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投擲選手の競技成績が位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)と関連 国内大学選手での検討

生体電気インピーダンス法で測定される位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)が、投擲選手のパフォーマンスのマーカーとなり得ることを示すデータが報告された。国内の大学生選手対象横断調査の結果、世界陸連(World Athletics)のスコア(WAスコア)とPhAは正相関、IRは逆相関するという。岡山県立大学情報工学部の大下和茂氏、村井聡紀氏、九州共立大学スポーツ学部の疋田晃久氏、名頭薗亮太氏の研究であり、論文が「Physiological Reports」に掲載された。

投擲選手の競技成績が位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)と関連 国内大学選手での検討

生体電気インピーダンス法によるPhAやIRのスポーツ領域での意義

生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis;BIA)は、体脂肪量などの体組成の評価ツールとして広く使われている。ただしBIAで測定できるのは体組成のみではなく、細胞膜や体内の水分の分布、筋肉の質などの評価も可能。

例えば、電流と電圧の位相差から算出される「位相角(phase angle;PhA)」は、細胞膜の機能や栄養状態を反映し、高値であるほど良好と判断される。また、高周波電流での抵抗と低周波電流での抵抗の比である「インピーダンス比(impedance ratio;IR)」は、体内の水分の分布や細胞の健康状態を反映し、低値であるほど良好と判断される。BIAによる体組成の評価結果が年齢や性別、身長などのパラメーターを用いて算出されるのに対して、PhAやIRは測定した実数そのものを評価に用いるという違いがあることからも、体組成関連指標とは異なる意味を有すると考えられている。

実際、PhAは既に高齢者診療などの臨床や研究の目的で用いられているほか、近年ではアスリートのパフォーマンスの予測や筋肉の質の評価に援用する研究がなされてきている。BIAは被曝がなく繰り返し施行でき、簡便で低コストであるという特徴も、これらの研究を後押ししている。

とはいえ、スポーツ領域でのPhAのエビデンスはまだ十分とは言えず、IRに関してはより少ない。以上を背景として著者らは今回、投擲選手のパフォーマンスをPhAやIRで予測可能かを検討した。なお、先行研究では、既存の体組成指標(体重や除脂肪体重など)は一定レベル以上の投擲選手の投擲選手のパフォーマンスと一貫した関連がみられず、競技レベルや種目などによって異なる結果が報告されてきているという。

位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)は競技成績と相関

この研究は、国内の大学または大学院で投擲競技を行っている学生64人を対象とする横断研究として行われた。性別と年齢、種目の内訳は、男性が39人で19±1歳、やり投げ14人、円盤投げ13人、ハンマー投げ7人、砲丸投げ5人、女性は25人で19±1歳、やり投げ11人、円盤投げ5人、ハンマー投げ6人、砲丸投げ3人。競技レベルはMcKayらの定義に基づくと、Tier2(育成段階)またはTier3(国内レベル)であり、一部の選手はTier4(国際レベル)だった。

位相角(PhA)高値ほど競技成績良好、インピーダンス比(IR)高値ほど競技成績不良

競技成績は、WAスコアにより評価した。男性は832.9±105.7、女性は852.8±90.3だった。

一方、全身で評価した位相角(PhA)は同順に7.53±0.43°、6.47±0.37°、インピーダンス比(IR)は0.742±0.015、0.772±0.013だった。なお、BMIは28.9±4.2、26.0±3.1、除脂肪体重(fat-free mass;FFM)は、72.5±7.4kg、49.2±3.2kgだった。

これらの相関を性別に検討した結果、男性において、PhAはWAスコアと有意な正相関(r=0.454、p=0.004)、IRはWAスコアと有意な逆相関(r=-0.454、p=0.004)するという関連が認められた。また、FFMもWAスコアとの正相関が認められたが(r=0.338、p=0.035)、相関係数はPhAのほうが高値だった。BMIに関してはWAスコアとの有意な関連が認められなかった。

女性も同様に、PhAはWAスコアと有意な正相関(r=0.523、p=0.007)、IRはWAスコアと有意な逆相関(r=-0.491、p=0.013)が認められた。BMI、および男性では有意な相関のあったFFMは、女性では関連が非有意だった。

WAスコアの高値群と低値群で比較すると、PhAとIRに有意差

次に、WAスコアの中央値(男性は804、女性は851)に基づき、全体を性別ごとに二分したうえで、FFM、PhA、IRを比較。すると以下のように、いずれも群間に有意差が認められたが、効果量(Cohenのd)はFFMよりPhAやIRのほうが大きかった。

表1 男性
WAスコア低値群WAスコア高値群有意差
FFM69.7±5.2kg75.3±8.2kgp=0.02、d=0.81
PhA7.15±0.42°7.53±0.35°p<0.01、d=0.99
IR0.748±0.0140.735±0.012p<0.01、d=1.01
表2 女性
WAスコア低値群WAスコア高値群有意差
FFM47.8±2.9kg50.6±2.8kgp=0.01、d=1.04
PhA6.29±0.19°6.67±0.42°p=0.01、d=1.17
IR0.778±0.0060.765±0.015p=0.01、d=1.16

PhAとIRは投擲競技のパフォーマンスマーカーとなり得る

以上の結果に基づき論文の結論は、「国内の大学陸上競技投擲選手において、WAポイントとFFMの関連は男性のみ有意で女性は非有意だった。それに対してPhAとIRは性別にかかわらず、WAポイントとの有意な関連が示された。PhA、IRという筋肉の質も反映する指標は、投擲パフォーマンスの有用なマーカーとなり得るのではないか」と総括されている。

なお、研究の限界点として、BIAを施行した時期とWAポイントが最高値を示したタイミングが最大で半年ほどずれていたことが、解析結果に影響を及ぼした可能性のあること、および、対象がTier2、3中心であったことなどが挙げられ、さらなる研究が必要と述べている。また、「PhAやIRとWAポイントが有意に相関するとはいえ、相関係数は0.5前後で十分に高いとはいえず、投擲競技のパフォーマンスにはテクニカルな面も重要と考えられる」と付け加えられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Phase angle, impedance ratio, and athletic performance of young adult Japanese track and field throwers」。〔Physiol Rep. 2026 Apr;14(7):e70835〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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