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暑熱環境下の持久力パフォーマンス向上に有効なサプリは? ネットワークメタ解析でメントールとタウリンに注目

暑熱環境での持久系パフォーマンスや主観的な疲労感などに対するサプリメント摂取の影響を、ネットワークメタ解析で比較した研究結果が報告された。カフェインや硝酸塩を除いた解析の結果、メントールとタウリンに有意な効果を期待できるという。また、個々のサプリを単独で用いるよりも、あわせて摂取することで相乗効果が発揮される可能性があるとのことだ。

暑熱環境下の持久力パフォーマンス向上に有効なサプリは? ネットワークメタ解析でメントールとタウリンに注目

暑熱下のパフォーマンス低下抑制効果が高いサプリを統計学的手法で探る

地球温暖化の進展により、アスリートにとって暑熱環境への対策が必須となりつつある。これまでに研究・提案されている暑熱対策として、身体の冷却や栄養戦略などがあり、後者については、クレアチン、分岐鎖アミノ酸、カフェイン、硝酸塩などが検討されている。個々のサプリメントについては、いずれも一定のエビデンスがあるが、どのサプリが優れているのかを比較検討した研究はない。そこで今回紹介する論文の著者らは、異なる介入を行った多数の研究報告を統合して介入効果を比較する、ネットワークメタ解析という統計学的手法を用いた検討を行った。

なお、カフェインおよび硝酸塩については、プラセボ対照研究の報告が数多くあり、ネットワークメタ解析を行うと他のサプリとは独立したネットワークが形成されてしまいサプリ間の比較が困難になること、および、優れたメタ解析の報告が既にあるとの理由により、解析対象から除外されている。

システマティックレビューの方法と抽出された研究報告の特徴

この研究では、ネットワークメタ解析のためのガイドラインであるPRISMA拡張版(PRISMA-NMA)に準拠し、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Library、EBSCOhosという5種類の文献データベースを用いて、システマティックレビューを実施した。それぞれの開始から2025年5月1日までに収載された報告を対象として、暑熱環境(27℃以上)においてサプリメントを経口摂取し、パフォーマンスや主観的評価指標(快適性や自覚的運動強度〈RPE〉など)を無作為化比較試験(RCT)または準RCTで検討しており、英語で執筆されている論文を検索。除外基準は、ヒト以外の研究、RCTまたは準RCTでない研究(例えば観察研究)、サプリを非経口投与した研究(例えば静脈内投与)、サプリの慢性摂取の影響を検討した研究、バイアス評価ツールRoB 2に基づき1項目以上で高いバイアスリスクが認められた研究、同一の研究に基づく異なる報告などとされた。

一次検索で3万7,469報がヒットし重複削除後の2万1,507報をタイトルと要約に基づき3人の研究者が独立してスクリーニングを実施。365報を全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は4人目の研究者との討議により解決した。

最終的に、25件の研究報告がシステマティックレビューの包括基準を満たすと判断され、22件のデータがネットワークメタ解析に利用された。25件の研究の参加者数は合計552人で、大半は18~35歳の健康な男性アスリートであり、平均年齢は28.3±4.8歳であって、行っている競技は、ランニング、自転車、ボート、サッカー、ラグビーなどさまざまだった。

研究が実施された環境は、室温27~40℃、相対湿度40~80%であり、多くはサプリ摂取の急性効果(単回または短期摂取)を検討していた。用いられていたサプリは、クレアチン、分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA)、チロシン、タウリン、ポリフェノール系抗酸化物質、炭水化物とプロテインのブレンド、電解質・ナトリウムベースのサプリなどであり、それら単独または複数を組み合わせた介入が行われていた。

メントールとタウリンは単独でも有効な可能性

解析は、持久力パフォーマンスと主観的な評価指標とに分けて行われている。順にみていこう。

持久力パフォーマンスへの影響:メントールとタウリンが有意

暑熱環境での持久力パフォーマンスに関しては、18件の研究で14パターンの介入効果が検討されていた。ネットワークメタ解析の結果、有意な影響を示したのは、メントール(標準化平均差〈standardized mean difference;SMD〉=-1.83〈95%CI;-3.15~-0.51〉)と、タウリン(SMD=0.91〈0.08~1.73〉)の2種類だった(メントールはタイムトライアルにおける完走時間が評価されたためSMDの信頼区間の上限がマイナスであることが有効を意味し、タウリンは疲労困憊に至るまでの時間が評価されたためSMDの信頼区間の下限がプラスであることが有効を意味する)。

BCAA(SMD=0.73)、クレアチン(SMD=0.43)、高ナトリウム(SMD=0.47)などのサプリメントも、パフォーマンスにプラスとなる傾向が示されたが、信頼区間が0をまたぎ有意ではなかった。

主観的な評価指標

暑熱環境での主観的な評価指標に関しては、11件の研究で11パターンの介入効果が検討されていた。評価されていた指標は、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)、疲労感、温熱感覚、回復の程度などだった。

ネットワークメタ解析の結果、有意な影響を示したのは、メントールエナジージェルのみだった(SMD=2.14〈1.01~3.26〉)。その他、複数のサプリメントを併用したいくつかのパターンで、主観的評価指標を改善させる非有意レベルの影響が認められた。

著者らは、「暑熱環境での持久力という点ではメントールとタウリンが明らかなパフォーマンス向上効果を示し、他のサプリメントの効果については、質の高い研究によるさらなる検証が必要とされる。主観的な評価という点では、メントールエナジージェルが最も明確な可能性を示し、他のサプリメントの効果は異質性が高かった」と総括。また、「暑熱環境では、個々のサプリを単独で用いるよりも併用したほうが効果が高いように思われる」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Nutritional Supplements on Endurance Performance and Subjective Perception in Athletes Exercising in the Heat: A Systematic Review and Network Meta-Analysis」。〔Nutrients. 2025 Jun 27;17(13):2141〕
原文はこちら(MDPI)

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