栄養指導とプロバイオティクスの摂取で、歯周ポケットの深さ減少など歯周炎が改善
歯周炎に対する通常の治療に、プロバイオティクスを用いることで、歯周ポケットの深さなどの歯周炎の重症度指標の改善が促進されるとする、パイロット研究の結果が報告された。また、プロバイオティクス摂取とともに、抗炎症作用を強化するように個別化された栄養指導を並行して実施すると、改善効果がより高くなることも示されている。トルコからの報告。

抗炎症作用を期した食事やプロバイオティクスは歯周炎治療に有効か?
歯周炎は歯周組織の炎症性破壊を特徴とする慢性感染症で、治療が十分でないと歯槽骨の喪失、審美性の低下、歯の喪失、咀嚼機能低下、QOL低下などを来す。治療の基本は資化的なブリードマンや根面の除染を中心とする原因菌の除去だが、近年では食事性の炎症反応を抑制するというアプローチも注目されてきている。いつくかの微生物は歯周病菌のコロニー形成を阻害することが報告されており、それらの微生物をプロバイオティクスとして利用して、歯周病治療に採り入れるというアイデアが提案されている。
今回紹介する論文は、このような動向を背景として行われたパイロット研究の報告であり、トルコの単施設の歯科医院における無作為化比較試験として実施された。
歯周炎患者を3群に分けて6週間介入して比較
研究参加者は、軽症から中等症の歯周炎(歯周ポケットの深さが3~7mm)と診断された患者のうち、糖尿病などの全身疾患がなく、歯が20本以上残っている20~60歳の女性であり、喫煙者、妊婦・授乳婦は除外された。対象を女性のみとした理由は、ホルモン分泌や代謝の性差が結果に影響を及ぼす可能性があるため。
全員に対して通常の歯科的治療を行ったうえで、プロバイオティクス摂取を行う群、栄養指導を行ったうえでプロバイオティクスを上乗せする群、および対照群(歯科的治療のみ)という3群を設定し、6週間介入した。事前の統計学的検討から、このトピックの検討には各群35人必要と計算され、脱落を見込み各群40人、計120人を登録した。
栄養介入、プロバイオティクス介入の方法と、評価項目
栄養介入は栄養士の監督下で個別化された栄養プランを作成し行われた。このプランは地中海食を基に、食物繊維やプレバイオティクス、およびω3脂肪酸などの抗酸化作用を有する食品、具体的には野菜、全粒穀物、オリーブオイル、豆類、クルミ、ヨーグルトなどが推奨された。プロバイオティクス介入には、Lactobacillus rhamnosusやBifidobacterium animalisを主とするサプリメントを毎朝1カプセル摂取することとされた。
評価項目は、歯周ポケットの深さ(歯肉縁からポケット底まで)と、アタッチメントロス(セメント質とエナメル質の境目からポケット底まで)であり、患者割り付けを知らされていない1人の歯科医が全患者の介入前後に評価した。
栄養介入+プロバイオティクス摂取で最も顕著に改善
ベースライン時点において、年齢、BMI、婚姻状況、教育歴、世帯所得、ウエスト周囲長、および、歯周ポケットの深さ、アタッチメントロスに有意差はなかった。
しかし、6週間の介入後、歯科的治療に加えてプロバイオティクス摂取を行った2群では、歯周ポケットの深さとアタッチメントロスがより有意な改善効果が示された。とくに栄養介入を並行して行った群では改善が顕著だった。詳細は以下のとおり。
歯周ポケットは介入前が、対照群(歯科的治療のみの群)は5.3±1.0mm、プロバイオティクス摂取群は5.2±0.9mm、栄養介入+プロバイオティクス摂取群は5.3±1.1mm(p=0.79)。介入後は同順に、4.4+0.9mm、3.6+0.8mm、3.1+0.7mm(p<0.001)。アタッチメントロスは介入前が、対照群は5.5±1.1mm、プロバイオティクス摂取群は5.6±1.0mm、栄養介入+プロバイオティクス摂取群は5.6±1.0mm(p=0.91)。介入後は同順に、4.8+1.0mm、3.9+0.8mm、3.2+0.7mm(p<0.001)。
また、臨床的に治癒と判定された患者割合は、歯周ポケットに関しては対照群17.00%、プロバイオティクス摂取群30.80%、栄養介入+プロバイオティクス摂取群41.50%だった。アタッチメントロスにおいて臨床的に治癒と判定された患者割合は同順に、12.70%、30.40%、42.70%だった。
食物繊維とタンパク質は歯周炎リスクと負の相関、添加糖と炭水化物は正の相関
次に、3日間の食事記録から推計したエネルギー量・栄養素摂取量と、歯周ポケットの深さ、アタッチメントロスとの関連を検討した。
すると、食物繊維とタンパク質に関しては、その摂取量が多いほど、介入後の歯周ポケットの深さ、およびアタッチメントロスが低値という、有意な逆相関が認められた。反対に、添加糖や炭水化物に関しては、その摂取量が多いほど、介入後の歯周ポケットの深さ、およびアタッチメントロスが高値という、有意な正相関が認められた。
摂取エネルギー量、脂質、飽和脂肪、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸の摂取量に関しては、歯周ポケットの深さやアタッチメントロスとの相関が有意でなかった。
論文の結論は、「プロバイオティクスが歯周病の治癒を促進することが示された。またこの効果は、患者一人ひとりに個別化して立てられた抗炎症食によって、より強化された。歯周炎の治療において、プロバイオティクスとバランスの取れた栄養を組み込むことが推奨される」と総括されている。
文献情報
原題のタイトルは、「The role of probiotics and dietary interventions in the treatment of periodontitis: a pilot randomized controlled clinical trial」。〔BMC Oral Health. 2025 Jul 31;25(1):1287.〕
原文はこちら(Springer Nature)







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