極端な「暑さ」や「寒さ」で小児けいれんの緊急入院リスクが上昇 気温変化との関連を全国規模で調査 東京科学大学
極端な暑さと寒さのいずれもが、小児のけいれんによる緊急入院リスクを高めることが、全国規模の調査から初めて示された。2011~19年のDPC入院データ、約11万6千件と日次気温データを統合解析した結果、日平均気温の極端な高温で1.17倍、極端な低温で1.22倍、入院リスクが増加するという。また、この影響は極端な気温が観測されてから0~1日以内にピークに達するとのことだ。東京科学大学の研究によるもので、「Pediatric Research」に掲載されるとともにプレスリリースが発行された。子どもが極端な気温に対してとくに脆弱である可能性が示され、著者らは「気候変動が進むなか、暑さ・寒さへの曝露対策や医療体制の備えの重要性を示唆する成果」としている。

研究の背景:ラグ効果を考慮しながら、全国規模のデータ解析
気温と小児けいれんの関連を検討したこれまでの多くの研究は、一部の都市に限定されていた。さらに、ラグ効果※1を考慮した日ごとの気温データと全国的な医療データを用いた分析は行われていなかった。
※1 ラグ効果:気温が健康に対して与える影響は、気温に曝露した時点からしばらく続くことが知られており、その遷延性を「ラグ効果」と呼ぶ。
日本は年間を通じて多様な気象条件を有しており、さらに南北に細長い地理的特性をもつことから、このような研究にとってユニークな環境を提供すると考えられる。本研究では、全国規模の日次気温データと入院患者データを用いて、気温と小児けいれんによる緊急入院との関連を調査した。
研究成果:極度の暑さ・寒さの小児けいれんリスクへの影響は翌日にも有意
本研究では、DPCデータベース※2を用いて、2011~19年に発生した11万6,353件の小児けいれんによる緊急入院を解析した。
※2 DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベース:全国の対象病院から収集された入院患者に関する大規模データベースで、退院時情報や診療報酬に関するデータ等が記録されている。
その結果、日平均気温の99パーセンタイルという極度の暑さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.17倍(95%信頼区間:1.05~1.30)であることがわかった(図1)。また、日平均気温の1パーセンタイルに相当する極度の寒さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.22倍(95%信頼区間:1.06~1.40)であることがわかった。
図1 12日間のラグ効果を考慮した日平均気温パーセンタイル※3と小児けいれんによる緊急入院のリスク

さらに、これらの緊急入院は、極度の気温が発生してから0~1日の急性期に多く発生していることがわかった(図2)。
図2 気温が観測された日からと小児けいれんによる緊急入院が起きるまでの日数ごとのリスク

社会的インパクト:子どもは極度の気温に対して脆弱
本研究により、子どもが極度の気温に対して脆弱であることが明らかになった。また、曝露を最小化するための適応策や、極度の気温が予測・観測された際の医療体制の備えが重要であることが強調された。
今後の展開:脱水や感染症との関連が想定され、その検証が必要
高温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、脱水や電解質バランスの乱れが考えられる。また、低温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、季節性のウイルス感染症が考えられる。
今後の研究では、気温と小児のけいれんの関連をより深く理解するため、水分摂取や感染症の状況についても検討することが求められる。
プレスリリース
極端な暑さ・寒さで小児けいれんの緊急入院リスクが上昇(東京科学大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Ambient temperature and pediatric seizure hospitalization: A time-stratified analysis in a national dataset」。〔Pediatr Res. 2026 Mar 18〕
原文はこちら(Springer Nature)
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