ゴルファーの熱中症対策は個別化が必要 競技レベルによって労作性熱疲労の関連因子が異なる
アマチュアゴルファーの中でも、競技会に参加しているゴルファーと、レクリエーションレベルのゴルファーでは、労作性熱疲労(EHE)の関連因子が大きく異なることが明らかになった。前者は心理的なストレス、後者ではEHEの認識不足が、EHEリスクに大きく関与しているようだ。武蔵丘短期大学健康生活学科の長島洋介氏らの研究によるもので、論文が「International Journal of Biometeorology」に掲載された。

ゴルフに伴うEHEの関連因子は、競技レベル(志向)によって異なるのか?
近年、地球規模の温暖化により夏季の屋外競技における熱中症対策の重要性が増している。とくに運動強度の高い競技ほど、そのリスクは高まると考えられ、より徹底した対策が必要とされる。ゴルフは高強度運動には該当しない。しかし、熱中症リスクという点では、他の競技にはない独特のリスクが存在する。例えば、プレー時間が長く4~5時間にも及ぶこと、日陰の少ない広大なコース上でプレーすること、プレーヤーの年齢層が幅広く高齢者も多いことなどだ。
このため、国際ゴルフ連盟が2023年に暑熱対策のガイドラインを策定するなど、注意喚起が行われてきている。ただし、それらの注意事項は通常、ゴルファーという集団全体を対象とした、いわゆる“万人向け”の内容にとどまっている。実際のゴルフは、プレー中の移動にカートを用いるか否か、プレーの目的が競技会での勝利かレジャーなのかなど、幅広いプレースタイルがあり、それによって熱中症リスクが異なる可能性がある。
長島氏らが以前行った研究からは、アマチュアゴルファーでは脱水と睡眠不足が、熱中症の前段階と言える労作性熱疲労(exertional heat exhaustion;EHE)の関連因子であることが明らかにされた。しかしその研究でも、競技レベル(志向)は考慮せずに解析していた。
今回、同氏らは、以前行った研究のデータに、新たに収集したデータを加えてサンプルサイズを拡大。競技レベル(志向)による層別化を可能にしたうえで、EHEの関連因子を改めて検討した。
関東地方のゴルフ場のアマチュアゴルファーを対象として2期にわたり調査
長島氏らによる2回にわたる調査は、いずれも関東地方のゴルフ場のアマチュアゴルファーを対象に実施された。研究参加の適格条件を、月1回以上の頻度でラウンドプレーをしていることとし、整形外科的な症状を有する場合はEHE関連症状との混同を避けるために除外した。調査期間は初回が2024年9月20日~10月30日で、2回目は2025年の同時期とした(初回調査の全体的な解析結果は、前記の記事で紹介済み)。
主な調査項目は、ゴルフプレー中の労作性熱疲労(EHE)症状を自覚した経験の有無、およびEHEに関連し得る因子に関する質問。
前者のEHE症状には、日本救急医学会の定義を援用し、めまい、頭痛、嘔気、倦怠感などを含めた。後者のEHEに関連し得る因子については、生活習慣(運動頻度、月間ラウンド数、睡眠環境)、健康状態(食欲不振、睡眠不足、精神的ストレスなど、7項目の主観的評価)、食行動(スポーツドリンク、サプリメントなどの摂取頻度)、プレー環境(高温や無風などの主観的評価)を把握した。
競技レベル(志向)については、公式競技会に定期的に参加しているゴルファーを「競技ゴルファー(competitive golfer;CG)群」とし、競技会には積極的に参加せず主に社交・レジャー目的で行っているゴルファーを「レクリエーションゴルファー(recreational golfer;RG)群」とした。事前の統計学的検討から、リスク関連因子の特定に必要なサンプルサイズは、各群200人と計算された。
3分の2が競技レベル(CG)群、他がレクリエーションレベル(RG)の集団で検討
2期にわたる調査で759人の回答が得られた。前記の除外基準の該当者を除き、744人を解析対象とした。主な特徴は、年齢は40~59歳が約半数(48.3%)を占め、40歳未満が19.6%、60歳以上が32.1%、性別は男性が66.1%であり、約5人に1人(21.2%)が何らかの基礎疾患を有していた。
この744人のうち、485人(65.2%)が競技ゴルファー(CG)群で、259人(34.8%)がレクリエーションゴルファー(RG)群だった。
脱水症状と食欲不振は共通のEHE関連因子だか、その他の関連因子は両群で異なる
競技ゴルファー(CG)群とレクリエーションゴルファー(RG)群を比較すると、CG群は女性の割合が有意に高く(37.1 vs 27.8%、p=0.010)、若年であり(p=0.033)、体重が軽く(p=0.007)、基礎疾患を有する割合が低かった(p=0.030)。その他の評価項目にも以下のような違いが認められた。
CG群はRG群より、生活習慣、健康状態、食行動が良好
1週間あたりの運動頻度および1機会あたりの運動時間はCG群のほうがRG群より高値であり(ともにp<0.001)、1カ月あたりのラウンド頻度もCG群のほうが高かった(11ラウンド以上の割合が24.1 vs 9.7%、p<0.001)。
また、夏季(調査期間中)に6時間以上の睡眠をとっている割合(47.0 vs 31.3%、p<0.001)、バランスのよい食事を摂取している割合(p=0.003)、朝食を欠かさない割合(p<0.001)についても有意差が認められ、いずれもCG群のほうが良好だった。
