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Chapter1. サプリメントの活用

2019年06月19日 更新

Chapter1. サプリメントの活用

1. サプリメントとは

サプリメントは、栄養素を食事だけでは必要量を摂取できない時に足りない分を補う目的で利用します。栄養素とは、生きるために必要な栄養成分をいいます。具体的には、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素を指します。アスリートだけではなく、一般の人にも身近になったサプリメントですが、たくさん摂取すれば、身体にとって良い効果があるわけではありません。必要以上摂取した場合には、過剰摂取が問題になることもあります。

公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)では、サプリメントの定義をIOCの観点を参考に、「栄養素(アミノ酸を含むタンパク質、ビタミン、ミネラル等)、また栄養成分を粉体、錠剤、カプセル、ジェル、液体等の医薬品的形状で摂取する場合に、スポーツにおけるサプリメントとして捉えるべき」としました。また、有識者(一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長 鈴木志保子)の意見として「発汗に伴う水分補給として利用しているスポーツドリンクや、生きていくために必要なエネルギーや栄養素を食事あるいは食事の一部として補給するための食品は、スポーツにおけるサプリメントのカテゴ リーとして扱わず、あくまで「一般食品」と考えるべきである」ことが追記されています。

2. エルゴジェニックエイドとは

競技力向上を目的に栄養素以外の成分をサプリメントとして摂取することをエルゴジェニックエイドといいます。最近では、アスリートに限らず「より健康になるため」を目的に摂取することもあります。

エルゴジェニックエイドを利用する場合には、

  • その成分の作用が科学的な根拠に基づいているか、
  • そのエビデンスを導いている研究の実験条件が妥当であるか、
  • どのような評価指標によって効果があると認めているのか、
  • 自分が摂取する必要があるか

を確認することが重要です。

アスリートは、ドーピングにあたる禁止物質を摂取することがないように、エルゴジェニックエイドの利用に対して慎重に判断しなくてはいけません。

3. どのような時にサプリメントを使うか

サプリメントは、必要な栄養素を必要な分だけ摂取するのが基本です。食事からの摂取量が必要量を充たしているかどうかを確認し、不足している栄養素をサプリメントで補充するようにします。

アスリートのサプリメントの利用について、目的と条件をにまとめました。

表 サプリメントの利用を判断する条件と具体例

判断の条件
具体的な例
身体活動量が多くなり、食事からとりきれない場合
身体活動量が多くなるのにともないエネルギー・栄養素の必要量が多くなり、食事量が増加するのに必要量を食べきれないとき
消化・吸収の時間が短い場合
食事時間や食後の休憩時間が十分に取れないなど、エネルギーや栄養素の必要量を摂取できないとき
食事に偏りがある場合
好き嫌い、食物アレルギー、合宿・遠征などで食環境が悪いとき
食事の制限により摂取量が少なくなる場合
減量中や病気のとき
食欲がない場合
緊張していたり、疲労していたり、予定している食事をすべて食べることができないとき
胃腸が弱っていて、消化・吸収の能力が低下している場合
胃腸の状態が悪いとき
特定の栄養素を摂取しなくてはいけない場合
増量・トレーニングの状況によって、増やさなければならない栄養素があるとき

出典:鈴木志保子「理論と実践スポーツ栄養学」p.71 日本文芸社 2018

サプリメントを利用する際には、食事からの栄養素の摂取量をある程度把握したうえでなければ、サプリメントとして摂取する栄養素の種類と量を決定することはできません。また、エルゴジェニックエイドについては、エビデンスを理解し、対象者の状況に応じて効果を発揮するための摂取方法を考えなくてはなりません。そのため、サプリメントの摂取には、栄養の専門職である公認スポーツ栄養士、管理栄養士や栄養士のアシストは必須です。また、製品の安全性や治療薬との飲み合わせなどは、スポーツファーマシストとの連携で判断します。

4. 成長期のサプリメント摂取は慎重に!

