高機能ランニングシューズは速さと引き換えに怪我リスクを高める? 骨ストレス傷害につながる可能性
“スーパーシューズ”と呼ばれることもある、先進的なフットウェア技術を用いたランニングシューズ(AFTシューズ)の人気が高まっているが、それらのシューズはパフォーマンス向上につながる可能性がある一方で、骨ストレスによる怪我のリスクに関連するランニングメカニクスに微妙な変化を生じさせるのではないかとする研究結果を紹介する。著者らは、「シューズをローテーションし、徐々にAFTシューズに適応していくことが、怪我のリスクを抑えてランニングパフォーマンスを高めるのに役立つかもしれない」と述べている。

AFTシューズを履くと、骨ストレス傷害に関連する生体力学的特性の変化が生じるのか
この論文は、ハーバード大学医学部リハビリテーション医学科などの研究者らによるもので、米国物理医学・リハビリテーション学会発行ジャーナル「PM R」に今春掲載された。論文の研究背景によると、ランニングシューズは過去50年間にわたり技術的な進歩を重ねてきており、近年登場したAFT(advanced footwear technology)シューズは、内部にプレート(多くはカーボンファイバー製)が埋め込まれていることによる軽量かつ高反発を特徴とし、ランナーのスライド(歩幅)が大きくなり、つま先でのけり出しが強くなるという。また、過去10年間に記録された5km以上の競技での世界記録のすべてが、AFTシューズを使用したアスリートによる記録とのことだ。
このような目覚ましい進歩から、最近では市民ランナーの間でもAFTシューズの人気が高まっている。しかし、AFTシューズの普及が、骨ストレス傷害(bone stress injury;BSI)を含むランニング関連傷害(running-related injurie;RRI)の一因となっているのではないかという懸念が生じている。先行研究として、AFTシューズの使用に関連し船上骨のBSIを発症した5人のランナーのケースシリーズが報告されている。しかし、AFTシューズの使用がBSIに関連する生体力学的特性の変化につながるのかという点は、これまで十分検討されていない。
以上を背景として著者らは、健康なエリート長距離ランナーを対象とする横断的研究を実施した。
エリートランナー23人が3種類のシューズを履いて比較
研究参加者は、18~40歳の健康なエリートランナーから募集された。適格条件は、各国の選手権やオリンピック代表選考会への出場資格を有している、またはプロ・大学での競技経験があり、5,000mの記録が男性は15分30秒以内、女性は18分以内であり、週に30マイル(約48km)以上走行していて、競技会への参加を計画していること。この条件を見満たす23人(25.4±2.7歳、男性12人)が研究に参加した。なお、全員が過去にAFTシューズを使用した経験を有していた。
研究には、AFTシューズ、高反発ではあるがプレートを用いていない軽量シューズ、ニュートラルなシューズという3種類のシューズが用いられ、参加者は乱数表に基づき無作為化された順に、3条件を試行した。走行速度は、トレーニング強度、テンポラン、5km走速度のいずれかであり、参加者自身が選択した。
トレーニング強度は会話が可能なペース、テンポランは1時間の走行が可能と感じられるペース、5km走速度は参加者自身が競技時に目標とするペースとした。ただし、11人(すべて男性)の5km走速度条件では、トレッドミルの速度上限(12マイル/時)の制約により、本来のレース速度を出せなかった。
走行にあたり、体幹や腰部、大腿、下腿、足部などに計40個の反射マーカーを装着し、10台の三次元動作解析カメラで撮影して、条件による生体力学的特性の差異を解析した。
シューズにより複数の変数に有意差。ケイデンスはAFTシューズが有意に低値
解析の結果、足関節底屈モーメントは、高反発シューズやAFTシューズと比較して、ニュートラルシューズで高値を示した。後足部外反可動域は、高反発シューズやAFTシューズと比較して、ニュートラルシューズで低値を示した。後足部外反速度は、ニュートラルシューズやAFTシューズと比較して、高反発シューズで高値を示した。ケイデンス(1分あたりの歩数)は、高反発シューズやニュートラルシューズと比較して、AFTシューズで低値を示した。そのほかの変数には有意差は認められなかった。
これらのうち、ケイデンスについて詳しくみると、ニュートラルシューズは182.3±12.5歩/分、高反発シューズは182.5±12.4歩/分であるのに対して、AFTシューズは181.3±12.2歩/分だった。
AFTシューズをトレーニングに慎重に組み込む必要性を強調する結果
本研究に関して、論文著者の所属機関からプレスリリースが発行されている。
それによると、「全体としてAFTシューズは、ニュートラルシューズと比較して、ケイデンスの低下(1分あたりの歩数が少なくなり、オーバーストライドになる)や、足のアーチが内側に崩れるなど、骨ストレス損傷リスク(BSI)に関連する生体力学的変化と関連していた。これらの変化は小さいものの、時間の経過とともに蓄積され、BSIにつながる可能性がある」と述べている。
一方で、「興味深いことに、AFTシューズでは、他のリスク関連変数が増加したにもかかわらず、ランナーは足首で地面を蹴る回数が少なかった」とし、「潜在的な保護効果が示唆された」とも記されている。
これらの検討のうえで、「今回の研究は、AFTシューズをトレーニングに慎重に組み込む必要性を強調するとともに、このシューズがパフォーマンスにもたらす素晴らしい効果を認識しつつ、怪我のリスクを軽減するための長期的な戦略をより深く理解するためのさらなる研究の重要性を改めて示している」総括。加えて、「AFTシューズはパフォーマンスを向上させるが、ランナーはそのメリットと、身体への負荷の微妙な変化の可能性とのバランスをとる必要がある」とし、「シューズをローテーションして、AFTシューズに徐々に適応することで、ランニングパフォーマンスを最適化しながら、潜在的な怪我のリスクを軽減できる可能性がある」と付け加えている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Biomechanics associated with bone stress injuries while using advanced footwear technology in elite distance runners」。〔PM R. 2026 May:18 Suppl 2:S143-S150〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)







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