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サッカーU-17チリ代表選手の水分補給を検証 公式試合期は体重減少が激しく練習期とは異なることを考慮すべき

サッカーU-17チリ代表選手の水分補給状態を、試合日とトレーニング日とで比較検討した結果が報告された。試合日は体重減少がより大きいこと、およびトレーニングや試合の前後の体重が尿比重と関連している可能性などが報告されている。

U-17チリ代表サッカー選手の水分補給を検証 公式試合期は体重減少が激しく練習期とは異なることを考慮すべき

エリートレベルのユースサッカー選手における水分補給の実態を探る

適切な水分摂取は、アスリートの健康と回復に不可欠であり、脱水と回復遅延、怪我のリスク増大との関連性を示す報告もある。しかし、水分補給の重要性が過小評価されていることが少なくない。また、より若年のアスリートは水分補給の需要がより大きいとする報告もあり、実際、未成年アスリートはトレーニング中に脱水症状を来すことが多い。

これまで、成人サッカー選手での水分補給戦略については複数の研究が報告されてきている。しかし、エリートレベルのユースサッカー選手の水分補給に関する知見は乏しく、さらに、トレーニングと試合とではどの程度異なるのかという点はほとんど研究されていない。これを背景として今回取り上げる論文の研究では、チリの17歳以下(U-17)代表選手を対象として、トレーニング期間、およびFIFA公式試合日の体重、水分摂取量、尿比重を測定し、それらの関連性を検討している。

試合日の若年サッカー選手の水分補給状態は、トレーニング日とは異なる可能性

この研究の対象はチリのU-17選手21人で、全員がチリ代表チームのメンバー。年齢17.2±0.29歳で、BMIは23.5±1.88、体脂肪率は15.5±2.89%。水分補給状態の評価は、トレーニング期間中の3日、およびFIFA公式試合日に1日、計4日行った

評価項目は、トレーニング日または試合日の午前中の尿比重測定、トレーニングまたは試合直前・直後の体重計測、および、トレーニングまたは試合中の飲水量という3項目。評価を行った日の気温・湿度・風速は以下のとおり。トレーニング期間1は3°C、9.0%、5.6km/時、トレーニング期間2は8°C、81.3%、7.4km/時、トレーニング期間3は3°C、93.1%、3.7km/時、FIFA公式試合日は22°C、38.0%、24km/時。

公式戦の前後での体重減少幅はトレーニング前後での変化より有意に大きい

4回にわたる評価で、トレーニングや試合中の飲水量、および当日午前中の尿比重に関しては有意差がなかった。それに対して試合前後での体重減少幅については、3回計測したトレーニング前後での体重減少幅のすべてより、有意に大きかった。

具体的には、トレーニング期間1が0.61±0.60%の減少、トレーニング期間2は-0.13±0.70の減少(つまり体重の増加)、トレーニング期間3は0.89±0.76%の減少であるのに対して、FIFA公式試合日は3.47±1.05%の減少だった。なお、トレーニング期間2を除く3条件の体重変化の前後比較ではいずれも有意だった。

トレーニング日よりも試合日のほうが体重変化が大きかったことに関して、論文では考察として、当日の気温の差が一因である可能性に言及している。つまり、トレーニング日は3°Cや8°Cの低温であったのに対して、試合日は22°Cと温かい環境で行われた。先行研究によると、若年の選手は暑熱環境の試合で水分補給が不十分になりやすいという。

トレーニングまたは試合前の時点で軽度脱水傾向

計測日の午前中の採尿での尿比重(g/mL)は、トレーニング期間1が1.012±0.008、トレーニング期間2は1.015±0.006、トレーニング期間3は1.016±0.005、FIFA公式試合日は1.016±0.005であり、これらは前述のとおり有意差がなかったが、すべて軽度の脱水状態の範囲(1,010~1,019)と判定された。

トレーニングまたは試合中の飲水量(L)は、同順に0.80±0.32、0.94±0.49、0.62±0.30、1.29±0.62であり、やはり前述のとおり有意差がなかった。

トレーニングや試合前後の体重が当日の尿比重と関連している可能性

論文には次に、、トレーニングまたは試合の前後の体重、および、トレーニングまたは試合中の飲水量と、試合当日の午前中の尿比重の関連を検討した結果が示されている。

それによると、トレーニング期間1およびFIFA公式試合日のトレーニングまたは試合前の体重については、当日午前中の尿比重と有意な負の関連が認められた(それぞれβ=-3.960、p=0.012/β=-4.199、p=0.029)。また、同じくトレーニング期間1およびFIFA公式試合日のトレーニングまたは試合後の体重は、当日午前中の尿比重と有意な正の関連が認められた(それぞれβ=4.009、p=0.012/β=4.142、p=0.033)。

ただし、トレーニング期間2と3の2日については、このような有意な関連は認められなかった。

ユース選手に特化した水分補給戦略が必要

これらの結果の総括として、論文の結論は以下のように述べられている。

「我々の研究結果は、エリートレベルのユースサッカー選手の多くがトレーニング中とFIFA公式試合中の双方で高度な脱水症状を示し、体重減少率や水分摂取量、尿比重には有意差が生じ得ることを示している。試合前後の体重変化は、尿比重の予測因子の可能性もある。トレーニングセッションや試合においては、個人に合わせ差別化された水分摂取戦略が推奨され、また運動前後の体重モニタリングは、若い選手の水分補給状態を推測するうえで有効な戦略となるのではないか。成人に比べて耐性が低く、水分補給レベルも低い傾向のある17歳未満の選手にとって、これらの知見はとくに重要と考えられる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Hydration Status of Elite Youth Soccer Players: Training Versus FIFA Competition」。〔Life (Basel). 2025 Oct 2;15(10):1546〕
原文はこちら(MDPI)

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