Chapter1. サプリメントの活用

成長期の子ども(身長が伸びている期間)は、生きていくのに最低限必要なエネルギーに加えて、発育発達するためのエネルギーが必要となります。ジュニアアスリートは、さらに運動で消費するためのエネルギーも必要です。

運動で消費するエネルギーが多すぎると、エネルギー不足の状態となり、発育発達に使うエネルギーを運動にまわして使ってしまいます。すると発育発達に支障をきたし、オーバーユース症候群、無月経(初潮遅延を含む)、貧血、疲労骨折といった様々な弊害が起こります。

成長期は、食事と補食からエネルギーや栄養素を必要量摂取することが大原則。サプリメントを利用しなくては維持できないような運動量は、本来お勧めできません。しっかりと食べて補いきれるだけの運動量にすべきです。それでもサプリメントを使う際には慎重に摂取するために、公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士の管理のもと利用しましょう。

5. サプリメントの選び方

Chapter1. サプリメントの活用

必要な人によっては、パフォーマンス維持に必須のアイテムであるサプリメント。あなたはサプリメントをどのように選んでいますか?

広告の謳い文句、成分表示、認証マーク、値段など、決め手は人それぞれかと思いますが、サプリメント選びで最も重視すべきは、製品の「安全性」です。JADAが2019年4月3日に公表したサプリメント認証枠組み検証有識者会議によるガイドライン(スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン)に準拠した製品であるかどうかが、その判断基準になりますが、製造する企業に対して書かれたものであるため、アスリートが確認するのは困難です。

アスリートがサプリメントを選ぶにあたっては、下記のようなポイントをぜひチェックしてください。

  1. サプリメントに含まれる成分を確認。(特に海外では禁止薬物である「合法ステロイド」の入ったサプリメントが販売されていることもあるので、しっかりと確認し確認に自信がない場合には、使用しないことをお勧めします。)
  2. 製品パッケージや製品ホームページから安全性の部分を確認
  3. 認証マークがついている場合には、認証マークの質と有効期限を確認

5. 大きな問題となっている"コンタミ"

サプリメント選択の際、含有成分を確認することはとても重要です。しかし、それだけでは、禁止薬物が入っていないことの証明にならない事態が起こっています。

最近、サプリメントのコンタミ(コンタミネーション:contamination)によるドーピング違反の事例が頻発しており、大きな問題となっています。コンタミは本来「汚染」を意味する言葉で、原材料に本来含まれてないはずの禁止物質が何かの拍子に紛れ込んでしまうことをいいます。

コンタミの原因

  • 近くの製造ラインで合法ステロイド入りのサプリメントを作っていて、何かの拍子で微量が混入してしまう
  • 原材料の保管場所での管理が十分ではなく、他の原材料から禁止物質が混入してしまう
  • 製造釜がきちんと洗浄されておらず、前に製造していた禁止物質が残っていた

禁止物質がppb(10億分の1グラム)単位でも含まれていれば、一般消費者が摂取する食品としては問題がなくても、アスリートにとっては死活問題。

コンタミは専門家でも調べようがないので、自分で安全性を確かめて選ぶしかありません。それでも製品製造工程で、たまたまそのロットだけ禁止物質が紛れ込んでいた!ということが現実にあることを知っておく必要があります。

<コンタミのリスクをできるだけ低減化させるために>

コンタミのリスクを低減化することはできますが、リスクを完全に無くすことはできません。日本国内では、禁止薬物が合法としてサプリメントの中に含まれることはないためコンタミのリスクは低いと考えられます。そこで、日本国内の工場で製造された、あるいは国内と同様の管理下で製造されたサプリメントや、今までコンタミの事故を起こしたことがない実績のある企業のサプリメントを選択することをお勧めします。選手や指導者がコンタミの有無を確認することは難しいので、認証プログラムを参考にすることができます。

6. 様々な認証プログラム(認証マーク)

サプリメント選びに認証マークのチェックは常識となっていますが、どのように選んでいますか?実は、世の中にはたくさんのアンチ・ドーピング認証プログラム(認証マーク)が存在しますので、そのプログラムの質と内容を十分に理解することが重要です。

アンチ・ドーピング認証プログラムの技術と経験は欧米が進んでおり、国産サプリメントの多くが活用しています。但し、多くのプログラムがあるなか、日本のガイドラインに準拠しており、精度・頻度の高い製品分析を行っているのは下表の上位3つ(インフォームドチョイス、Certified Drug Free、Certified for Sport)程度のようです。その他は生産施設審査を行っていなかったり、分析機関がISO17025認証を受けていないところで分析を行っているので、注意が必要です。

