エリート女性アスリートの最大2割が、不安、抑うつ、摂食障害の臨床症状を経験 精神疾患への介入と環境構築が必要
エリート女性アスリートを対象に行われた研究報告のシステマティックレビューとメタ解析の結果、最大2割程度の選手が臨床レベルの不安、抑うつ、摂食障害を経験している可能性のあることが報告された。著者らは、各競技団体が女性アスリートの潜在的な精神疾患のリスクに対して、より積極的に認識すべきだとしている。

メタ解析で、エリートレベルの女性アスリートの不安、抑うつ、摂食障害の頻度を検討
女性アスリートは男性アスリートよりも不安症、うつ病、摂食障害などの精神疾患のリスクが高いことが報告されてきている。しかし今回紹介する論文の著者によると、エリート女性アスリートの不安や抑うつ、摂食障害リスクに関するシステマティックレビューやメタ解析は限られているという。定量的に行ったレビューの報告は2019年の1報のみであり、睡眠障害や、アルコール乱用、および「不安/うつ」などの有病率を推測しているものの、女性と男性が区別されておらず、さらに不安とうつをひとまとめにしている点が、現在の疾患理解では課題が残るとしている。
不安と抑うつは併存することが多いとはいえ、両者は異なる病状であって、介入も異なることから、両者を区別し、かつ性別を女性に特化した研究報告を対象とする定量的なレビューが求められるという背景の下、著者らは新たにPRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に基づく解析を実施した。
文献検索について
文献検索には、PubMed、Web of Scienceなどの3種類の文献データベースを用い、それぞれのスタートから2025年5月21日までに収載された論文を対象とした。
包括基準は、エリートレベルの女性アスリートの不安、抑うつ、摂食障害のリスクを精度検証済みの評価指標を用いて検討した報告とした。研究対象に男性または非エリートレベルのアスリートが含まれている報告も、エリート女性アスリートのみのデータを抽出可能な場合は適格とした。一方、全文を入手できない報告、英語以外の論文は除外した。
一次検索で7,022報がヒットし重複削除後の4,231報を対象に、2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は討議により解決した。579報が全文精査の対象とし、適格と判断されたもののうち本研究の解析に必要なデータが示されていない報告については責任著者に連絡をとり、データの提供を求めた。最終的に122件の研究報告がシステマティックレビューの対象、そのうち106件がメタ解析の対象として抽出された。
抽出された研究報告の特徴
122件の研究の約3分の1(42件、34.4%)は米国からの報告だった。日本からの報告は1件だった。研究デザインは大半(93.4%)が横断研究であり、サンプルサイズは9~3,839人の範囲で、合計2万7,051人だった。アスリートが行っている競技については、複数の競技アスリートを対象にした研究が多く、64.8%を占めていた。単独の競技アスリートを対象に行った研究の中では、サッカーが9件と最多であり、体操4件、フィギュアスケート3件、水泳3件などだった。
不安リスクを調査したものが41件、抑うつリスクは58件、摂食障害リスクは72件で調査されていた。全研究で合計29種類の評価指標が用いられており、不安の評価には全般性不安障害スケール(The 7-item Generalized Anxiety Disorder;GAD-7)が最多の29件であって、計5種類の指標が用いられていた。抑うつの評価には12種類の指標が用いられており、最多は患者健康質問票(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9)の21件だった。摂食障害の評価にも12種類の指標が用いられており、最多は摂食態度テスト(Eating Attitudes Test-26;EAT-26)の34件だった。
メタ解析による不安、抑うつ、摂食障害の有病率
不安の有病率は19.4%
不安症状のメタ解析の対象は、37件(7,580人)とされた。臨床レベルの不安症状の有病率は1~59%の間に分布しており、全体として19.4%(95%CI;15.4~23.7)となった。研究間の異質性が高かった(I2=94%)。
抑うつの有病率は18.7%
抑うつ症状のメタ解析の対象は、56件(1万5,870人)とされた。臨床レベルの抑うつ症状の有病率は1~57%の間に分布しており、全体として18.7%(95%CI;15.9~21.7)となった。研究間の異質性が高かった(I2=94%)。
摂食障害の有病率は18.6%
摂食障害症状のメタ解析の対象は、57件(9,888人)とされた。臨床レベルの摂食障害症状の有病率は0~89%の間に分布しており、全体として18.6%(95%CI;15.0~22.6)となった。研究間の異質性が高かった(I2=95%)。
エリート女性アスリートのメンタルヘルスに及ぼす因子の研究と環境整備が課題
著者らは本研究を、エリート女性アスリートにおける不安、抑うつ、および摂食障害の臨床的に重要な症状の有病率をシステマティックレビューとメタ解析により推計した、初の研究だとしている。また、本研究に近い手法で推計された一般女性における不安、抑うつ、摂食障害の有病率は、それぞれ7.3%、7.8%、5.7%とのことだ。
この乖離を根拠として著者らは、「我々の研究結果は、エリート女性アスリートにおける不安、抑うつ、および摂食障害のレベルが一般人口と比較して高いことを示唆している」と結論づけるとともに、「この結果が示唆するところは、女性スポーツのあらゆる関係者にとって重要であり、エリート女性アスリートの精神疾患の特定、管理、および治療に特化した施策と介入に重点を置く必要性を強調している」と付言。さらに、「これらの有病率が明らかになった今、今後の研究では、これらリスクを引き起こしている可能性のある根本的なメカニズムの理解に焦点を当てるとともに、この集団特有のメンタルヘルスを育み、精神疾患に取り組む介入とスポーツ環境を構築することが望ましい」と提言している。
文献情報
原題は、「Prevalence of clinically significant symptoms of anxiety, depression and disordered eating in elite female athletes: A systematic review and meta-analysis」。〔Psychol Sport Exerc. 2026 Feb 17:85:103090〕
原文はこちら(Elsevier)







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