スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJスポーツ栄養サミット2026「REDsの基礎から、男性アスリートのREDsを深く学ぶ1日」
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

わずか5項目でアスリートの主観的健康状態を評価可能 妥当性も検証された質問票の提案

消化器症状や肌の状態、疲労感などに関する五つの質問の回答から、アスリートの主観的健康状態を評価可能な質問票が開発された。日本大学スポーツ科学部の辰田和佳子氏らの研究の結果であり、「Sports」に論文が掲載された。国内の大学生アスリートを対象に行った調査から、信頼性と妥当性も確認されたという。著者らは、非侵襲で簡便かつコストのかからない手法であり、アスリートの健康状態の継続的なモニタリングに利用できる可能性があるとしている。

わずか5項目でアスリートの主観的健康状態を評価可能 妥当性も検証された質問票の提案

アスリートの健康状態の変化を、簡便に評価できるツールの必要性

スポーツ領域で活動する管理栄養士には、単にアスリートのパフォーマンス向上をサポートするだけでなく、アスリートの健康状態とQOLの維持・向上を目指した介入が望まれる。健康状態を把握する手法として、医学的検査を含め複数のツールが存在するが、それらの多くは侵襲性があり、また実施可能な施設が限られ、時間的制約やコストも発生することなど、トップアスリート以外での施行にはハードルが低くない。とくに大学生アスリートでの頻回の実施は困難と言える。

一方、一般生活者の健康状態を把握する簡便な手法としては、世界保健機関(WHO)のQOL質問票など、いくつかの質問票が存在する。しかしそれらでは、高強度運動を行っているアスリート特有の問題は十分に把握できない。

これらを背景として辰田氏らは、アスリートの健康状態を簡便、非侵襲、低コストで、日常的に繰り返して評価可能な信頼性と妥当性のある質問票の開発を試みた。

質問票の開発と精度検証

質問票の開発に際しては、大学生アスリートと指導者への半構造化インタビューをもとに質問項目を作成した。また、健康状態は日々のトレーニング経験と関連すると考えられることから、尺度の妥当性を検討するため、トレーニング満足度との関連を検討した。

質問項目の設定

まず、大学生アスリートおよびコーチを対象とする半構造化インタビューの報告を援用して、「主観的な健康状態」を評価するための6項目の質問と、「トレーニングの満足度」を評価するための7項目からなる質問票の原案を作成した。具体的な質問内容は以下のとおり。いずれも過去2週間の状況について問うもので、「強い同意」から「強い否定」の5段階のリッカートスコアで回答する。

「主観的な健康状態」を評価する6項目の質問

  • トレーニングに必要なエネルギーが前日から回復したと感じる
  • エネルギー切れにならずトレーニングを完了できる
  • 胃腸の不快感、下痢、便秘がない
  • 排便が規則的
  • 肌の状態と顔色が良好
  • 感染症にかかりにくい

「トレーニングの満足度」を評価する7項目の質問

  • その日に予定したトレーニングをすべて完了できる
  • 全力で取り組める
  • トレーニングに集中できる
  • 不安なくトレーニングできる
  • トレーニングに積極的に参加できる
  • 爽快感を感じる
  • 楽しさを感じる

大学生アスリート対象調査による検証

次に、この原案を大学生アスリートに適用し、妥当性などを検証した。

都内の2大学(いずれも私学)の運動部に所属し、地域リーグレベルまたは全国大会上位入賞レベルの選手432人(19.7±1.1歳、男性72.0%)が研究に参加した。行っている競技は、筋力・パワー系、持久系、審美系、団体競技、体重階級制競技など多岐にわたっていた。

探索的因子分析(exploratory factor analysis;EFA)という統計学的手法により、「主観的な健康状態」を評価する6項目の質問のうち、感染症のかかりやすさを問う質問は項目間の関連が乏しく(因子負荷量が0.4未満)、質問項目から除外された。最終的に、「疲労回復・軽減」という因子に関する2項目、「消化器・皮膚症状」という因子に関する3項目、計5項目が抽出された。

