スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

「味わって食べる」ことは性・年齢を問わず「よく噛んでゆっくり食べる」ことにつながる 全国web調査

肥満や糖尿病のリスク抑制のために推奨されている「ゆっくりよく噛んで食べる」という食習慣に関連のある因子が明らかになった。40歳以上では性別にかかわらず、「味わって食べる」こと、および「口いっぱいにほおばらない」ことが関連しているという。国立保健医療科学院生涯健康研究部の石川みどり氏らが行ったwebによる全国調査の結果であり、「Scientific Reports」に論文が掲載された。

「味わって食べる」ことは性・年齢を問わず「よく噛んでゆっくり食べる」ことにつながる 全国web調査

健康づくりに推奨される「ゆっくりよく噛んで食べる」が身についている人の特徴は?

近年、「食べる速度」が速いことが肥満リスクと関連していることや、「よく噛んで食べる」ことがインスリン分泌や消化管ホルモンの分泌を刺激し食後血糖の上昇を抑制することなどが報告され、「ゆっくりよく噛んで食べる」ことが推奨されることが増えている。例えば、食育基本法に基づく食育推進基本計画では、ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やすという目標が掲げられている。

ただしこれまでの研究の多くは、「ゆっくり食べる/速食いする」、「よく噛んで食べる/あまり噛まずに食べる」という習慣を個別に扱ってきており、「ゆっくりよく噛んで食べる」ことの関連因子は十分検討されておらず、どのような人や習慣に対する介入を強化すべきかが明らかになっていない。石川氏らはこの研究ギャップを埋めるため、「ゆっくりよく噛んで食べる」こととの関連のある因子の特定を試みた。

40~70代の日本人約1,600人を対象にwebによる横断調査

この研究のための調査は、web調査企業のパネル登録者を対象として横断的デザインで実施され、年齢層を40代、50代、60代、70代とし、それぞれ男性と女性が各200人を超えるまで回答を受け付けた。質問内容は、厚生労働省の国民健康・栄養調査や農林水産省の食育に関する意識調査などを参考に作成し、目的変数を「ゆっくりよく噛んで食べているか」として、説明変数を社会経済的因子(6項目)、全身の健康状態(7項目)、食事・健康行動(12項目)、口腔内の状態(14項目)とした解析が可能になるように設計した。

「ゆっくりよく噛んで食べているか」という質問に対する回答の分布

解析は年齢層および性別に行われた。報告された身長・体重に基づき計算されたBMIが10未満などの極端な回答者を除外し、解析対象数は合計1,644人となった。

目的変数である「ゆっくりよく噛んで食べているか」の回答カテゴリーの分布は、「ゆっくりよく噛んで食べている」が男性8.2%、女性8.9%、「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べている」が同順に26.8%、31.4%、「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べていない」が44.0%、43.8%、「ゆっくりよく噛んで食べていない」が21.0%、15.9%だった。

論文ではまず、この回答カテゴリーの分布に有意差の存在する説明変数を示し、そのあとでロジスティック回帰分析の結果として独立した関連のある因子を示している。本稿もこの順に紹介していく。

「ゆっくりよく噛んで食べているか」の回答カテゴリーの分布に有意差のある説明変数

社会経済的因子

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群はそうでない群に比べて 、50代では子どもがいない人が多く、教育歴が長く、60代では子どもがいる人が多く、70代では独居者が多かった。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では子どもがいない人や独居者または夫婦世帯の人が多かった。

全身の健康状態

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では普通体重(BMI 18.5~25未満)が多く、50代では腎臓病と貧血が多く、70代では普通体重または低体重が多かった。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、50代と70代において脳卒中既往者が少なかった。

食事・健康行動

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は年齢層にかかわらず、食事を味わい、口いっぱいに食べ物をほおばらずに食べる人が多かった。また、50代を除き、満腹になるまで食べない人が多かった。 50代では時々間食をする人が、ゆっくりよく噛んで食べる群で多かった。

