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持久性運動中の糖質溶液摂取は腸管血流を増加させ、活動肢血流の増加を抑制する ヒトを対象とした研究で確認

持久性運動中の糖質摂取により、腸管血流が増加することで活動肢血流の増加が抑制されるという血流配分に変化が生じることが明らかとなった。県立広島大学地域創生学部地域創生学科の遠藤(山岡)雅子氏らがヒトを対象として実施した研究であり、その成果は米国生理学会発行ジャーナル「Journal of Applied Physiology」に論文が掲載された。心拍出量には有意な変化が認められず、糖質摂取がエネルギー基質の供給と活動肢血流の制約という、トレードオフをもたらす可能性が示唆された。

持久性運動中の糖質溶液摂取は腸管血流を増加させ、活動肢血流の増加を抑制する ヒトを対象とした研究で確認

運動中の糖質摂取は腸管血流を増加させるのか、また、活動肢血流に影響を及ぼすのか?

持久系競技では、糖質摂取は主要なエネルギー供給のための戦略として用いられている。

しかし一方で、糖質摂取後には消化・吸収に伴い消化管への血流が増加することが知られている。この際、心拍出量が大きく変化しない場合、消化管への血流増加は他の部位への血流配分に影響を及ぼす可能性がある。

運動時には消化管血流は減少することが一般的であるが、糖質摂取によりその低下が緩和されることが報告されている。しかし、運動中における消化管と活動肢の血行動態を同時に評価したヒト対象研究はこれまで存在せず、この点は重要な研究課題として残されていた。遠藤(山岡)氏らはこの点を明らかにするため、以下の検討を行った。

12人を対象としたクロスオーバー試験により、運動中の糖質摂取が各部位への血流および心拍出量へ及ぼす影響を検討

この研究では、活動肢血流の評価を可能にするため、半臥位で膝伸展運動が可能なエルゴメーターを作成。血流量は、超音波ドップラー法により、消化管は上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)、活動肢は大腿動脈(femoral artery;FA)、非活動肢は上腕動脈(brachial artery;BA)で測定した。また、皮膚血流はレーザードップラー法により、前腕および胸部で測定した。

運動中にブドウ糖溶液を摂取する条件と水を摂取する条件のクロスオーバー法を採用。これにより2種類の飲料条件×3つの測定部位(SMA、FA、BA)となり、1人あたり計6回の試行を実施した。

事前の統計解析により、ブドウ糖溶液摂取によるSMA血流の差を検出するために必要なサンプルサイズは10と算出されたため、被験者数は12人(21.0±1.3歳、男女各6人、BMI:20.1±1.7)とした。対象者はいずれも健康で、正常血圧、非喫煙者であり、消化器疾患や心血管疾患、肥満の既往、および手術歴がなく、また薬剤やサプリメントも服用していなかった。

40分の持久性運動中、運動開始9~10分でブドウ糖溶液または水を摂取して比較

各試行は、同一曜日・同一時間帯に、標準化された朝食摂取3時間後に実施し、試行順序は無作為化した。前日からカフェインおよびアルコール摂取、激しい運動を禁止した。

運動強度は、無酸素性作業閾値とVO2peakの差の30%に設定し、回転数60回/分で40分間の膝伸展運動を実施した。運動開始約9分後にブドウ糖溶液または水を1分以内に摂取し、各部位の血流量、心拍出量、ガス交換諸量などを連続的に測定した。

ブドウ糖は50 gであり、味をマスクするために両条件ともに10 mLのレモン果汁を添加し、総量は300 mLとした。

ブドウ糖溶液の摂取により局所の血流配分は変化したが、心拍出量に条件間による有意差なし

水摂取条件では、摂取後に上腸間膜動脈(SMA)および大腿動脈(FA)血流に大きな変化は認めらなかった。一方、ブドウ糖溶液摂取条件では、摂取後にSMA血流は増加し、FA血流では運動に伴う増加が抑制された。上腕動脈(BA)と皮膚血流および心拍出量の増加に条件間の有意差はなかった。

詳細は以下のとおり。

上腸間膜動脈(SMA)血流の変化

運動開始前からブドウ糖溶液または水を摂取するまでは、SMA血流に条件間の差はなかった。ブドウ糖溶液摂取条件では摂取後にSMA血流が増加し始めたが、水摂取条件では摂取後に変化しなかった。運動開始25分後から、運動終了の10分後(観察を終えた時点)まで、連続して条件間に有意差が認められた。

運動中のSMA血管コンダクタンス(血流量を血圧で除した値で、血液の流れやすさの指標)は、ブドウ糖溶液摂取条件の方が摂取後に有意に高値だった(p=0.037)。

大腿動脈(FA)血流の変化

運動開始前からブドウ糖溶液または水を摂取するまでは、FA血流に条件間の差はなかった。ブドウ糖溶液摂取条件では摂取後にFA血流の運動に伴う増加が抑制されたが、水摂取条件では摂取後に変化しなかった。運動開始15分後から、運動終了まで連続して条件間の有意差が認められた。運動終了と同時に両条件ともFA血流は減少し、条件間の有意差は消失した。

運動中のFA血管コンダクタンスは、ブドウ糖摂取条件の方が摂取後に有意に低値だった(p=0.001)。

上腕動脈(BA)や皮膚血流の変化

BAや皮膚(前腕と胸部)血流はいずれも運動開始後に漸増し、運動終了により減少した。条件間で有意差が観察されたポイントはなかった。

心拍数、心拍出量、血圧の変化

心拍数、心拍出量、血圧はいずれも運動開始とともに上昇し、運動終了により低下した。条件間の有意差はなかった。

パフォーマンスへの影響を明確にするためには、さらなる検討が必要である

以上より、運動中の糖質溶液の摂取は、腸管血流を増加させる一方で活動肢血流の増加を抑制するといった血流配分の変化が認められた。また、この活動肢血流の抑制は心拍出量の増加によっては補償されないと考えられた。なお、論文では上記のほかに、胃排泄はブドウ糖溶液摂取条件で遅延すること、VO2やVCO2には有意差がないこと、血行動態への影響について性別による交互作用は認められないことなどが記されている。

著者らは本研究を、ヒトにおいて運動中の糖質摂取におけるSMAおよびFA血流を同一条件下で評価した初の報告とし、局所的な循環調節に関する理解を大きく前進させるものだとしている。一方、研究の限界点として半臥位での運動様式や運動時間の制約があり、実際の競技環境や疲労困憊に至る長時間運動とは異なることから「本研究の結果を競技パフォーマンスへ直接的に結びつけて解釈することには留意が必要である」としている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Effects of glucose ingestion on blood flow in the small intestine and exercising limbs during endurance exercise」。〔J Appl Physiol (1985). 2026 Apr 2〕
原文はこちら(American Physiological Society)

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