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スポーツドリンクとは? 水分補給以外に疲労抑制、回復促進など、潜在的な可能性の期待と課題

「スポーツドリンク」と総称される飲料の定義や作用、機能性、摂取によるパフォーマンスへの影響、新たな可能性などを総括した論文が「Nutrients」に掲載された。早稲田大学スポーツ科学学術院予防医学研究室の鈴木克彦氏によるナラティブレビューであり、現時点のエビデンスを整理するとともに、未だ明らかにされていない研究ギャップや将来的可能性などに言及されている。要旨を紹介する。

スポーツドリンクとは? 水分補給以外に疲労抑制、回復促進など、潜在的な可能性の期待と課題

イントロダクション

スポーツドリンクは従来、主に運動中の水分補給とエネルギー供給をサポートするために、炭水化物と電解質を含む飲料として開発されてきた。しかし、現在市販されている一部の製品には、体温調節、パフォーマンス、運動後の回復のサポートなどを目的として、アミノ酸、カフェイン、メントール、ケトン、植物性化合物なども含有されており、期待される範囲が拡大している。しかし、スポーツドリンクまたは機能性飲料を一群として扱った研究報告は多くはない。これを背景に鈴木氏は、査読システムのあるジャーナルに掲載された論文を対象とする検索の結果に基づくナラティブレビューを行った。

スポーツドリンクの定義

1998年に日本人研究者によるスポーツドリンクのレビューで、「スポーツドリンクとは炭水化物と電解質を含む溶液」という定義が示されて以降、この定義の大きな変更の提案はなされていない。ただしその後、さまざまな成分と特性を持つ複数の飲料が登場して用途も多様化してきたため、定義自体がより困難になっている。

現状において、(1)主に水分補給を目的とした炭水化物・電解質飲料と、(2)水分補給を目的としない飲料に分類でき、後者のカテゴリーには、スポーツパフォーマンスの向上やエルゴジェニック効果を目的とした飲料、運動後の回復とコンディショニングをサポートすることを目的とした機能性栄養素を含む飲料が含まれる。

ベーシックなスポーツドリンクの種類と特徴

炭水化物や電解質ベースのスポーツドリンクは、浸透圧の違いによって等張性または低張性に分類される。等張性飲料の浸透圧は血液などの細胞外液に非常に近いため、運動中のエネルギー補給に適しており、現在市販されているスポーツドリンクの多くは等張性である。

対照的に低張性飲料は、細胞外液よりナトリウムと炭水化物の濃度が低く浸透圧が低い。発汗で体液が失われた状態では腸管から水分が素早く吸収されるため、運動中の水分補給に適している。

なお、経口補水液は水分補給の点でより優れており、嘔吐や下痢、発熱、多量の発汗によって引き起こされる脱水からの早期回復に適しているが、スポーツドリンクよりもナトリウム含有量が多く、運動中に体内に蓄積する老廃物の尿中排泄には適していない。

水分吸収のメカニズム

胃では水分がほとんど吸収されず、ほぼすべての水分吸収は腸管で行われるため、経口摂取したスポーツドリンクの体内吸収速度は主として胃内容排出速度(gastric emptying rate;GER)に依存する。GERはさまざまな要因によって変化するが、運動強度がとくに強く影響する可能性がある。

運動中に摂取するスポーツドリンクを考えた場合、500mOsm/L以上の高浸透圧ではGERが水より低下し、一方、体温よりも温かい飲料ではGERが上昇して、運動後の食欲低下が抑制されることが報告されている。ただしこれらの知見は実験室環境で得られたものであり、スポーツの現場への適用には留意が必要である。

運動後の体温調節に対するスポーツドリンクの影響

体温調節のための冷却戦略は、状況によって目的が異なることを意識する必要がある。運動前や運動中の冷却は、主に熱ストレスを軽減しパフォーマンスをサポートすることを目的とする。一方で運動後の冷却戦略は、上昇した体温の低下を促進し回復プロセスをサポートすることを目的とする。

冷たい飲料の摂取は脱水症状や体温上昇の緩和に有効とされているが、大量に摂取した場合、消化器症状や頭痛などの不快感を引き起こすことがあるため、個々のアスリートの耐性を評価したうえで、冷却戦略に用いることが推奨される。

