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パラアスリートに求められる個別栄養サポート 不足しやすい栄養素と課題を総まとめ スコーピングレビュー

パラアスリートの栄養上の課題に関するスコーピングレビューの結果が報告された。全体的に、主要栄養素では炭水化物の摂取が少ないこと、微量栄養素ではビタミンD、カルシウム、マグネシウム、鉄が不足していることなどが示されている。

パラアスリート求められる個別栄養サポート 不足しやすい栄養素と課題を総まとめ スコーピングレビュー

パラアスリートはどのような栄養課題に直面しているのか?

パラスポーツが急速に発展しているのに対して、パラアスリートの栄養戦略の指針となるエビデンスは依然として少ない。パラアスリートは食品へのアクセスや食事の準備という障壁の存在だけでなく、障害に固有の生理学的または代謝的な特性によって、健常アスリートとは異なる課題に直面していると考えられる。

例えば脊髄損傷による安静時エネルギー消費量の減少、脳性麻痺による消化管運動の障害、四肢切断による除脂肪体重の低下と義肢使用時の運動消費エネルギー量の増大などが知られていて、それら以外にも障害の区分や程度によって栄養素需要やサプリメント摂取時の安全性・有効性が異なると考えられるなど、考慮が必要な点が多々挙げられる。

この現状を背景として、今回紹介する論文の著者らは、スコーピングレビューにより現時点のエビデンスと課題を整理した。イタリアの研究者らの報告。

文献検索について

ジョアンナ・ブリッグス研究所のスコーピングレビューに関するガイダンス、および、スコーピングレビューのための系統的レビューとメタ解析の優先報告項目の拡張版(PRISMA-ScR)に基づき、PubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarなど、5種類の文献データベースに2025年2月2日までに収載された文献を対象とする検索を実施(Google Scholarは灰色文献の検索に使用)。研究参加者の障害の区分や競技の種類、競技レベルは制限せずに、パラアスリートの栄養について報告している研究を収集した。

一次検索で1,181報がヒットし、重複削除後の964報を2名の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は討議、または3人目の研究者の判断により解決した。92報を全文精査の対象とし46報を抽出。その参考文献として796報を特定し、スクリーニングと全文精査を経て1報を追加。最終的に47件の研究報告を適格と判断した。

抽出された研究報告の特徴

47件の研究のうち22件(47%)は脊髄損傷、脳性麻痺、四肢切断、視覚障害、知的障害などのパラアスリートの混合している集団を対象としていた。7件(15%)は脊髄損傷アスリートのみ、2件は視覚障害アスリートのみであり、四肢切断のみ、知的障害のみアスリートを対象とした研究がそれぞれ1件だった。

競技については18件(38%)が複数の競技アスリートを対象として、12件(26%)は団体競技、8件(17%)は持久系であり、競技レベルについては21件(45%)がエリートまたはパラリンピックレベルとしていた。

食事・栄養素摂取状況の調査には、17件が食品摂取頻度調査票を用い、14件は食事記録、11件は想起法を用いていた。

パラアスリートの栄養に関する潜在的な問題点

抽出された研究報告を基に、論文では(1)主要栄養素と食物繊維の摂取量、(2)微量栄養素の摂取量、(3)サプリメントの使用、(4)水分補給、(5)アルコール摂取、(6)利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)、(7)食習慣――という7領域にわたって総括が述べられている。

主要栄養素と食物繊維の摂取量

炭水化物の摂取量は推奨量を下回っていることが多く、脂質の摂取量は推奨量を上回っていることが多い。とくに脊髄損傷のあるアスリート対象研究、複数の競技アスリート対象研究で顕著。タンパク質の摂取量は概ね適切または高いが、女性アスリートでは一部不足がみられる。食物繊維の摂取量は、あらゆる障害の種類と競技・種目において一貫して低い。

