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社員食堂の料理に低ナトカリ比調味料を採用することのインパクト 国内クロスオーバー試験

社員食堂で低ナトカリ比(Na/K)調味料を用いて調理した料理を提供し、かつ利用者に乳製品を1品摂取してもらうと、対象者全体の尿中Na/K比が低下することが報告された。京都府立大学大学院生命環境科学研究科健康科学研究室の奥田奈賀子氏らが国内企業の社員を対象に行ったクロスオーバー試験の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された

社員食堂の料理に低ナトカリ比調味料を採用することのインパクト 国内クロスオーバー試験

個人の行動変容を介さずに実を結ぶ減塩対策の探求

日本では高血圧の有病率が高く、高血圧が心血管疾患(CVD)の最大のリスク因子となっている。高血圧の改善において、ナトリウム摂取量を減らしカリウム摂取量を増やすことの有用性に関して強固なエビデンスがあり、そのような食習慣を促す公衆衛生施策が続けられている。しかし、十分な効果をあげているとは言い難い。その理由として、既にこれまでにも長年、減塩が呼びかけられてきており、これ以上の行動変容は容易でないこととともに、経済的な理由でカリウムの多い野菜や果物の摂取量を増やしにくいという側面もあると考えられている。

一方で近年、ナトリウムを減らしカリウムを増やした代替塩などが流通してきている。ある地域で高齢のCVDハイリスク者に家庭でカリウム代替塩を利用させたところ、血圧低下にとどまらず、CVDリスクも低下したとするエビデンスが海外から報告されている。これらエビデンスに基づき、人の行動変容に依存しない効果が期待できると、世界保健機関(WHO)も昨年、低Na/K比調味料の使用を推奨するガイドラインを発行している。

ただし、人々の主要なナトリウム源は国によって異なり、日本人はとくに醤油などの調味料の占める割合が高いことが知られている。また、カリウムが豊富でナトリウムをほとんど含んでいない乳製品の摂取量が日本人は少ない。

このような背景から奥田氏らは、日本人でのエビテンスを得るため、国内企業の社員食堂において低Na/K比調味料を使って調理し、乳製品を加えて提供することによる影響を検証するという、クロスオーバー試験を実施した。

一企業内の二つの食堂で同じメニューを提供してクロスオーバー試験を実施

この研究は、大阪市内のある企業で行われた。この企業には、同じ敷地内にA食堂とB食堂という二つの食堂があり、ふだんは主にA食堂は事務系社員が利用し、B食堂は工場勤務の社員が利用しており、いずれも同じ委託給食会社が料理を提供している。

研究期間の前半(4週間)は、A食堂で提供する料理を、低Na/K比調味料(醤油、味噌、ラーメンスープ、うどんつゆなど)を使って調理し、かつ利用者に牛乳またはヨーグルトから1品摂取してもらった。同じ期間に、B食堂は従来どおりに調理・提供した。4週間後、今度はB食堂で提供する料理を、低Na/K比調味料を使って調理し、かつ利用者に牛乳またはヨーグルトを1品摂取してもらった。なお、低Na/K比調味料のNa含有量は通常の調味料より約25%少なかった。

A食堂とB食堂で提供するメニューはすべて同じであった。また、調理担当者に対しては低Na/K比調味料の使用量を指示せず、ふだんと同じ味にするために必要な量が担当者の裁量で使用された。

研究参加者の特徴

研究参加社員数は当初400人を予定していたが、COVID-19パンデミックのため166人となった。なお、過去の健診で腎機能低下を指摘されている社員や、医師からカリウム摂取制限を指示されている社員は研究参加から除外されている。また、研究に参加しない社員のために、介入期間中の食堂でも、一部、通常の料理が同時に提供された。

研究に参加する社員は昼食のみ社員食堂を利用し、昼食以外の食事は制限せずにふだんどおりとした。また出張など仕事の都合がある場合は昼食も社員食堂以外で摂取してよいこととした。

