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歯ぎしり有病率はアスリート36%、パラアスリート27%、一般22% 口腔トラブルや競技力低下を招く可能性

3人に1人のアスリートが歯ぎしりの習慣があるとする、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。一般人口では22.22%と報告されており、アスリートではそれより高いことになる。著者らは競技の緊張やストレス、日常でのプレッシャーが関与しているのではないかと述べている。

歯ぎしり有病率はアスリート36%、パラアスリート27%、一般22% 口腔トラブルや競技力低下を招く可能性

歯ぎしりが口腔疾患を増やし、口腔疾患はパフォーマンスを低下させる

歯ぎしりや食いしばりなどの非摂食時の反復的な咀嚼筋の活動(bruxism)は、それ自体が疾患として扱われることは少ない。しかし、歯の摩耗や咀嚼筋の疲労、顎関節症、頭痛、睡眠の質の低下などを来し、口腔疾患やその他の健康障害の一因となり得る。

歯ぎしりの要因として、不安やストレスなどの心理的な関与が想定されており、そのような負荷にさらされることの多い人や神経症傾向の強い人では、歯ぎしりが多いとする報告がある。そしてアスリートは、そのようなストレスフルな場面に遭遇することが多い。歯ぎしりによって口腔疾患が増え、そのことがパフォーマンスの発揮妨げとなることも考えられる。しかし、歯ぎしりをするアスリートの割合(有病率)に関する知見は限られている。

メタ解析でアスリートの歯ぎしりの有病率を検討

この研究は、システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠し行われた。2022年7月1日に、Web of Science、Embase、PubMed、SPORTDiscus、CINAHLなど10種類の文献データベースを用いた検索を実施。また、Google Scholarなどにより灰色文献(学術的なジャーナルに正式に発表されていない文献)も検索した。

包括条件は、アスリートの歯ぎしりの有病率を検討した研究であり、報告された時期や言語、競技は制限しなかった。また、パラアスリート対象研究も含み、競技カテゴリー、競技レベルなどの制限も設けなかった。除外基準は、歯ぎしりの評価法を明記していない論文、レビュー論文、学会発表など。

2024年12月11日に新たな報告の有無を確認し、ヒットした1,214報を2人の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを独立して行い、38報を全文精査の対象として、14報を適格と判断した。このほか、ハンドサーチでヒットした文献から9報を適格と判断した。なお、採否の意見の不一致は、3人目の研究者が判断した。

解析対象とされた報告の特徴

最終的に抽出された23件の研究は、2002~24年に報告されており、ブラジルからの報告が9件と多くを占めていた。

研究参加者数は20~370人、合計2,805人であり、多くは男性を対象としていたが、1件は女性のみを対象としていた。また3件はパラアスリートを対象としていた。

歯ぎしりの有無の評価方法は自己申告に基づくものが多かった。なお歯ぎしりは、学術的には発生のタイミングで覚醒中と睡眠中に分けられることが多いが、これらを個別に評価した研究は2件、双方をまとめて評価した研究が5件であり、その他はどちらを評価したかの情報がなかった。

アスリートの歯ぎしりの有病率は36%で一般人口より高い

歯ぎしりの有病率は、報告により4.5~100%の間に分布していた(100%との報告は1件のみ)。

メタ解析の結果、アスリートの歯ぎしりの有病率は、34%(95%CI;26~42)と計算された。ただし、研究間で高い異質性が認められた(I2=93.1%)。

感度分析として、バイアスリスクが最も高いと判定された1件の研究のデータを除外した解析を行ったが、結果は有病率36%(25~48)であり(I2=96%)、主解析との結果から有意な変化はなかった。

なお、論文の考察において、一般人口における歯ぎしりの有病率に関する先行研究のデータが紹介されている。それによると一般人口での有病率は22.22%(19.55~25.11)とされていて、アスリートのほうが高い。著者らはその理由として、「競技の緊張、ストレス、身体的負荷が咀嚼筋の過負荷につながり、歯ぎしりを起こしやすくするのではないか」と述べている。

パラアスリートは歯ぎしり有病率がやや低い

このほか、パラアスリートと健常者アスリートとで層別化した解析も行われている。その結果、パラアスリートの歯ぎしりの有病率は27%(19~38)であり、健常者アスリートでは36%(27~47)であって、前者のほうが低かった。

ただし、パラアスリート対象研究はサンプルサイズが小さいことが、この結果に影響を及ぼしている可能性もあるという。なお、研究間の異質性を表すI2統計量は、パラアスリート対象研究が82.8%、健常者アスリート対象研究は93.9%だった。

性別や年齢層、競技カテゴリー、競技レベルでの比較可能なデータに期待

このほかに、興味深いこととして、同じボート競技でも、カヤック選手で歯ぎしりがある場合、症状が左右対称である割合が82.6%であるのに対して、カヌーでは85.7%が右側に症状が集中していることがわかった。これは、カヤックでは両側の上肢の筋肉を使うのに対し、カヌーはおもに利き手の筋肉が使われるためではないかと考察されている。

論文の結論は、「本研究により、アスリートおよびパラアスリートの歯ぎしり(bruxism)の有病率を推定できた。ただ、解析対象研究におけるデータ不足のため、性別や年齢、競技カテゴリー、競技レベル別の有病率を評価することはできなかった」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of Bruxism in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔J Oral Rehabil. 2025 Jun 2〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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