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自宅から徒歩圏内に生鮮食料品店が少ないと高齢者のウェルビーイングが低下する可能性 約3.5万人アンケート解析 千葉大学

自宅から徒歩1km圏内に生鮮食料品店が少ない高齢者は、外出頻度が低くてうつ傾向が強く、主観的健康感や手段的日常生活動作が低下しているといった関連を示すデータが報告された。千葉大学の研究グループによる論文が「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

自宅から徒歩圏内に生鮮食料品店が少ないと高齢者のウェルビーイングが低下する可能性 約3.5万人アンケート解析 千葉大学

研究の概要:生鮮食料品店は、単なる「買い物の場」にとどまらない

千葉大学予防医学センターの研究チームは、日常生活が自立している高齢者を追跡したデータを用いて、住まいの近くに生鮮食料品店(野菜・果物・肉・魚などを買える店)があるかどうかと、健康・ウェルビーイングとの関連を幅広い指標で検証した。その結果、徒歩1km圏内に生鮮食料品店が少ないと回答した高齢者は、主観的健康感、手段的日常生活動作※1、外出頻度が低く、うつ傾向と絶望感が高く、幸福感、生活満足度、地域への愛着が低かった。生鮮食料品店は、単なる買い物の場にとどまらず、暮らしの中にある生活の場として、高齢者の健康・ウェルビーイングを高める可能性が示唆される。

※1 手段的日常生活動作:買い物、金銭管理、社会的な活動を伴う複雑な動作を指す。

研究の背景:食料品店へのアクセスとウェルビーイングとの関連を包括的に検証

食料品店へのアクセスは、食生活だけでなく健康に影響を及ぼす重要な要因であることが知られている。とくに高齢者では、生鮮食料品店が多い地域に暮らしているだけで死亡や認知症発症の割合が低いことも示唆されている。一方で、ファストフード店の利用しやすさはBMI増加や心疾患リスクと関連するという報告もあり、健康への影響は一様ではない。しかし、これまで食料品店へのアクセスと、身体・心理・社会面を含むウェルビーイングを包括的に検証した研究はなかった。

そこで本研究では、日常生活が自立している65歳以上の高齢者を対象に、3時点(2013年、2016年、2019年)で測定した健康・ウェルビーイングに関する事前取得データ等を用いて、近隣の生鮮食料品店の多さと健康・ウェルビーイングとの関連をアウトカムワイド・スタディ※2と呼ばれる手法で多面的に検証した。

※2 アウトカムワイド・スタディ:一つの要因が、複数の結果にどのような影響を与えるかを網羅的に検証する新しい手法。さらに3時点の調査データを用いることで逆の因果(原因A→結果Bという考えが、実際には原因B→結果Aという逆の関連)を考慮することができる。

図1 生鮮食料品店と高齢者のウェルビーイングについての研究概要

生鮮食料品店と高齢者のウェルビーイングについての研究概要

(出典:千葉大学)

研究成果のポイント:評価した40指標のうち8指標に関連

本研究では、3時点の追跡調査に回答した高齢者3万4,181人を対象に分析を行った。アンケート調査では、「あなたの家から徒歩圏内(おおむね1km以内)に生鮮食料品(肉、魚、野菜、果物など)が手に入る商店・施設・移動販売はどのくらいありますか」という設問に、「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない、わからない」の中から回答してもらった。

その結果、生鮮食料品店がたくさんあると回答した人と比較して、少ないと回答した人では、健康・ウェルビーイングに関する7領域40指標のうち、5領域8指標に負の関連が認められた。具体的には、主観的健康感、手段的日常生活動作、外出頻度が低いこと、うつ傾向や絶望感が高く、幸福感、生活満足度、地域への愛着が低いことが示された。

表1 評価した7領域40指標の健康・ウェルビーイング指標
1. 身体的/主観的な健康
死亡、認知症、要支援・要介護認定、要介護2以上、残歯なし、主観的健康観、Body mass index (BMI)、手段的日常生活動作、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患
2. 健康行動
喫煙歴、飲酒歴、肉・魚の摂取頻度、野菜・果物の摂取頻度、歩行時間、外出頻度、健診受信
3. メンタルヘルス
うつ傾向、絶望感、孤独感
4. 心理的ウェルビーイング
幸福感、生活満足度、生きがい
5. 社会的ウェルビーイング
趣味、スポーツ、老人クラブ、学習・教養サークル、友人と会う頻度、1カ月以内に会った友達の数、情緒的サポート、手段的サポート
6. 人格と美徳
ボランティア、特技や経験を他者に伝える
7. ソーシャルキャピタル
地域への信用、互酬性、地域への愛着

今後の展望:因果関係の検証、具体的な提言へ

高齢者にとって暮らしの中にある生鮮食料品店の存在は、単なる食品購入の場にとどまらず、高齢者の健康・ウェルビーイングの醸成につながる生活の場である可能性が示された。これは、健康増進法に基づく国民健康づくりのための基本的方針「健康日本21」にて示された、「暮らしているだけで自然に健康になれる環境づくり」の一つとして、生鮮食料品店に注目する根拠となる新たな知見。そのため、食料品店が単に「食べ物を買う場」以上の役割を果たしていると考えられる。

今後、食料品店が不足している地域では、移動販売車や定期的な青空市場、地域バザーなど、その地域にあった「食品を手に入れ、人がつながる場所」を作ることが重要かもしれない。また、店舗の数や規模、店舗までの距離といった客観的なデータを活用した分析の実施が期待される。さらに研究者らは、「誰かと買い物に行くのか、他の用事と組み合わせているのかといった買い物行動パターンにも着目し、健康・ウェルビーイングへとつながるプロセスを検証(因果媒介分析)することで、より具体的な政策提言につなげていきたいと考えている」と記している。

プレスリリース

暮らしの中の生鮮食料品店が、高齢者のウェルビーイングに重要―約3万人の追跡データから検証―(千葉⼤学)

文献情報

原題のタイトルは、「Neighborhood food store and subsequent health and well-being of older adults in Japan: an outcome-wide study」。〔Arch Gerontol Geriatr. 2026 May:144:106186〕
原文はこちら(Elsevier)

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