女性

男性と同様に、ゆっくりよく噛んで食べる群は年齢層にかかわらず、食事を味わい、口いっぱいに食べ物をほおばらずに食べる人が多く、50代を除き満腹になるまで食べない人が多かった。 50代と70代では間食をほとんどしない人が多く、また50代では家族と朝食を食べる頻度が高い人が多かった。60代では1日に少なくとも2回はバランスのよい食事をとる頻度が高い人が多かった。

口腔内の状態

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では歯の喪失が少なく、硬い食べ物の咀嚼に支障がなく、飲み物でむせることが少なかった。50代では歯の喪失が少なく、歯の数が20本以上あるという2項目に有意差が認められた。60代では歯や歯茎の痛み、歯周病、ドライマウスが少なかった。70代は未治療の齲歯(虫歯)がない人が多いという差が観察された。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代と50代では硬い食べ物の咀嚼に支障がない人が多いという差がみられた。また50代では未治療の齲歯がないこと、義歯を使用していることに関しても差がみられた。60代では歯の数が20本以上あることと、飲み物でむせることが少ないという2項目に差が認められた。70代ではゆっくりよく噛んで食べる群において、硬い食べ物の咀嚼に支障がないことと、硬い食べ物の咀嚼に支障があるという双方の回答が多かった。

「ゆっくりよく噛んで食べている」ことに独立した関連のある因子

続いて、ロジスティック回帰分析により、「ゆっくりよく噛んで食べている」ことに関連のある因子が性別に検討された。解析は、強制投入法(モデル1)とステップワイズ法(モデル2)で行われた。

その結果、性別にかかわらず、「食事を味わって食べる」が非常に強く関連しており、次に「口いっぱいにほおばらない」が関連していた。男性は「歯槽骨の減少がないこと」(モデル2のみ)、女性は「満腹になるまで食べない」と「歯や歯茎に痛みがない」ことも有意に関連していた。

その一方で、間食の頻度、バランスの良い食事の頻度、食事の多様性スコア、朝食欠食頻度、喫煙・飲酒・運動習慣、硬いものの咀嚼の困難さ、飲み物でむせる頻度、口渇などは、関連がみられなかった。

有意な関連因子の詳細は以下のとおり。

男性

食事を味わって食べることは、モデル1でオッズ比(OR)10.81(95%CI;4.96~23.57)、モデル2でOR11.20(同5.28~23.76)。口いっぱいにほおばらないことは、同順に、OR3.43(2.24~5.27)、OR3.34(2.23~5.00)。歯槽骨の減少がないことはモデル2でOR2.06(1.22~3.50)。

女性

食事を味わいながら食べることは、モデル1でOR12.18(4.73~31.39)、モデル2でOR11.48(4.63~28.46)。口いっぱいにほおばらないことは、OR3.05(1.89~4.93)、OR2.60(1.65~4.10)。満腹になるまで食べないは、OR1.69(1.16~2.47)、OR1.67(1.16~2.40)。歯や歯茎に痛みがないは、OR2.23(1.04~4.74)、OR2.72(1.44~5.16)。

ゆっくりよく噛むために、まず、口いっぱいにほおばらないこと

著者らは本研究が自己申告に基づく解析であること、横断研究のため因果関係の考察が制限されること、40代未満の若年層を対象に含めていないこと、摂食や咀嚼との関連が示唆されている加工食品の摂取頻度などを調査していないことなどを限界点として挙げている。

そのうえで、「40歳以上のほぼすべての年齢層の男女において、食事を味わうことと口いっぱいに食べ物をほおばらないことが、ゆっくりよく噛んで食べることと有意に関連していた。男性では歯槽骨の減少がないこと、女性では歯や歯茎の痛みがないことなども関連していた」と総括。また、「よく噛むためにはそもそも、口にいっぱいほおばらないことが重要なのではないか」との考察も付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary and oral factors associated with eating slowly and chewing well: a National web-based study」。〔Sci Rep. 2025 Nov 19;15(1):40677〕
原文はこちら(Springer Nature)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