歯科医院での栄養指導と口腔健康管理で、食生活の多様性と口腔機能が改善する 国内高齢者対象縦断研究
歯科医院の外来での栄養指導と口腔機能トレーニングによって、患者の食生活の多様性と口腔機能が有意に改善したという、縦断研究の結果が報告された。あかま歯科クリニック(福岡県)の赤間愛美氏、九州歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野の藤井航氏らによる論文が、「Annals of Geriatric Medicine and Research」に掲載された。著者らは、歯科医院が地域在住高齢者のフレイル予防に貢献できるのではないかと述べている。

地域の歯科医院はフレイル予防の拠点になり得る
高齢者人口の増加を背景に、フレイルの予防が緊急性の高い社会的課題となっている。フレイルの主要な原因の一つは栄養不良であり、より多くの一般生活者が、食生活をフレイル予防に適したものへ改めることが期待される。しかし、ふだんの生活においてフレイル予防のための食事の摂り方を習得できる機会は多くない。
一方、適切な食生活の実現には、口腔機能が良好に保たれている必要がある。口腔機能の低下はオーラルフレイルとして位置付けられており、それが全身性フレイルのリスクを押し上げることも示されている。そして、地域の歯科医院を受診する患者の多くは、オーラルフレイル好発年齢である。以上より、地域在住高齢者の歯科受診は、フレイルに対する予防的介入を行う良い機会とみることが可能である。
赤間氏らはこのような状況を背景として、歯科医院の外来患者を対象に口腔機能トレーニングとともに栄養介入を行い、食事摂取状況や口腔機能、体組成にどのような変化が生じるかを縦断的に検討した。
歯科医院の外来患者に指導介入を行い、約1年間での変化を検討
この研究には、2023年4月~2024年8月に福岡市直方市内の歯科医院(単一施設)の外来患者から、同意の得られた50歳以上の患者103人が参加。追跡不能となった患者などを除外し74人(男性25人〈72.1±10.5歳〉、女性49人〈72.4±9.1歳〉)を解析対象とした。
研究参加時点(ベースライン)で口腔機能および食生活の多様性を評価後、栄養士・管理栄養士による栄養指導と、歯科衛生士による口腔機能トレーニングを実施。その後、3~4か月に1回の定期フォローアップ診療時にも指導を行い、約1年後に再度、口腔機能および食生活の多様性を評価した。
ベースラインの口腔機能
口腔機能について、日本老年歯科医学会による「口腔機能低下症」の診断基準に基づき、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能の7項目を測定した。7項目中3項目以上が該当した場合を「口腔機能低下症」と診断、解析対象者の54.1%が該当した。
ベースラインの食生活の多様性
食生活の多様性の評価は、食生活の多様性スコア(Dietary Variety Score;DVS)によった。DVSは、魚介類、肉類、卵、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類、果物、いも類、油脂類という10種類の食品群について、1週間の摂取頻度が「ほぼ毎日食べる」場合は1点、それ以外は0点として、合計10点にスコア化する。スコアが高いほど、多様性が高いことを意味する。食事記録は、食事記録アプリ(もぐもぐ日記〈森永乳業クリニコ〉)、またはアンケート用紙を使用した。
解析対象者のベースライン時点でのDVSは4.31±2.69点だった。
ベースラインの体組成
解析対象者のベースライン時点のBMIは、女性22.4±3.4、男性24.3±2.7だった。
体組成は、生体電気インピーダンス法により測定した。体脂肪率は、女性31.1±7.3%、男性25.6±5.2%、筋肉量は同順に19±2.4kg、27.8±3.7kgであり、性別による有意差が観察された。
1年後に口腔機能とともに食生活の多様性スコア(DVS)も改善
約1年後(310.4±146.5日後)、評価した7項目の口腔機能のすべてに改善傾向が認められ、舌圧などは有意に改善していた。また、口腔機能低下症の有病率は54.1%から24.3%へと有意に低下していた(p<0.01)。
さらに、DVSも、4.31±2.69点から5.93±2.56点へと有意に上昇していた(p<0.01)。食品群別にみた場合、大豆製品と緑黄色野菜を除く8種類の食品群はいずれも有意にスコアが上昇していた。
一方、体組成に関しては有意な変化が認められなかった。
歯科での栄養指導で地域住民の健康をサポート
結論として、「地域の歯科医院において栄養管理と口腔機能の双方を重視した介入を行うことが、高齢者の健康維持と改善に貢献し、健康寿命の延長に重要な役割を果たす可能性があることが示唆された」と総括されている。また、「歯科医院が歯科衛生士とともに栄養士を雇用することで、より専門的な栄養サポートが可能になり、地域住民の健康状態の改善にいっそう寄与できるのではないか」との考察も加えられている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Association between Dietary Variety, Oral Function, and Body Composition among Outpatients at a Community Dental Clinic」。〔Ann Geriatr Med Res. 2026 Mar;30(1):101-108〕
原文はこちら(Korean Geriatrics Society)







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