これらの栄養バランスの乱れは、インスリン抵抗性、脂質異常症、早期疲労などにつながる可能性がある。

微量栄養素の摂取量

障害の種類や競技・種目を問わず、ビタミンD、カルシウム、マグネシウム、鉄(とくに女性アスリート)、ビタミンEの不足が広くみられる。一方、ナトリウムとビタミンB群の摂取量が推奨量を超えていることがしばしば報告されている。

ビタミンD、カルシウム、マグネシウムの欠乏は、骨の健康や筋疲労の回復遅延と関連しているため懸念される。鉄と葉酸の不足は女性アスリートに多く、貧血やパフォーマンス低下のリスクを高める。

サプリメントの使用

サプリメントの使用率は研究によって0~90%以上の範囲に分布し大きく異なる。四肢切断アスリート、およびナショナルレベルのアスリートでは低く、車椅子ラグビー、サイクリスト、トライアスリートでは高かった。最も頻繁に摂取されていたサプリメントはビタミン・ミネラルで、次いでクレアチンとω3脂肪酸であった。

新たなエビデンスは、脊髄損傷のあるアスリートにおけるクレアチンの使用を支持しており、筋力、除脂肪体重、パフォーマンスに有効であることを示している。前臨床研究からは、ω3脂肪酸の抗炎症作用と神経保護作用の存在が示唆されており、脊髄損傷や外傷性損傷のあるアスリートに有益である可能性がある。

水分補給

研究結果はまちまちで、パラアスリートの間では水分バランスが正常とする報告と、水分が不足しているとする報告がある。

脊髄損傷のあるアスリートは、体温調節機能の低下、発汗量の減少、腎機能やホルモン調節の変化により、水分バランスが崩れやすい。軽度の脱水でもパフォーマンスが低下し、熱中症や尿路機能障害などの二次的な合併症のリスクが高まる可能性がある。

アルコール摂取

パラアスリートのアルコール摂取量は、研究によって大きく異なっていたが、多くのコホート、とくに脊髄損傷や車いすバスケットボール選手は、アルコール摂取量が少ないか、ほとんど摂取していないと報告している。しかし、一部のサブグループ(例えば、米国、イタリア、スウェーデン、日本のパラリンピック選手)では、アルコール使用率が高く、習慣的な飲酒がみられた。

過剰なアルコール摂取は、筋肉の回復や代謝機能を阻害し、また心血管代謝リスクを悪化させる可能性がある。

利用可能エネルギー不足(LEA)

エビテンスは限られているが、女性や持久系のパラアスリートにおいてLEAのリスクが高い。LEAによる影響として、スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;RED-S)、骨密度低下、ホルモン分泌の乱れなどが起こり得る。

食習慣

食習慣に関する調査結果はさまざまであり、食事を抜く、夕食の代わりに軽食を摂るといった行動の報告もある。食品群別の摂取量も一定した傾向はなく、果物や乳製品の摂取量は一貫性がない。緑黄色野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ類/種子類の摂取量は少ない傾向。

理想的にはスポーツ栄養士の介入が求められる

論文では以上の7テーマについてさらに掘り下げたうえで、「パラアスリートは、臨床的な知識を必要とする特有の栄養上の課題に直面している。スポーツ栄養士による個別介入が理想的だが、実際には多くの場合、それを利用できないため、多職種連携によりエビデンスに基づく個々のニーズにあわせたケアの提供が不可欠。また公衆衛生の観点からは、摂取量の不足、水分補給、危険なサプリメントの使用を早期に発見することが、骨粗鬆症、心血管代謝疾患、LEAなどの長期的な合併症を予防するために極めて重要である」と結論づけている。

また、今後の研究の展開として、「パラアスリートの栄養戦略はこれまで十分に研究されていない。競技の種類、競技レベル、性別を考慮し、スポーツの現場や公衆衛生政策に役立つ確固たるエビデンスを生み出すために、質の高い標準化された研究手法が不可欠である」と述べられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Nutritional challenges in para-athletes: A scoping review of current knowledge」。〔Review Disabil Health J. 2026 Mar 26:102072〕
原文はこちら(Elsevier)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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