一方、「トレーニングの満足度」を評価する7項目の質問については、すべて因子負荷量が0.4以上だった。

抽出されたこれらの質問項目は、いずれも十分な内部整合性が確認された(クロンバックのαが0.76~0.89)。

評価項目同士の相関と、「トレーニングの満足度」の予測能

抽出された上記の質問項目同士の相関を検討すると、以下のように、すべて有意な正相関が認められた(すべてp<0.001)。「疲労回復・軽減」と「トレーニングの満足度」の相関はr=0.55、「消化器・皮膚症状」と「トレーニングの満足度」の相関はr=0.44、「疲労回復・軽減」と「消化器・皮膚症状」の相関はr=0.43。

続いて、「トレーニングの満足度」を従属変数、「主観的な健康状態」を表す「疲労回復・軽減」と「消化器・皮膚症状」という2因子を独立変数とする重回帰分析を実施。その結果、「主観的な健康状態」の指標はいずれも「トレーニングの満足度」との独立した有意な関連が認められ、とくに前者の寄与が大きかった(β値が疲労回復・軽減は0.45、消化器・皮膚症状は0.24)。

アスリートの健康状態のこまめなモニタリングに利用可能

以上の結果に基づき論文は、「大学生アスリート特有の健康上の課題を反映した新たな主観的健康状態の質問票を開発し、その信頼性と妥当性を確認し得た。わずか5項目のこの質問票により、アスリートの健康状態を簡便かつ継続的に評価することが可能となり、栄養教育やコンディション管理のための実用的なスケールとなり得る」と結論づけられている。

また、論文の考察において、以下のようなポイントが述べられている。

各質問項目の回答が主観的健康状態と関連するメカニズム

「疲労回復・軽減」と「消化器・皮膚症状」は、いずれもトレーニング満足度と独立して関連しており、前者のほうがより強い関連を示した。

疲労からの回復感は、炭水化物を中心とするエネルギー補給の適切さを反映していると考えられ、トレーニングへのモチベーションと関連する。よって、この強固な関連は、効果的な栄養教育がアスリートの回復感を高め、トレーニングへの満足度を高める可能性があることを示唆するものと考えられるという。

一方、「消化器・皮膚症状」との関連のメカニズムとしては、高強度・長時間運動により血流の再分配や機械的ストレスなどを介して消化器症状が引き起こされ、栄養素の吸収やパフォーマンスが損なわれることがあるとしている。また、皮膚のコンディションは紫外線曝露や発汗に加えて、栄養状態や疲労蓄積などの内部要因の影響、さらには腸内細菌叢と皮膚バリア機能や炎症との関連、いわゆる「腸皮膚軸」を介した変化も生じ得る。

このような身体に現れる変化を、アスリートは自分自身で容易に認識できる。そのために、これらの質問項目が、栄養状態や身体状態を評価するための有用な主観的指標となるのではないかと考察されている。

今後、他の環境での精度検証が求められる

なお、「消化器・皮膚症状」のスコアを性別で比較すると、男性よりも女性は有意に低値だった。この点については、月経の症状や月経に伴う鉄欠乏によって部分的に説明できるのではないかと述べられている。また、因子負荷量が低いために除外された「感染症の罹患しやすさ」については、「易感染性は重要な健康指標ではあるものの、季節要因によって左右されるため、安定した評価指標になりにくい可能性がある」とのことだ。

研究の限界点としては、トレーニングの満足度が高いほど「主観的な健康状態」が良好と仮定したが、その因果関係が未確認であること、精度検証の対象が都内の2大学の学生に限られていることなどを挙げ、「今後の研究では、教育的介入に用いたり、他の指標と比較したりすることなどで、適用可能性をさらに検証していく必要がある」とされている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Development and Validation of a Subjective Health Status Scale for Collegiate Athletes」。〔Sports (Basel). 2026 Aug 3;14(8):326〕
原文はこちら(MDPI)

SNDJスポーツ栄養サミット2026「REDsの基礎から、男性アスリートのREDsを深く学ぶ1日」
この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2026後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

【 スポーツ栄養Web編集部 】
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