回運動研究では高強度運動において喫煙欲求が抑制される傾向が認められた。また、ヨガなどのエビデンスは限られていたが、喫煙欲求の抑制と禁煙効果に潜在的な有効性が示されていた。
論文の結論は、「運動介入は喫煙欲求の迅速な抑制と喫煙量の若干の抑制に関連しており、禁煙のためのリスクの低い行動療法としての可能性が裏付けられた。運動は有望な禁煙介入策と言える。今後の研究では、電子タバコ特有の効果と最適な介入方法に焦点を当てる必要がある」と総括されている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Exercise-based interventions for smoking cessation: A systematic review and meta-analysis」。〔J Sport Health Sci. 2026 Apr 7:101138〕
原文はこちら(Elsevier)







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