スポーツ栄養士はコンタクトスポーツの脳震盪に対し、どのようなアプローチで実践しているか
コンタクトスポーツで好発する頭部への衝撃や脳震盪による後遺症を、栄養戦略により軽減し得るとする複数の研究結果が報告されている。では、現場のスポーツ栄養士は、脳震盪を負ったアスリートに対して実際、どのような栄養介入を行っているのだろうか? オーストラリアでプロレベルのコンタクトスポーツ選手の栄養管理にあたっているスポーツ栄養士を対象に実施された、半構造化インタビューの報告を紹介する。

脳震盪リスクのあるアスリートに対してスポーツ栄養士がすべきことは何か?
コンタクトスポーツでは練習中および試合中に、高頻度で頭部への衝撃を受ける。脳震盪による頭痛やめまい、健忘などの症状は短期間で消失することが多いが、一部は症状が遷延する。また近年は、なんら症状を呈さない頭部外傷であっても、曝露の累積によって長期的には悪影響を及ぼすことがあると考えられるようになっている。
スポーツ栄養士はアスリートのパフォーマンス向上と健康の維持・増進のための栄養学的アプローチを担う。コンタクトスポーツのアスリートに対しては、脳震盪の後遺症リスクを抑制し得る栄養学的介入も期待される。しかし、実際のところ、現時点において脳震盪リスク抑制のための栄養介入は標準化されておらず、現場でどの程度実施されているのかも明らかでない。
この状況を背景として今回紹介する論文の著者らは、オーストラリアのプロレベルのコンタクトスポーツの環境で勤務しているスポーツ栄養士を対象とする半構造化インタビューを行い、脳震盪の栄養管理に関する実践と考え方の把握を試みた。
脳震盪対策に魚油やクレアチンを活用 スポーツ栄養士の実践とエビデンスの課題
調査の対象はオーストラリアのプロ(国内または国際レベル)のコンタクトスポーツ(ラグビー、オーストラリアンフットボール)のチームで、栄養に関する責任のある立場に就いていて、同国のスポーツ栄養士会の会員であることを条件に募集された14人。主な特徴は、年齢が中央値36歳(範囲28~51)、女性86%、スポーツ栄養士としての経験が同10年(1~28)、コンタクトスポーツでの勤務経験が同6年(1~15)。
インタビューはすべてオンラインで行われ、インタビュアーは1名の男性栄養士だった。事前にコンタクトスポーツにおける経験が豊富なスポーツ栄養士と研究者により作成されたガイドに沿って、インタビューが進められた。
すべての会話を文字に起こし、その分析の結果、以下のように五つの主要なテーマが特定された。
(1)脳震盪管理における栄養士の役割
インタビュー参加者は、脳震盪を管理する多職種チームの重要な一員であると考えていた。栄養学的介入には、選手に脳震盪が発生後にできるだけ早く食事やサプリメントを提供することが含まれていた。また、すべての参加者が脳震盪の症状の管理に重点を置いていた。例えば吐き気を軽減するための戦略、必要に応じて食事摂取量を増やすための戦略の実施(食欲不振により食事摂取量が制限されている場合など)が行われていた。
あるスポーツ栄養士は、「選手が脳震盪を起こした場合、その場にいる医師や理学療法士が状態を評価し、怪我の状況に関する報告を栄養士に伝える。また、私が用意した脳震盪対策パック(サプリメントと食事に関する情報)を選手に渡す。医師は必ずこのパックを持ち歩いている。その後、私は選手に連絡をとり、体調や食欲などを確認する」と述べた。
参加者の大多数(93%)は、脳震盪の病態生理学的反応を管理するための食事療法を推奨した(次のテーマで詳しく検討)。しかし、脳震盪の病態生理学の管理における栄養の役割を裏付ける、質の高い臨床的エビデンスが不足していることを認めた。とはいえ栄養戦略を支持する理由は数多くあると捉えられていた。
「私たち栄養士は、脳震盪に対する栄養戦略を推奨すべきだと思う。なぜなら、それが有益であることを示唆する十分なエビデンスが蓄積されつつあるからであり、有害性はなく、潜在的なメリットがあると考えている」。「おそらく、クレアチンを摂取しているアスリートもかなりいるだろう。それはパフォーマンス向上や除脂肪筋肉量の増加といった観点からと考えられる。しかし、脳震盪のリスク軽減や管理という点でも、潜在的にメリットがあると思う」。
