生体電気インピーダンス法の位相角でプレフレイルを発見できる可能性とその課題 地域在住高齢者で検証
国内の地域在住高齢者を対象とする研究から、生体電気インピーダンス法の位相角(PhA)によりプレフレイル/フレイル該当者を抽出できる可能性が報告された。PhAは握力や最大歩行速度などと有意な相関があり、女性ではPhAがプレフレイル/フレイルの独立した関連因子であることが明らかになった。福島県立医科大学保健科学部理学療法学科の星真行氏らの研究によるもので、論文が「Geriatrics」に掲載された。

フレイルに伴う健康障害の予防には、地域在住者のプレフレイルを見つける必要がある
フレイルは健康と要介護状態の中間にあたる状態として位置付けられており、これまでの多くの研究から、転倒や入院、死亡などのリスクと関連のあることが報告されている。フレイルの重要な特徴として、介入による健康な状態への可逆性が挙げられるが、実際のところ、フレイル該当者は加齢に伴う何らかの疾患を伴っていることが多いため、健常状態(ロバスト)への回復は必ずしも容易と言えない。このため、フレイルの一歩手前であるプレフレイル段階での発見と介入が必要と考えられている。
これを背景に、多数の高齢者からプレフレイルの該当者を、簡便、低コスト、低侵襲に見いだす方法が模索されている。生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis;BIA)は、これらの条件に適った検査法であり、BIAで把握可能な指標の一つである位相角(phase angle;PhA)は、細胞機能や栄養状態の指標として知られている。さらにPhAとフレイルや転倒リスクとの関連も、施設居住者対象研究などから示されつつある。ただし、より幅広く、地域在住高齢者からプレフレイル段階も含めてフレイル該当者を抽出するというスクリーニング戦略においてもPhAが有用か否かは、これまで十分に明らかにされていなかった。
プレフレイル/フレイルの該当者が48%の集団での検討
以上を背景として星氏らは、福島県内の2都市の地域在住高齢者を対象とする横断的な研究を実施し、PhAとプレフレイル/フレイルとの関連を検討した。
研究参加者は、福島市または南相馬市の居住者から、市の広報誌を通じて募集された。検査会場まで徒歩で来場できることを適格条件とした。174人が参加し、65歳未満の者およびBIA検査を受けなかった人を除外した171人を解析対象とした。
対象者の主な特徴は、平均年齢74.9±5.8歳、女性78.9%、BMI22.8±3.4であり、基本チェックリスト(KCL)に基づくスコアは4.5±3.6点で、82人(47.9%)がKCLスコア4点以上でプレフレイル/フレイルに該当した。位相角(PhA)は中央値4.7°(四分位範囲4.4~5.1)であった。
そのほかの評価項目は、握力が25.8±6.4kg、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)は中央値6.3kg/m2(四分位範囲5.7~6.8)、最大歩行速度は1.9±0.3m/秒、Timed Up & Go(TUG)7.1±1.1秒、開眼片足立ち時間35.0±22.4秒、膝伸展筋力1.37±0.39Nm/kgであり、運動能力尺度(Motor Fitness Scale;MFS〈移動能力、筋力、バランスなどに関する14項目からなる質問票〉)11.3±3.0点であった。
PhAと何らかの指標の併用で、地域在住高齢者対象スクリーニングツールになり得る
ロバスト群とプレフレイル/フレイル群の比較で、女性はPhAに有意差
ロバストとプレフレイル/フレイルに二分し、各評価項目を比較すると、性別にかかわらずKCLスコアのほかに、運動能力尺度(MFS)スコア、膝伸展筋力に有意差が認められ、女性ではさらに、最大歩行速度およびTUGにも有意差が認められた。一方、BMIや骨格筋量指数(SMI)、握力に関しては、男性、女性ともに、群間に有意差がなかった。
PhAについては、男性のロバスト群が中央値5.1°(四分位範囲4.9~5.4)、プレフレイル/フレイル群は同4.6°(4.3~5.4)であり、有意差は認められなかった。女性では同順に、4.8°(4.4~5.1)、4.6°(4.3~4.8)で、ロバスト群が有意に高値だった。
PhAは握力、最大歩行速度、TUG、MFSスコアと有意に相関
次に、PhAと他の評価指標との相関を検討した。その結果、PhAが高いほど、握力(r=0.54)、最大歩行速度(r=0.20)、TUG(r=-0.17)、MFSスコア(r=0.36)が良好という有意な関連が認められた。
PhAは女性のプレフレイル/フレイルと独立して関連
前述のように女性のPhAは、ロバスト群とプレフレイル/フレイル群で有意差があったことから、プレフレイル/フレイル該当の有無を従属変数、年齢およびPhAを独立変数とするロジスティック回帰分析を実施した。その結果、年齢はプレフレイル/フレイルとの有意な関連を認めなかった一方、PhAがプレフレイル/フレイルの独立した関連因子であることが明らかになった(PhAが1°低いごとにOR 2.38、95%CI 1.08~5.23)。すなわち、PhAが低い女性ほどプレフレイル/フレイルに該当する可能性が高いことが示された。
女性のPhAによるプレフレイル/フレイル判別能(AUC)は0.65
続いてROC解析により、PhAを用いた女性のプレフレイル/フレイル判別能を検討した。その結果、カットオフ値は4.19°および4.74°であり、4.19°では感度81%、特異度43%、4.74°では感度31%、特異度96%を示した。ROC曲線下面積(AUC)は0.65であった。
これらの結果から著者らは、「BIAで評価するPhAが、地域在住高齢者のプレフレイルと関連していることが示された」と結論付けている。一方、サンプルサイズが比較的小さく、特に男性では十分な検討ができなかったこと、また女性においてもPhA単独での判断能は高いとは言えず、スクリーニング指標として活用するためには身体機能評価や質問票など他の指標との組み合わせを検討する必要があることを、今後の課題として挙げている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Screening for Pre-Frailty Using Phase Angle Derived from Bioelectrical Impedance Analysis in Community-Dwelling Older Adults」。〔Geriatrics (Basel). 2026 Apr 20;11(2):49〕
原文はこちら(MDPI)







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