思春期女子アスリートのエネルギー不足は栄養教育で防げるか? スコーピングレビュー
女子アスリートのエネルギー不足の予防において、栄養教育はどのように行われ、どのくらいの効果を発揮しているのたろうか。この疑問を検討したスコーピングレビューの報告を紹介する。

栄養教育は、Triad、REDs、LEAのリスクを下げるのか?
女性アスリートの三主徴(トライアド〈Triad〉)のより包括的な概念として、スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)が提唱されて以来、多くの研究が行われてきている。現在、TriadやREDsの基盤は利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)だと考えられている。
LEAは若年アスリートに多い傾向があり、意図せずに、または意図的に生じる。通常、栄養に関する知識の不足、体型への懸念に関連している。LEAの予防と管理には、アスリートへの栄養教育が重要とされている。しかし、その有効性のエビデンスはいまだ決定的なものでない。本論文の著者らは、若年アスリートのLEA等に関する栄養教育介入について、既存の文献を統合し研究ギャップを特定することを目的とするスコーピングレビューを行った。
文献検索について
系統的レビューとメタ解析のための優先報告項目のスコーピングレビュー用拡張版(PRISMA-ScR)ガイドラインに準拠し、PubMed、Web of Science、Scopus、EBSCOhostという四つの文献データベースを用いた検索を実施。包括基準は、研究参加者が平均年齢10~19歳の女子アスリートであり、Triad、REDs、LEAなどのトピックについて栄養教育の役割を調査した研究で、査読システムのあるジャーナルに掲載された英語論文。検索は2025年3月20日に実施し、収載日の制限は設けなかった。
サプリメントのみの介入は栄養教育の有用性の評価という目的に一致しないことから除外した。また、個別カウンセリングのみの介入による研究も、他の手法との比較可能性が乏しいことから除外した。その他の除外基準は、動物実験、観察研究、学位論文、書籍、レター、レビュー、学会報告など。
一次検索で1,517報がヒットし、ハンドサーチで4本を追加したのち重複を削除。690報をタイトルと要約に基づくスクリーニングにより25報に絞り込み、全文精査によって最終的に7件の研究報告を適格と判断した。
栄養教育で栄養の知識は向上するが、LEAリスクに関するエビデンスが不足
7件の研究は米国が4件で、その他、ドイツ、トルコ、オーストラリアが各1件だった。合計695人のアスリートが参加し、そのうち655人が女子だった。
行われれている栄養介入・教育の方法
7件の研究のうち5件は、栄養教育を唯一の介入として実施していた。他の2件は教育と個別カウンセリングを組み合わせ、個別化されたアプローチを用いていた。
介入期間は、単回のセッションのみのものから、1学年(9カ月)にわたる学校ベースのものまであり、平均は67日間だった。対面式が主な実施方法であり 、ほかにはオンラインベースの講義、ファシリテーターが関与しない自己主導型学習が採用されていた。対面セッションの場合、その時間は60~90分だった。
教育用の資料は多くの場合、管理栄養士または栄養士によって作成されていた。1件の研究で、コーチが選んだアスリートが、研究者によって開発された教育資料を用いてピアラーニングを行っていた。作成された教育資料は、20分程度の短い動画、印刷物、それらの組み合わせなどで、完全に遠隔で実施された唯一の研究では、チャット、クイズなどのさまざまな機能が利用されていた。行動変容技法(behavior change technique;BCT)を用いた介入は3件だった。
報告されていた評価項目と有用性
スポーツ栄養学の知識の評価方法と成果
知識の評価には、先行研究で使われた質問票やそれを改変したもの、または独自に開発した質問票が用いられていた。介入によって、すべての研究でスポーツ栄養学またはTriadの知識が向上したと報告されていた。多くは介入前後での比較だが、1件は追跡調査も行っており、介入後6週間まで知識が概ね維持されていたという。
食事摂取量とLEAリスクの変化、体組成の変化
6週間の対面教育セッション後、エネルギーや主要栄養素の摂取量が優位に増えたことなどが報告されていた。遠隔介入を行った1件の研究では、このような改善がみられていない。介入がLEA特有のアウトカムに及ぼす影響を調査した研究は1件のみだったが、臨床的に意味のある変化が生じたと報告されている。
2件の研究では、生体電気インピーダンス法による体組成の変化が評価され、BMIと体脂肪量の有意な増加が報告されている。また、1件の研究では、除脂肪体重も介入による有意な増加が認められている。
自己効力感と食行動
動画ベースの教育を受けた参加者は、オンラインで資料を受け取った参加者と比較して、TriadやREDsの知識に関する自己効力感が高いことが報告されていた。摂食態度は2件の研究で測定されており、そのうち1件は26項目からなる摂食態度調査(Eating Attitudes Test;EAT-26)を使用し、有意な介入効果を認めないとしていた。対照的に、摂食障害評価票-若年者版(Eating Disorder Examination—Adolescent;EDE-A)を用いた研究では、下位尺度の一つの「摂食に関する懸念」のスコアが有意に低下したと報告している。ただしこの研究は、女性と男性の参加者を区別していない。
全体的な傾向:長期的な効果やLEA特有のアウトカムへの影響が明らかにされていない
このほかに、介入プログラムの期間が短い場合、管理栄養士が主導する対面式の教育、学校ベースの教育など、複数の要素を組み合わせたアプローチを採用した場合に遵守率が高くて脱落率が低いという傾向が観察された。
全体的に、長期的な影響やLEA特有のアウトカムは、あまり評価されていなかった。また、介入設計、評価指標に、かなりのばらつきがあったため、全体的な有効性について確固たる結論を出すことは困難であった。
著者らは、「本レビューの結果は、若年女性アスリートにおけるLEAの予防と管理に取り組む効果的な栄養教育プログラムを開発するために、方法論的により厳密な研究が必要であることを示している」と述べている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Role of Nutrition Education in Preventing Low Energy Availability Among Adolescent Female Athletes: A Scoping Review」。〔Nutr Rev
. 2026 Apr 13:nuag032〕
原文はこちら(Oxford University Press)







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