研究参加者は平均年齢44.3±11.5歳、男性61.4%で、「高血圧と言われたことがある」社員が22.9%、降圧薬服用者が9.6%であり、ふだんの社員食堂利用頻度は4±1.3回/日だった。なお、研究期間中に安静条件下で測定した血圧値によると、高血圧有病率はさらに少ない17.5%だった。また、約3分の2は、乳製品を毎日摂取する習慣がなかった。

低Na/K比調味料使用期間(介入期間)中は社員の尿中Na/K比が有意に低下

研究期間中の社員食堂の利用頻度は4.2±1.0回/週であり、かつ介入期間中にも普通食を選択した社員もいたため、低Na/K比調味料メニューの摂取頻度は3.7回/週にとどまった。これは研究前に見込んでいた5回より26%低い頻度だった。

社員食堂で提供された料理のNa/K比は、介入期間中の和定食が4.6±1.2、麺類は6.6±2.6であり、対照期間中は同順に8.2±3.1、22.7±11.3であって、いずれも介入期間のほうが有意に低値だった(ともにp<0.001)。ただし、Na含有量の差は0.4~0.5gであり、奥田氏らが以前に行ったシミュレーション研究による推定値0.8gより少なかった。

血圧は条件間に有意差なし

本研究の主要評価項目は、条件間の血圧の差だった。解析の結果、収縮期/拡張期血圧は、両条件間に有意差が認められなかった。

この点について論文の考察では、研究参加者が比較的若年で血圧正常者が多数を占めていたこと、および、サンプルサイズや社員食堂の利用頻度、提供された料理のNa含有量の差がいずれも当初の想定より少なかったこと、さらに介入期間も短かったことが、有意差の検出を困難にした可能性があると記されている。

尿中Na/K比は低下し、女性で顕著

一方、副次評価項目の一つに設定されていた尿中Na/K比については、対照期間中は4.10±1.89であるのに対して介入期間中は3.69±1.76であり、後者が有意に低かった(p=0.008)。これを性別に解析した場合、女性は同順に4.02±2.24、3.31±1.39とより顕著な差がみられ(p=0.005)、一方で男性は4.15±2.20、3.94±2.13であり非有意となった(p=0.266)。

女性において介入効果が高いという結果について著者らは、女性のほうが1日の総摂取量が少ないために、昼食の占める割合が大きくなる影響ではないかと推察している。なお、別の副次評価項目として設定されていたBMIは、男性では有意な変化がなかったのに対して女性では介入期間のほうがわずかながら有意に高値になるという性差が観察されており、これも乳製品を追加して摂取してもらった影響が、女性において強く現れたためではないかと述べられている。

料理の味には有意差なし

最後に、やはり副次評価項目の一つとして設定されていた、料理の味の評価結果をみると、対照期間中は「ちょうどよい」が73.7%、「濃い」が23.0%、「薄い」が3.3%であり、介入期間中は同順に69.5%、26.6%、3.9%であって、この分布に有意差はなかった(p=0.277)。

これらの結果を著者らは、「比較的若く血圧正常者の多い勤務者が利用している社員食堂において、低Na/K調味料と乳製品を用いた昼食を提供したところ、参加者の尿中Na/K比が有意に低下したが、血圧には変化がなかった」と総括。そのうえで、「この介入において、参加者はふだんの食生活の変更を要せず、また調理担当者も減塩のための特別な配慮を要さなかった。このような負担の少ない介入は長期間継続可能であると考えられる。低Na/K調味料の普及と乳製品の習慣的な摂取は、加齢に伴う血圧上昇を緩和するための実用的なアプローチとなり得るのではないか」と結論している。

文献情報

原題のタイトルは、「Intervention Using Low-Na/K Seasonings and Dairy at Japanese Company Cafeterias as a Practical Approach to Decrease Dietary Na/K and Prevent Hypertension」。〔Nutrients. 2025 Dec 10;17(24):3856〕
原文はこちら(MDPI)

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