全身持久力が高い人ほど腎機能が低下しにくい 約200人を5年間追跡 筑波大学
全身持久力の高い人ほど、加齢に伴う腎機能低下が緩やかであることが報告された。筑波大学の研究グループの研究によるもので、論文が「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載されるとともに、同大学からプレスリリースが発行された。5年間の追跡調査の結果であり、著者らは「腎機能低下の予防に向けた体力維持の重要性が示唆される」としている。
発表の要旨:全身持久力の高い人は腎機能低下が緩やかという仮説を検証
加齢に伴う腎機能低下にはさまざまな因子が関与するが、体力との関連はわかっていなかった。超高齢社会の日本では、加齢に伴う腎機能低下や慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)が増加の一途をたどっており、より早期からの予防が重要な健康課題となっている。しかし、腎機能が保たれている段階も含めた、体力と将来的な腎機能低下との関連を検討した研究は限られていた。そこで本研究では、有酸素性運動能力(全身持久力)の高い人では、加齢に伴う腎機能低下が緩やかである、という仮説を検証した。
茨城県近郊在住の腎機能が保たれた198人を対象に、有酸素性運動能力を評価し、その後の腎機能の変化を5年間にわたり追跡した。その結果、有酸素性運動能力の高い人ほど、加齢に伴う腎機能低下が緩やかであることが明らかになった。さらに、この関連は、年齢、性別、体格、喫煙習慣、合併症、調査開始時の腎機能などの影響を考慮しても認められた。また、調査期間において、有酸素性運動能力の高い人では、腎機能が20%以上低下するリスクも低いことが示された。
これらの結果は、腎機能が保たれている段階からの体力維持が、将来的な腎機能低下の予防に重要である可能性を示している。本成果は、スポーツ医学の視点から健康寿命の延伸や加齢に伴う腎機能低下の予防に向けた新たな知見として、CKDの予防戦略の構築に役立つと期待される。
研究の背景:腎機能正常者でも有酸素性運動能力はeGFR slopeと関連するか?
慢性腎臓病(CKD)は世界的に増加しており、医療システムに大きな負担を与えている。CKDの発症・進行予防のためには、腎機能の指標として広く用いられる推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)の経時的変化(eGFR slope※1)を評価し、腎機能低下を早期に把握することが重要。
近年、eGFR slopeに関連する因子の一つとして、全身持久力や心肺機能を表す有酸素性運動能力※2が注目されている。CKD患者では、有酸素性運動能力は腎機能低下に伴い低下することが知られている。しかし、腎機能が保たれている地域一般集団において、高い有酸素性運動能力と加齢に伴うeGFR slopeの低下の関連を縦断的(継続的)に検討した研究は限られていた。
※1 推算糸球体濾過量の低下速度(eGFR slope):腎臓の糸球体における血液濾過量を推定する推算糸球体濾過量(eGFR)が、時間の経過とともに低下する速さを表す指標。慢性腎臓病の重症化評価に用いられ、この値の低下が速いほど、腎機能が急速に悪化していることを意味する。
※2 有酸素性運動能力:酸素を体内に取り込み、全身へ運搬・利用する能力を示す指標であり、全身持久力や心肺機能を反映する。有酸素性運動能力が高いほど、持久的な運動を効率よく行うことができていることを意味する。本研究では、自転車エルゴメーターを用いた運動負荷試験を実施し、呼気ガス分析により換気性作業閾値時の酸素摂取量を測定して評価した。
研究内容と成果:約200人を5年間追跡して解析
本研究では、茨城県県南地区の地域情報誌を通じて研究対象者を募集し、適格基準に合致した198人を解析対象者(平均年齢61歳±11歳、女性の割合74%、eGFR 100±20mL/分/1.73m2)とした。研究開始時に、自転車エルゴメーターを用いた有酸素性運動能力の評価および血液検査を実施し、血中シスタチンC濃度からeGFRを算出した。その後、5年間にわたり腎機能を追跡調査し、その間のeGFR slopeから加齢に伴う腎機能低下を評価した(参考図)。
その結果、追跡開始時における解析対象者の有酸素性運動能力は、全体として正常範囲内だった。一方で、追跡開始時に有酸素性運動能力が高い人では、その後のeGFRの低下度合いが小さいことが明らかになった。さらに、この関連は、年齢、性別、体格、喫煙習慣、合併症、調査開始時の腎機能などの影響を考慮しても認められた。また、調査期間中において、有酸素性運動能力の高い人では、腎機能が20%以上低下するリスクも低いことが示された。
これらの結果は、腎機能が保たれている段階においても、有酸素性運動能力が高い人では加齢に伴う腎機能低下が緩やかであることを示唆している。CKDの発症前段階から運動習慣や体力維持を行うことで、腎機能低下を予防できると考えられ、新たな腎機能低下予防戦略の構築に役立つと期待される。
参考図 本研究の概要

今後の展開:有酸素性運動能力の向上が腎機能低下抑制につながるか?
本研究は、腎機能が保たれている地域一般集団において、有酸素性運動能力の高さが加齢に伴う腎機能低下の抑制と関連する可能性を示した研究。著者らは、「今後は中長期的な運動介入研究を通じて、有酸素性運動能力や筋力などの体力指標を維持・向上させることにより、実際に加齢に伴う腎機能低下を抑制できるかどうかを検証していく予定。さらに、身体活動や運動習慣が腎機能低下に影響を及ぼす生理学的メカニズムについても詳細に検討し、CKDの発症・重症化予防に向けた新たなスポーツ医学的戦略の構築につなげていく」と述べている。
プレスリリース
全身持久力が高いほど加齢に伴う腎機能低下が抑制される(筑波大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Cardiorespiratory Fitness and Age-Related Decline in Kidney Function among Individuals with Preserved Kidney Health: The Aging Kidney Study」。〔Med Sci Sports Exerc. 2026 Jul 3〕
原文はこちら(Wolters Kluwer)







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