最も歴史が長い100マイルマラソン参加者の暑熱対策と栄養戦略 好記録のランナーほど炭水化物摂取を計画
世界で最も歴史が古くて権威ある100マイルマラソンの一つとされる「ウェスタンステイツ・エンデュランスラン(Western States Endurance Run)」の参加者を対象に、暑熱対策と栄養戦略をアンケート調査した結果が報告された。ランナーはおしなべて万全な暑熱対策を行っていたこと、好記録を出したランナーは炭水化物施主計画を立てて臨んだ割合が高いことなどが明らかにされている。

ウェスタンステイツ100参加ランナーの暑熱対策と栄養戦略を参加前と後に調査
この研究が対象としたウェスタンステイツ・エンデュランスランは、米国カリフォルニア州で行われている100マイルマラソンで、「ウェスタンステイツ100」という略称で呼ばれることも多い。合計5,500mの上りと7,000mの下りを含む山岳地帯を30時間以内に走行する。
2025年は6月28~29日に実施され、366人がスタートし285人が制限時間内に完走した。午前5時のスタート地点の気温は5°Cであったが、同日の15時に126km地点で観測された最高気温は40°Cに達し、レース中の平均気温は25.5±5.8°Cだった。相対湿度は概して低く、50%未満だった。
研究は、レース前とレースのオンラインアンケート調査として実施された。レース前アンケートはレース開催の1カ月前から当日まで回答可能で、レース後アンケートはレースの翌日から10日間、回答を受け付けた。
回答内容が不完全なものや重複回答などを除外し、106人(参加者の29%)がレース前アンケートに回答した。その年齢は46±6歳、女性36人であった。このうち62%に相当する66人(女性20人)がレース後アンケートにも回答していた。
事前の十分な暑熱馴化と十分な水分・栄養摂取戦略が見て取れる結果
アンケートの回答の解析に際しては、走行記録に基づき以下の3群に分けて比較がなされた。一つ目のグループは、2025年大会参加者の上位5%以内にあたる18時間以内にゴールしたランナー7人(女性2人)。二つ目のグループは2025年大会参加者の上位5~25%以内にあたる24時間以内にゴールしたランナー16人(女性3人)。二つ目のグループは24~30時間(制限時間)内にゴールしたランナー49人(女性18人)。制限時間以内にゴールしなかったランナーについては、全体解析の結果のみに反映されている。
暑熱環境での生活またはトレーニングの経験、過去の熱中症の経験
回答者の44%が暑熱環境で生活またはトレーニングしていると回答した。また、多くのランナーが過去、トレーニング中または競技中に熱中症の症状を経験しており、最も多かったのは脱水で66%、その他、吐き気42%、けいれん38%、嘔吐25%と続いた。また、8%が過去に運動誘発性熱中症の臨床診断を受けたことがあると報告した。
これらの結果に、レースの走行記録に基づく前記の分類での有意差はみられなかった。
レース参加前の暑熱馴化の期間と方法
回答者の70%がレース参加前に暑熱馴化を行ったと回答した。そのうち、73%は10日以上の期間をかけ、78%は10回以上の暑熱曝露を報告した。レースにおいて最速タイムでゴールした群では、全員が10回以上の暑熱曝露を伴う暑熱順化を行っていた。
最も多く行われていた馴化手段は、サウナ利用であり84%で、その他、厚着42%、温水浴38%、環境チャンバー9%、ビニールスーツ7%などが続いた。
レース中の冷却・水分摂取・栄養戦略
回答者の92%がレース中の冷却戦略を立てていた。最も多く用いられた方法は、ネックカラーが89%であり、冷却したタオル52%、全身冷水浸漬47%が続いた。
完走した72人の水分補給戦略は、フィニッシュタイムでの差はなかった。しかし、ナトリウム摂取の計画に有意差がみ、記録の速いランナーほど摂取量が多かった。
栄養戦略については、エネルギー量、脂質、タンパク質に関する計画は、レースパフォーマンスカテゴリー間で差がなかった。しかし、炭水化物摂取計画については有意差が認められた。具体的には、完走した72人のうち18時間以内で走り切ったランナーは全員(100%)が炭水化物摂取計画を立てていた。18~24時間で完走したランナーでのその割合は94%、24~30時間で完走したランナーでは69%であった。
サプリメントやカフェインの計画的摂取については、パフォーマンスカテゴリー間で差は観察されなかった。
レース後のアンケート
レース後のアンケートに回答した66人のうち、79%は完走していた。つまり、途中棄権または制限時間内に完走できなかったランナーも、レース後のアンケートに回答していた。
レース中の消化器症状は、非有意ながら完走したランナーのほうが多く報告した(63 vs38%、p=0.076)。消化器症状を訴えたランナーのうち、69%は熱ストレスと脱水症状が原因の一つとして挙げ、次いで摂取した水分や食物の種類だとする回答が多かった。
なお、レース中に23人がアセトアミノフェンを服用し、3人はNSAIDを服用したと報告した。これらの鎮痛薬の使用率は、完走した否か、および、ゴールタイムカテゴリー間で有意差はなかった。
著者らは、「これらの結果はウェスタンステイツ100参加者が極度の暑さに備えるための十分な準備を整え、十分な栄養補給および水分補給戦略を実行していたことを示している。そのことが、レース中に気温が40°C近くまで上昇したにもかかわらず、途中棄権や重度の消化器症状の発生率が比較的低かったことに貢献したと考えられる」と総括している。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Heat preparation and nutrition strategies for a 100-mile ultramarathon in extreme heat: A questionnaire study at the Western States Endurance Run」。〔J Sci Med Sport. 2026 Jun 3:S1440-2440(26)00231-8〕
原文はこちら(Elsevier)







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