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妊娠中に高タンパク/低GI食を摂っていた女性の子どもは、18歳時点のBMIが高い可能性 デンマークの出生コホート解析

女性が妊娠中に高タンパク/低GIの食事を摂っていると、生まれた子どもが18歳に成長した時点でのBMIが有意に高くなる可能性が報告された。デンマークの出生コホートの大規模データを用いて行ったエミュレーションターゲット研究によるもの。これまでは、低GI食により妊娠中の体重増加が適正化され、出生した子どもの幼少期には好ましい影響を与えることを示唆する報告が散見されていたが、本研究ではそれが支持されず、子どもが成人する時期に至ると、逆に負の影響が現れることが示唆されている。

妊娠中に高タンパク/低GI食を摂っていた女性の子どもは、18歳時点のBMIが高い可能性 デンマークの出生コホート解析

妊娠中の栄養素摂取と体重増加の関係と、子どもの健康への影響

妊娠前の過体重や肥満、および妊娠中の体重増加(gestational weight gain;GWG)の過剰は、胎児が在胎期間に比べて大きく(large-for-gestational-age;LGA)なることや巨大児出産のリスクにつながり、また生まれた子どもが後年、肥満傾向になりやすくなる可能性があると報告されている。

一方、グリセミックインデックス(glycemic index;GI)の低い食事は、糖負荷とインスリン分泌の刺激を抑えることなどにより、体重増加のリスクを抑制する。また、過体重または肥満の妊婦を対象に、高タンパク/低GIの食事介入を行った「APPROACH研究」では、GWGの抑制効果が認められ、またGWGと児の出生時のBMIのzスコアに正相関が認められた。しかしAPPROACH研究では、介入群では児が3~5歳に成長した時点での血清脂質マーカーに好ましくない影響も認められた。

このように、妊娠中の栄養素摂取量やGI値と児の体重変化や疾患リスクとの関連は不明点が多い。とくに、児の幼少期ではなく、一定程度成長した後の健康指標との関連は、研究に要する時間の長さなどの課題もあり、いっそう知見が乏しい。

これらを背景として、今回取り上げる論文の研究は、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)する研究手法で、観察研究でありながら介入効果を予測し得るターゲット試験エミュレーション研究として実施され、妊娠中の高タンパク/低GI食と、児が18歳に成長するまでの体重変化との関連が検討された。

ターゲット試験エミュレーション研究による検討

このターゲット試験エミュレーション研究は、デンマークで1996~2003年に約9万5,000組の母児を登録して行われている前向きコホート研究(Danish National Birth Cohort;DNBC)のデータを用いて行われた。DNBCにおいて妊婦は妊娠25週において、360項目の食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire;FFQ)による調査がされ、6万9,807人の妊婦が回答していた。

前述の先行研究であるAPPROACH研究の適格基準・除外基準に基づき、18歳以上の単胎出産で、アルコールや薬物を摂取しておらず、摂取エネルギー量が極端でない(この条件により除外されたのは約1%)、BMI25~45の女性1万7,551人(25.1%)のサブコホートを作成した。なお、APPROACH研究ではBMIの下限が28とされていたが、本研究では解析に必要な統計的検出力を得るため下限を下げており、また糖尿病や妊娠糖尿病を除外しないといった変更を行っている。

FFQに基づき、タンパク質摂取量が摂取エネルギー量の18%以上であり、かつ食事のGIが55以下の妊婦を高タンパク/低GI(high-protein, low-glycemic-index;HPLGI)群とし、タンパク質摂取量が摂取エネルギー量の18%未満かつ食事のGIが55を超える妊婦を中等度のタンパク質摂取量/中等度のGI(moderate-protein, moderate-glycemic-index;MPMGI)群として定義したところ、HPLGI群として372組、MPMGI群として6,643組のペアが該当した。

子どもの体重は出生から最長18歳になるまで追跡され、全体の約46%が18歳まで追跡可能だった。

14歳までは有意差はないが、18歳になると高タンパク/低GI群の児が高BMIに

結果について、まず母親の特徴をHPLGI群とMPMGI群で比較すると、前者は妊娠前体重、BMI、妊娠中の摂取エネルギー量が有意に高かった。出産時年齢、妊娠期間、妊娠中の体重増加(GWG)は有意差がなかった。

児の体重変化との関連については、調整する交絡因子により3種類のモデルで解析された。ここでは、最も多くの因子を調整しているモデル3の結果を紹介する。モデル3では、妊娠前のBMI、GWG、妊娠週数、社会経済的地位、出産回数、児の性別が調整されている。

解析の結果、出生時、5カ月後、1年、7年、11年、14年後までは、HPLGI群とMPMGI群の児の体重に有意差はなかった。しかし、18歳時点では、MPMGI群の児が73.5±0.14kgであるのに対して、HPLGI群の児は76.1±0.64kgであって、HPLGI群の児のほうが有意に重くなっていた(p<0.0001)。

BMIについても出生から14年後までは有意差がなかったが、18歳時点ではMPMGI群の児が23.92±0.05であるのに対して、HPLGI群の児は24.64±0.21kgであって、HPLGI群の児のほうが有意に高値だった(p=0.001)。BMIのzスコアも同様に、14年後までは有意差がなく、18歳時点でHPLGI群の児のほうが高い(0.54±0.02 vs 0.75±0.10)という有意差が生じていた(p=0.040)。

高タンパク食が低GIのメリットを相殺する?

著者らは本研究、およびAPPROACH研究で報告されていた幼児期の血清脂質への負の影響とあわせた考察として、「妊娠中の高タンパク/低GI食は母体の転帰にはプラスの影響を与える可能性があるものの、児の長期的な転帰には好ましくない影響を及ぼす可能性が示唆される」と述べている。

また、その理由としてさまざまな考察が加えられているが、その一つとして、タンパク質食品の摂取量が多いことにより食事としてのGI値は下がるが、高タンパクであることがそのメリットを相殺してしまう可能性もあるという。その根拠として、胎児期にタンパク質への曝露が多いと、出生後の食欲に影響が生じ、より多くのタンパク質を摂取しようとしてカロリー過剰になるという仮説、およびその仮説を部分的に支持する報告があるとしている。

ただし一方でタンパク質は胎児の成長に重要であり、さらにタンパク質や炭水化物以外の栄養素の多価の影響も考慮する必要があることから、論文の末尾は、「これらの知見を検証し、妊娠中の母親の食生活が児の健康状態に及ぼす潜在的なメカニズムと影響を明らかにするため、さらなる研究が必要」と結ばれている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of a high-protein and low-glycemic-index diet during pregnancy with offspring growth and obesity until the age of 18 years – a target trial emulation」。〔Eur J Clin Nutr. 2025 Sep 25〕
原文はこちら(Springer Nature)

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