夏は高齢者の水の代謝回転量が1日640mL増加、身体活動量によってさらに増加 東北大学
暑さにより身体活動やエネルギー消費量は平均的に低下するが、身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転量も増えていることがわかった。東北大学の研究グループの研究によるものであり、論文が「Scientific Reports」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが発行された。研究者らは、猛暑が増える社会において高齢者の適切な水分補給の目安づくりにつながる重要な成果としている。

発表のポイント
- 体内の水の動きを高精度で測定できる国際標準法「二重標識水法※1」を用い、日常生活の中で調べた。
- 平均気温29°Cの夏では、高齢者の体内の水の代謝回転量※2が春より約640mL/日増加した。
- 暑さにより身体活動やエネルギー消費量は平均的に低下するが、身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転量も増えていることがわかった。
- 猛暑が増える社会において、高齢者の適切な水分補給の目安づくりにつながる重要な成果である。
※1 二重標識水法:天然にもわずかに存在する水素と酸素の安定同位体(放射能を持たない原子)で標識された水を飲んでもらい、その後の尿を調べることで体内の水の動きやエネルギー消費量を高い精度で測定する方法。
※2 水の代謝回転:飲み物や食事から体に入る水(摂取量)と、尿や汗などで体から出る水(排泄量)の1日の量を示すもの。
研究の概要:高齢者の熱中症対策を新たな視点で着目
近年、気候変動の影響で猛暑日が増加している。とくに高齢者は暑さに弱く、適切な水分補給が重要。しかし、暑い環境において自由に生活を送る場合、体内の水がどの程度代謝されているのかは十分にわかっていなかった。
東北大学の研究グループは、京都府亀岡市に住む65歳以上の高齢者26人を対象とし、春(平均19°C)と夏(平均29°C、最高35°C)で体内の水の代謝を比較した。その結果、夏には体内の水の代謝回転量が1日あたり約640mL増加することが明らかになった。一方で身体活動やエネルギー消費量は平均的に減少していたが、夏の身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転も増えるという関連がみられた。
本成果は、暑熱環境下における高齢者の水分管理の重要性を示している。
詳細な説明:自由な生活環境下での暑熱環境での水の代謝を探る
研究の背景:高齢者は脱水症になりやすい――その理由は?
気候変動に伴う地球温暖化により、世界各地で猛暑日や長期間の高温が増えている。こうした暑さは、心臓や呼吸器の病気などの健康リスクを高めることが知られている。とくに高齢者は暑さに弱く、体温をうまく調節できなくなることや、発汗機能の低下などが起こりやすいとされている。
実際に、猛暑による死亡の割合は65歳以上で高いことが報告されている。そのため、温暖化を抑える取り組みだけでなく、暑さに備える対策も重要。しかし、自由に生活できる環境下において、気温の変化によって高齢者の体内で水がどの程度代謝されているのか、また実際の水分摂取量がどのように変わるのかは十分に明らかになっていなかった。
研究の取り組み:春と夏の2回にわたり二重標識水法で代謝を検討
本研究グループは、水分摂取量、エネルギー摂取量・消費量、身体活動量を測定し、季節の違いによって体内の水の代謝がどのように変化するかを調べた。
京都府亀岡市に在住する65歳以上の高齢者26人を対象に、春と夏の2回にわたり調査を実施した。体内の水の代謝やエネルギー消費量を正確に測定できる二重標識水法を用い、2週間にわたり日常生活下で測定した。
その結果、体内の水の代謝回転量は夏に約640mL/日増加することが明らかにされ、エネルギー消費量は約149kcal/日減少することが明らかとなった(図1)。とくに、体内の水の代謝回転量は、暑い夏に全体として増加するだけでなく、身体活動量の維持に水の代謝回転の増加が必要であることがわかり(図2)、暑熱環境下では身体活動と水分代謝が密接に関連していることが示された。
図1 高齢者における春と夏の水の代謝回転と身体活動の比較

図2 高齢者における春と夏の水の代謝回転と身体活動との関連

今後の展開:身体活動量や体格差を踏まえた水分摂取の目安づくりへ
本研究により、猛暑環境下で高齢者の体内の水代謝が大きく変化することが明らかになった。とくに水の代謝回転量は身体活動量と関連しており、暑さの中で活動量が増えた人ほど水の代謝回転量も増えることが示された。今後は、より大規模な研究を通じて、個人の身体活動量や体格の違いを踏まえた水分摂取の目安づくりにつなげていくことが期待される。
また、これまでの研究では高齢者の身体活動量が体力や健康状態と関連することが示されている。猛暑が増える社会においては、暑さ対策と同時に身体活動を安全に維持する方法を検討することが重要。本成果は、高齢者の健康を守るための水分管理と身体活動戦略の両面に科学的根拠を与えるものとして活用されることが見込まれる。
プレスリリース
暑さで1日の水の代謝回転はどう変わる? -高齢者の水代謝を二重標識水法で解明-(東北大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Hydration, water requirements, and energy balance from spring to summer in free-living older adults: a doubly labelled water study」。〔Sci Rep. 2026 Feb 19;16(1):9872〕
原文はこちら(Springer Nature)
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