このように、栄養学的介入に対する信念が認められた一方で、参加者の71%は、栄養士の役割は限定的であるとも述べ、チームドクターと理学療法士が脳震盪ケアの主導的な役割を果たしていることを認めていた。
(2)脳震盪と脳の健康のための栄養戦略
脳震盪直後の対策としては、アルコール、カフェイン、嗜好品などの特定の食品や水分を制限する一方で、抗炎症食品や地中海式食習慣の役割を促進することが含まれていた。脱水症状が脳震盪症状(頭痛やめまいなど)を引き起こしたり悪化させたりする可能性を減らすために、水分補給対策とモニタリングも推奨された。
「良質な脂質や抗炎症作用のある食品、例えば濃い色のベリー類、緑の葉野菜、魚、アボカドなど、いろいろなものを積極的に摂るように伝えている。一番大切なのは、アルコール、砂糖、加工食品をできるだけ避けさせることだと思う」。
症状の管理や潜在的な神経学的後遺症を軽減するための栄養戦略としては、魚油とクレアチン一水和物のサプリメント摂取(ともに参加者の93%)が多く挙げられた。次いで、ビタミンB2(参加者の43%)、タルトチェリーエキス(同29%)、クルクミン(21%)、ビタミンD(14%)だった。
(3)脳震盪管理に対する自信
参加者は、脳震盪以外の目的で一般的に使用されている栄養成分(例えばパフォーマンス向上のためのクレアチン一水和物サプリメント摂取)を、脳震盪管理においても推奨することには自信を持っていた。しかし、とくに複雑なケースでは、個別の推奨事項を提供する強い自信を持っていないことが示された。
「私が作成した簡単なプロトコルにはかなり自信がある。ただし、選手が独自の調査や見解に基づいて、想像もしないような質問をしてきた場合、とくに特定のサプリメントについて質問された場合、自信を持って答えることはできない。なぜなら、私は世の中にあるすべてのことを把握しているわけではないから」。
脳震盪リスクの栄養による低減に必要な施策が浮き彫りに
これらのほかに、(4)推奨事項の障壁と促進要因として、個人レベル(例えば食事摂取に影響を与える症状)から組織レベル(例えばサプリメント摂取プロトコルをサポートするための資金)まで多岐にわたる20項目が抽出され、(5)チームの競技レベルや性別によるケアの違いが特定された。
(5)については、「女性選手への対応はプログラムの仕組みや誰が何を担当するのか、コミュニケーション経路はどうなっているのかなど、あらゆる点で男性選手への対応に比べて見劣りがする」、「トップレベルのチームにはサプリメントも含め、すべてを常に用意してあり、かつ提供する。しかしそれ以外のチームでは、予防策としてサプリメントを摂取したいのであれば自分で購入する必要がある」といった声が聞かれた。
論文の結論には、「オーストラリアのコンタクトスポーツに従事するスポーツ栄養士は、脳震盪管理において、回復を支援する栄養戦略の提供という重要な貢献をしていると自認していた。彼らの実践は積極的かつ実践的であったものの、エビデンス基盤の未発達、ガイドラインの欠如、資源の不平等など、多くの促進要因と阻害要因の影響を受けていた。栄養介入を多職種連携による脳震盪管理に統合し、アスリートの最適な回復を確実にするためには、より多くの臨床研究とエビデンスに基づいたガイドラインの策定が不可欠である」と述べられている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Concussion and Nutrition in Professional-Level Collision Sports: Perspectives from Australian Sports Dietitians」。〔J Nutr. 2026 Sep;156(9):101671〕
原文はこちら(Elsevier)








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