ゴルフプレーにおける食事戦略にも有意差が認められ、CG群はジェル(40.0 vs. 15.4%)、果物(16.5 vs 6.9%)、およびサプリメント(24.7 vs.13.9%)の摂取率が高かった(すべてp<0.001)。
健康状態については有意差がなかったが、食欲不振はCG群がやや多い傾向があった(p=0.061)。プレー環境の主観的評価(高温や無風など)については有意差がなかった。
CG群は心理的負荷、RG群は生活習慣がEHE症状に関連
ゴルフプレー中に労作性熱疲労(EHE)症状を自覚した割合は、CG群47.8%、RG群34.8%だった。
EHE症状の自覚と関連のある因子を、交絡因子(年齢、性別、BMI、基礎疾患)を調整し、それぞれの群ごとに検討した結果、脱水症状と食欲不振は両群ともに有意な関連因子であったが、その他の関連因子はCG群とRG群とで大きく異なっていた。詳細は以下のとおり。
CG群とRG群共通のEHE関連因子
- 脱水症状(CG群:調整オッズ比〈aOR〉3.90〈95%CI;2.46~6.18〉、RG群:aOR4.73〈2.27~9.84〉)
- 食欲不振(CG群:aOR2.76〈1.72~4.45〉、RG群:aOR2.30〈1.09~4.87〉)
CG群でのみ有意なEHE関連因子
- 睡眠不足:aOR2.27(1.39~3.37)
- 精神的ストレス:aOR1.66(1.01~2.77)
RG群でのみ有意なEHE関連因子
- ラウンド頻度の高さ(1カ月に11回以上):aOR3.63(1.10~11.81)
- ジェルの摂取頻度の高さ:aOR2.62(1.01~6.81)
- アイスクリームやシャーベットの摂取頻度の高さ:aOR2.37(1.07~5.24)
ゴルファーに対する熱中症予防の情報提供は、対象者の競技志向を考慮すべき
著者らによると、本研究はゴルファーを競技レベル(志向)で層別化してEHE関連因子を検討した初の研究だという。論文では、明らかにされたポイントが以下のように整理されている。
脱水と食欲不振は競技レベル(志向)にかかわらずEHEリスク
CG群、RG群ともに脱水症状と食欲不振が労作性熱疲労(EHE)症状の自覚に関連していた。この点について、口渇などは既に脱水が進行しつつあることを示唆する症状であることから、口渇を自覚する前の水分摂取の推奨が重要と言え、また食欲不振は暑熱負荷に伴う消化器症状の可能性があり、電解質摂取不足から熱中症リスクを高め得る点に注意を要するとしている。
CG群は好ましい生活習慣だが、心理的な負荷がEHEリスクを高めている可能性
CG群は食行動や睡眠などの生活習慣はRG群より好ましいものだった。しかしそれにもかかわらず、EHE症状の自覚に関連する因子として睡眠不足が該当し、また精神的ストレスも有意に関連していた。このことから、競技レベルのゴルファーでは主に生理的・心理的な負荷がEHEリスクに関与していると考えられた。
RG群は生活習慣が好ましいものでなく、EHE対策の基礎が理解されていない傾向
一方、RG群は生活習慣がCG群ほど好ましいものでなかった。またアイスクリームなどの摂取頻度が高かった。冷たい飲食物の摂取は身体の冷却戦略として有効性が高いとは言えず、電解質の補給もできない。つまりRG群は、EHE対策の基本的な情報を得ていない可能性が示唆された。
RG群は体力づくりを行わずにプレーを連続していることがEHEの一因
興味深い点として、ラウンド数が1カ月に11回以上の割合はRG群よりもCG群のほうが有意に高かった。しかしCG群では、ラウンド頻度はEHEの有意な関連因子ではなく、RG群ではラウンド頻度の高さがEHEに関連していた。この結果から、RG群は回復や体力づくりを考慮せずに頻繁にプレーを行い、疲労が蓄積しており、それがEHEリスクを押し上げているのではないかと推測された。
“万人向け”の熱中症予防から、対象を絞った介入へのパラダイムシフトを
これらの考察のうえで論文の結論は、「競技ゴルファーは、精神的負荷や睡眠不足といったストレスに対してより脆弱であり、コース外での回復戦略が熱中症対策として不可欠であることが強調される。それに対してレクリエーションゴルファーのEHEは、過度なプレー頻度と冷たい飲食物への不適切な依存と関連しており、これは知識の根本的な欠落を表している可能性がある。これらの知見は、ゴルフに伴うEHEと熱中症の予防には、“万人向け”のアプローチではなく、対象を絞った介入へのパラダイムシフトが必要であることが示唆される」と総括されている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Distinct risk factors for exertional heat exhaustion in competitive versus recreational amateur golfers: a stratified cross-sectional study」。〔Int J Biometeorol. 2026 Jun 17;70(7):192〕
原文はこちら(Springer Nature)
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