冷却戦略が体温調節に有益な効果をもたらすという報告は複数みられる。しかし、スポーツパフォーマンスと回復への影響という点では、現在のところ研究結果に一貫性がみられない。一貫性欠如の理由として、冷却のタイミングや運動強度、環境条件などの相違が関係していると考えられ、この点でも戦略の個別化の必要性が示唆される。

水分補給から独立した生理学的影響、およびパフォーマンスへの影響

高強度運動は脱水や熱中症のリスクだけでなく、筋肉や内臓のダメージ、免疫抑制、全身性炎症、酸化ストレス、疲労などを来し得る。これらの抑制や早期回復のためのスポーツドリンク、機能性飲料の開発および評価に関する研究も行われてきている。

例えば、低張性飲料が持久運動中のインターロイキン6(IL-6)分泌を抑制するという報告があり、炎症反応を軽減する可能性が示唆されている。また、女性の月経周期に焦点を当てた研究では、基礎体温が上昇する黄体期の高温環境下での運動中に白血球増加が観察されたが、その増加は低張性飲料の摂取によって抑制されたという報告がある。このほかにも、低張性飲料などが、運動に伴う全身性炎症や免疫抑制を軽減する可能性を示唆する研究報告がみられる。

スポーツドリンクの成分変更の可能性と研究ギャップ

高強度運動は、乳酸、遊離脂肪酸、ケトン体の血中濃度を上昇させ、血液の酸性化(アシドーシス)を引き起こす。これに対してアルカリ水が、酸塩基平衡を維持する体の緩衝能力を高め、運動誘発性代謝性アシドーシスの改善に役立つ可能性がある。

また、腸管保護効果と免疫抑制改善効果を持つグルタミンとアルカリ水を併用した研究では、それらの相乗効果として、ボクシング練習後の唾液中α-アミラーゼ活性とテストステロン濃度が上昇することが観察されている。これらは、スポーツドリンクの溶媒と成分を変更することが、コンディショニングをより強くサポートする飲料の開発につながる可能性を示している。

このほか、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を用いることによる運動誘発性筋損傷の緩和、筋肉痛や疲労の軽減、筋肉量と筋力の向上、ケトン成分を利用することによる持久力向上、カフェインやメントールを添加することによるエルゴジェニック作用の増強、あるいは飲みやすさや味の改善など、スポーツドリンクの成分変更によるさまざまな潜在的可能性が示されてきている。ただし、これまでのところ有用性のエビデンスは状況依存的といえ慎重な解釈が必要であり、今後のより精緻なデザインでの研究が望まれる。さらに、本レビューで解析対象とした研究の多くは、サンプルサイズが比較的小さく、研究間の異質性が高いなどの限界点が認められた。

鈴木氏はこれらの考察のうえで、論文の結論を「今後の研究では、急性反応と慢性的な適応を明確に区別すること、実際のスポーツ環境に則した条件で検討することなどの工夫が望まれる。とくに、特定のスポーツドリンク戦略が、いつ、どのような条件で、どのようなアスリートに最も効果的であるかを明確に把握するために、標準化されたアウトカム指標を用いて、生態学的妥当性のあるプロトコルによる縦断研究が必要とされる」と総括している。

本年8月末・東京開催の国際運動免疫学会(ISEI)のご案内

来る8月27~30日、鈴木氏を大会長として、国際運動免疫学会(The International Society of Exercise and Immunology;ISEI)シンポジウムが、早稲田大学国際会議場(東京・新宿)で開催される。ISEIシンポジウムは、運動と免疫に関連する世界中の研究者の情報交流を目的に2年に一度開催されており、前回の2024年はオーストリアのウィーン大学、前々回の2022年は米国のアリゾナ大学で開催されていた。

今大会では、本稿の内容とも関連する水分補給関連の演題の発表も予定されている。

開催概要などについては、以下の学会サイトを参照のこと。

国際運動免疫学会(ISEI)シンポジウム開催概要
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文献情報

原典論文のタイトルは、「Sports Drinks for Rehydration, Amelioration of Fatigue, and Recovery from Exertion」。〔Nutrients. 2026 May 25;18(11):1687〕
原文はこちら(MDPI)

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