但し、何度も申し上げますが、認証マークは禁止物質が含まれていないことを証明するものではありません。

■国内外のアンチ・ドーピング認証プログラム

2019年5月現在

INFORMED CHOICE インフォームドチョイス
INFORMED CHOICE インフォームドチョイス
認証機関
LGC(英国)
バイオヘルスリサーチリミテッド(日本総代理店)
生産施設審査
GMP管理を基本要件としながら、アンチ・ドーピングドーピングに特化した書面調査(MAQ)を実施
製品分析
ISO17025認証取得
製品分析の頻度
初回分析および認証後無作為分析
インフォームドスポーツは毎ロット無作為分析
備考
国内ではインフォームドスポーツを取得してもインフォームドチョイスのロゴを使用している
CERTIFIED DRUG FREE
CERTIFIED DRUG FREE
認証機関
BSCG(米国)
生産施設審査
cGMP
製品分析
ISO17025認証取得
製品分析の頻度
初回分析および認証後無作為分析
CERTIFIED FOR SPORT
認証機関
NSK(米国)
生産施設審査
cGMP
製品分析
ISO17025認証取得
製品分析の頻度
初回分析および認証後無作為分析
AEGIS CERTIFIED
認証機関
Aegis Sciences Corporation(米国)
製品分析の頻度
初回分析および認証後無作為分析
HASTA
認証機関
HASTA(オーストラリア)
製品分析
ISO17025認証取得
製品分析の頻度
製造バッチごと
COLOGNE LIST
認証機関
Heimpiele(ドイツ)
製品分析の頻度
1回
LABDOOR TESTED FOR SPORT
認証機関
Labdoor(米国)
製品分析の頻度
1回
ドーピングガード
認証機関
株式会社アトラク
製品分析の頻度
初回分析分とランダム検査による抜き打ちテスト1回
AJCAM
認証機関
日本先端医療医学会、薬事法ドットコム
製品分析の頻度
不明
TSP(自社認証)
認証機関
ボディプラスインターナショナル
製品分析
ISO17025認証取得(△)
製品分析の頻度
LGCで過去分析した結果を流用
FQSC(自社認証)
認証機関
ファインラボ
製品分析の頻度
不明

出典:「防げ! サプリメントによるドーピング! 」(メディア・パル刊)

7. 自分の身を守るために

自分の尿や血液の検体に禁止物質やその代謝物質、もしくはそのマーカーが存在した場合には、アスリートはその原因が不可避なものであっても、全ての責任を負わなければなりません。少しでもリスクを下げるために、下記のような方法もお勧めです。

<サンプル保管習慣化のススメ>

サプリメントを購入したら、30g程度(大さじ2杯くらい)をビニール袋や容器に入れて、冷蔵庫保管しておきましょう。その際、商品名、ロット番号と日付も写メなどして残しておくとよいです(写真参照)。あるいは、飲み終わる前に30g程度残して、商品の容器のまま冷蔵庫に保管しておくのもよいです(日本大学・松本恵先生案)。 なぜ、そのようなことをしておくかというと、ドーピング検査が実施され、陽性が出た際の原因究明の手がかりとなります。ドーピング検査後、陰性の結果が出たら、保管していたサプリメントは飲んでしまうか、処分してください。

製品のロット番号と日付

製品のロット番号と日付

何度も申し上げますが、不足している栄養素を補うためのサプリメントに禁止薬物が混入するはずはないですが、禁止薬物が混入するリスクはゼロではないことを自覚した上での対策をとることが、競技者には求められています。

アスリートは、さまざまな観点からサプリメントを選び、認証マークがついていたとしても、「100%の安心はない」ということを認識しなければなりません。サプリメントの摂取によってドーピング違反行為となった場合には、すべて自己責任だからです。

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保存版『防げ! サプリメントによるドーピング!』のご紹介

防げ! サプリメントによるドーピング!

防げ! サプリメントによるドーピング!
問われるサプリメントの安全性! 求められる世界水準のアンチ・ドーピング認証

(2019年6月11日 メディア・パル刊 1,058円)

世界的な競技大会が目白押しのいま「ドーピング」の問題が身近なものになっています。特に近年問題になっているのが、サプリメントによる「うっかりドーピング」。このムックでは、アスリートの皆さんが「どうすればサプリメントによるうっかりドーピングを防ぐことが出来るのか?」という疑問にお答するとともに、アスリートを取り巻く関係者・家族に向けての啓発・対策に役立つ内容が網羅されています。

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